孤独な王子の世話を焼いていたら、いつの間にか溺愛されていました

@karamimi

第1話 お父様が少年を連れて来ました

昔々、マール王国の海底には、沢山の人魚が住んでいました。“人間はとても恐ろしい生き物だ”と教えられていた人魚たちは、海の上は恐ろしい場所と認識していたのです。そんな中、1人の人魚が勇気を出して海の上へと上がって来ました。


そこで出会ったのは、美しい金色の髪をしたこの領地を治めている若き伯爵だったのです。2人は急激に惹かれ合い、いつしか愛し合う様になりました。でも、人間と人魚。決して結ばれる事はありません。


人魚は何とかして人間になる為、魔女の元を訪ね、人間にしてもらう事になりました。でもそれと引き換えに、永遠の命を差し出したのです。


人間になれた人魚は急いで伯爵の元に。これで2人は結婚できる、そう思った時でした。海の神、ポセイドンが


”人魚が人間と結ばれてはいけない!これは掟で決まっているのだ。掟を破ったお前は、死に値する”

そう言って人魚の命を奪おうとしたのです。


そんな中、人魚を庇って命を落としたのは伯爵でした。伯爵を失った人魚は絶望の中、自ら命を絶ったのです。そこに現れたのが海の女神、アムピトリーテでした。2人を生き返らせると


”相手を思いやる姿に心を打たれました。どうか幸せにおなりなさい。そして、どうか海を大切にして下さい”


そう言い残して海の底へと消えていきました。その後2人は、命尽きるまで幸せに暮らしましたとさ。


「どうだい?ステファニー。とっても素敵な話だろう?」


「ええ、とても素敵だわ!ねえ、おばあ様。このお話は本当に私のご先祖様のお話なの?」


「そうだよ、だからお前は、人間なのに海の生き物と話しが出来るし、海の中でも普通に過ごす事が出来るだろう?これは全て、人魚の血を受け継いでいるからなんだよ」


「そうだったのね!あぁ、なんて素敵なのかしら?私にもいつか、お話に出て来る伯爵様みたいな男性が現れるかしら?」


「ああ、きっと現れるよ」


そう言って私の頭を優しく撫でてくれたおばあ様。


私にもいつか、伯爵様の様な男性が現れるのね。あぁ、私の伯爵様はいつ現れるのかしら?早く会いたいわ。




~数年後~

「お嬢様。お嬢様」


「ここよ、エリー」


今日もいつもの様に海に入り、海の生き物に真珠や珊瑚を分けてもらう。私の名前は、ステファニー・エディソン。エディソン伯爵家の娘で、美しい海がすぐ近くにある伯爵領で暮らしている。


ちなみに両親や兄は王都で暮らしている。両親には“いつまでも領地にいないで、早く王都に戻って来なさい!”そう言われるが、私はこの領地が大好きだ。それに私は、人魚と伯爵様のお話の舞台となったこの場所で、私だけを見てくれる伯爵様を探すつもりだ。


だから私が心から愛する伯爵様に出会うまでは、この領地から出るつもりはない。


ちなみに王都にも海があるが、港は人や船でごちゃごちゃしていて、どうしても好きになれない。その為7歳から両親や兄と離れて、ずっと領地でおばあ様と暮らしている。


でも、そんなおばあ様も去年亡くなった。物凄く寂しくて沢山泣いたが、それでも海に入れば、沢山の友達がいる。


例えばイルカのキキやクジラのリンリンとかね。とにかく、王都になんて戻るつもりはサラサラない。おっと話がそれてしまった。一旦海から上がり、専属メイドのエリーの元へと急いだ。


「旦那様がいらしています。至急屋敷にお戻りください」


「えぇ、お父様が!そんな話は聞いていないわ。もう、急に来るのだから、嫌になるわ」


来る時くらい、教えて欲しいものよね。


「お嬢様、3日前旦那様からのお手紙をお渡ししましたよね。そこに記されていたのではなのですか」


そう言えば、手紙を貰ったわ。どうせ王都に帰って来いと言う面倒なものだと思って、読まずに捨てたのだった…


はぁ~、来てしまったものは仕方がない。とにかく行くか…


重い足取りで屋敷に戻り、一旦着替えを済ませる。なぜかエリーが準備したのは、ドレスだ。


「エリー、お父様に会うだけなのだから、そこら辺のワンピースで十分よ」


そう伝えたのだが


「いいえ、他にお客様もいる様なので、ドレスでと言う事みたいです。とにかくこのドレスに着替えて下さい」


他にお客様?一体誰かしら?疑問に思いつつ、急いでお父様の待つ客間へと向かう。


「お待たせして、申し訳ございません」


渾身のカーテシーを決める。これでも伯爵令嬢、貴族としてのレッスンは受けている。ゆっくり顔を上げると、お父様の隣には金色の髪に青い瞳をした少年が立っていた。よく見るとかなり高価な服を着ているから、きっと貴族か何かだろう。


「ステファニー、一体今まで何をしていたんだ!どれだけ待ったと思っているんだ!」


顔を赤くして怒るお父様。よく見ると、タコのオクトによく似ている。そう思ったら、笑いが込み上げて来た。駄目よ、今笑ったら余計にお父様がオクトになるわ。笑いそうになるのを、何とか誤魔化した。


「何をしていたって、海に行っていたに決まっているでしょう?お父様こそ急に来られても困りますわ」


「何が急だ!きちんと手紙に今日来る事を伝えてあっただろう!」


さらに顔を真っ赤にして怒っている。本当に見れば見る程オクトにそっくりだ。


「とにかく、早く座れ」


面倒だがとりあえずこれ以上お父様の顔が真っ赤になるといけないので、言われた通り席に着いた。





~あとがき~

新連載始めました。


どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m

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