第16話 発見

食事の支度を待つ間、勧められたように

俺は庭に出てみることにした

暗い座敷から広々とした明るい庭に

出てみると本当に気持ちよかった。


ニギニギさんちの庭は、かなり広い作りで

蘇鉄とかアダンみたいな植物が生い茂りいい雰囲気だね

村外れの高台にあるんで、風の抜けもとってもいいんだ。


「池までこしらえてあるじゃないか、なにかいるかな?」


と覗き込んでいると、突然に何処からか

小さな鳥が舞ってきた。  


「へ~可愛い鳥だなぁ なんていう鳥なんだろ?」


すると、その鳥は頭上を何回か旋回してみせると 

さっと降下して俺の肩の上にちょこんと止まったんだよ。


「人懐っこい鳥だなぁ! あっ きっとニギニギさん

とこで餌づけでもしてるんだな」


おれはそっと人指し指をだして、近づけてみたら

なんと、その鳥は今度は指に飛び移ったんだ。


「ペットみたいに慣れてるよ それにしてもコイツ

 ずいぶんと大きな目をしてるんだなぁ」


顔を近づけて、その鳥の目をじ~と見つめた時に

俺はなにかちょっと違和感を覚えたんだ

そう思ったときにまた言葉が浮かんできたぞ。


"ギズモ型スカウトドローン"  


「えっ!? じゃあ、これがいままで敵の姿や地形

なんかを見せてくれた偵察用のドローンなのか!

すごいなぁ まるで本物の鳥じゃないか! 

これじゃ飛んでてもバレないわけだよ」



その鳥型ドローンは全体は翡翠に

似ているけど色はずっと地味で、上面は薄い

緑色を基調にしたまだら模様

腹のほうはグレイッシュブルーという

色分けになっている


鳥ドローンは、指の上でちょっと体を前後に

動かしていたが、デルタ/三角翼っぽい翼を

広げて素早く羽ばたきだした。


ブ~ン


微かに羽音がしたかと思うと、スーと垂直に上昇していった。


「へ~ VTOL(垂直離着陸)機能をもってるんだ すごいな」 


それから、10mくらい上昇すると今度は翼を見えない

くらい素早く動かして、ピタっと空中に止まって

ホバリング、さらにその姿勢で360度の見事な

旋回までしてみせた


次は羽ばたいて上昇気流に乗ると、ぐんぐんと

高度を稼いでいった。


そこからおもしろいことがおこったよ

偵察用のドローンの翼の形が変化して、全体が

大きくなりスパンも伸びてガル(カモメ)翼形に似てきた


羽の動かし方もだんだんゆったりしてきて、

大きく上下に動くようになっていったんだ。

 


「なるほど、高度が上がって気流に乗ったらグライダー

みたいな高アスペクト比(縦横比が大きい横に長い)

翼形になってずーと滞空できるってわけなんだな」


この鳥ドローンには、飛行モードによって主翼の

形が変化する Variable Shape Wing/可変形体翼と

いう機能があるらしい。



しかもグレイッシュブルーがロービジリティ

(低視認性)効果を発揮していて、高度があると

気をつけていないとほとんど見えないんだ。


感心しながら、ドローンの飛ぶのを見ていたら

また視界が暗くなってきた。


「あっ またMAPモードになるんだな」


表示された状況を見て、俺はギョッとしてしまった


というのも、地図の北東側に赤い点が大量に集結していて

真っ赤に輝いていたんだ。


「なんだよこれ すごい大部隊が集まってるじゃないか!

あんなのが一気に襲ってきたら こんな村なんか

一溜りもないぞ!」


その時、急に後ろから呼びかけられた。


「お待たせしましたのぉ 晩飯の支度ができましたじゃ」


振り返ると縁側からニギニギさんがこっちを手招きしていた。


俺はいま見たショッキングなデータをどうして伝えよう

まごまごしてしまったけど、ここは気持ちを切り替えた。


「とにかく食事だ 悪いことは食ってから考える

ことにしようっと」


卓に着くと、精一杯のごちそうが並べられていた

ゼンマイぽいのとか、山菜のお浸しみたいなのが

多そうだった。


「なんも無ぇとこですが、どんぞ たんと食べてくだっせぇ」


「ありがとうございます じゃ、遠慮なく頂きます」


俺はそういうと大喜びでムシャムシャやりだした


こっちでは、キャッサバみたいな芋が主食らしい

それを蒸したものと焼いたものが皿に乗っかっていた。


これだけじゃ、正直ちょっと物足りない感じなんだけど

メインディッシュの川魚がものすっごく旨いんだよね


山女みたいな細い魚、これに味噌に似たソースを付けて

炉で焙ってくれるんだけど、スパイシーな香りといい

味といいもう最高!。


で、ちょっと失礼かと思ったけど持ってきた

梅のおにぎりを出して一緒にたべてみたんだけど、

これがまた絶妙のハーモニ~を奏でたんだよ。


「うまっ! なにこれ 旨旨~!!」


ガッつく俺を見て、二人はなにやら小声で話し合っている。


「すんません 夢中でたべちゃって ハハハ・・」


すると二人はとんでもないという風に手を振ってこう応えた。


「お口に合ったようで、よがったっす 

今もいっとったんですじゃ

こうして、卓を囲んで笑うのなんてえらく

久しいのぉとねぇ・・」


それを聞いて俺はちょっと困ってしまったよ。


(う~ん あんな大部隊が村に迫ってるな

んて言い出しにくい雰囲気だなぁ・・ )


そんなんで、食も控えめにおにぎり二つ 焼き魚三尾

ふかし芋四つ あとフルーツで止めておいた。


「ごちそうさまでした 本当に美味しかったですよ

それじゃ、戦闘とかで疲れてるんで横になります・・ 

おやすみなさい」


そう頭をさげると、早々にあてがわれた部屋に引っ込んだんだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る