夏休み篇
ページ11 1日目
色々あった一学期も終わり、学生生活最後の夏がやってきた。この夏を全力で楽しもうって決めた謙介達は今、飛行機に乗ってある空港に到着した。
「やってきました、沖縄ー。」
那覇空港の自動ドアを通り、沖縄の地に降り立った瑞帆が大きな声で叫んだ。空を見上げれば雲一つ無い晴天が広がっており、ギラギラと照りつける太陽が謙介達を歓迎しているかのように眩しかった。
「遂に来たな、沖縄。」
「思った以上に暑いですな。」
みんなのテンションは沖縄に着いてから上がりっぱなしだ。勿論、謙介も初めての沖縄に興奮している。
「みんな、早く海行こうよ。」
一人ではしゃぐ瑞帆の姿を見て微笑む紗倉。その横顔はいつにも増して可愛かった。白いスカートに白の帽子が日差しを反射して直視できないくらい神々しい姿に謙介は目を奪われた。
「もう少しお待ち下さい。まもなく私の使用人が迎えに来ると思いますので。」
すると向こうから一台の車が曲がってくるのが見えた。でもその車の車体が異常に長かったので謙介は二度見した。
「えっ、あれってもしかして……リムジン?。」
「はい、皆様が乗るので広い方が良いかと思いまして。」
リムジンが一行の前に停まると運転席から黒いスーツを着た男性が降りてきた。
「お待たせいたしました。今回、皆様の旅がより良いものになるようお手伝いさせていただく使用人の黒瀬と申します。」
丁寧な挨拶にさっきまではしゃいでいた瑞帆も静かにならざるを得なかった。
「あっ、よろしくおねがいします。」
「早速ですが皆様、最初の目的地にご案内いたしますので車にお乗りください。」
そう言うと黒瀬は車の後部座席のドアを開けてくれた。紗倉の後に続くようにみんなも中に入って行った。中に入ると長い座席やテーブル、大きなテレビなど車とは思えないほど広々としていた。
「ごめんなさい、少し狭いですけどお好きなところに座ってください。」
その言葉に一同は騒然とした。
「いやいや、そんなことないよ。これでも十分広いから。」
「そうですか、喜んでいただけたようで安心しました。」
謙介は車内を見回した。まさか人生でリムジンに乗るとは思っていなかった。
車が目的地に着くまでにここまでの経緯を説明しよう。
遡ること一週間前 終業式
「ねぇ、夏休みみんなで旅行に行かない?」
みんなが帰る支度をしているときに瑞帆が突然言い出した。みんなは瑞帆の話に耳を傾ける。
「旅行に行くってどこに?。」
「ミッキー、愚問だね。夏なんだからもちろん海でしょ。」
瑞帆は謙介に向かって指を指しながら自信満々に答えた。
「それでは沖縄とかどうでしょうか。海も良いですけど観光地としても最適かと。」
「いいじゃん、沖縄。じゃあ沖縄に決まりね。」
とこうもあっさり決まった。意外だったのは紗倉が乗り気だと言うことだ。
「良いんじゃないか、気分転換にもなるし。なぁ、充。」
「あぁ、高校生活最後の夏だ。思い出づくりに丁度いいではないか。」
『みんなやっぱり高校生だな』と会話を聞いていて思う。
「ミッキーも来るでしょ?。」
「もちろん行きたいけど、ホテルとかどうするの?。」
謙介が心配しているのはそこだ。旅行に行くからには念入りに計画を立てて準備していかなければならない。
「それなら問題ありません。私がお父様に相談して部屋を取ってもらいます。」
その問題を紗倉さんが解決してくれた。
「えっ、どういうこと?。」
「あれ、言ってなかったっけ。紗倉のお父さんは伊ヶ崎リゾートの社長なんだよ。」
「伊ヶ崎リゾートってあの有名な超高級ホテルのこと?。」
紗倉の父、伊ヶ崎善蔵が社長を務める伊ヶ崎リゾートはホテル業界のトップに君臨している超一流ホテルだ。外国人にも人気で全国10ヶ所にある伊ヶ崎リゾートは場所によっては三年先まで予約で埋まっているほど人気だ。
「部屋は一番高いところを予約しておきますね。」
「じゃあ、期間は二泊三日で出発は一週間後ということで。みんな絶対水着をわすれないこと。」
現在
そんなことをしている間に車は目的地の海水浴場に到着。車から降りると潮風で髪がなびいた。
「ぃやっほーい、海だー。」
車から降りるなり瑞帆と道義、充は走って砂浜へ向かって行った。
「謙介君、私達も参りましょうか。」
謙介は紗倉に言われるがままに一緒に歩いていった。青い空、青い海、白い砂浜、海の家が夏を感じさせる。風が吹くと紗倉は帽子を手で押さえ、その茶色い髪が綺麗になびく。
「ではまた後で。」
そう言うと紗倉は更衣室に入っていった。謙介も恐る恐る中に入っていった。中には道義と充が先に着替えていた。
「なぁ、謙介。紗倉の水着姿ってどんなのだと思う。」
道義がいきなり聞いてきた。
「なにいきなり変なこと聞くんだよ。」
謙介は突然の質問に慌てふためいた。
「だって学園一の美女の水着姿を拝めるなんて俺たちラッキーじゃねぇか。」
「そんなの興味ないよ。」
と口では言ったものの正直すごく気になる、見る前から緊張している。
「君たち、はしたないぞ。見るときはガッツリ見るのが男だ。」
『充も見たいんじゃねぇか』
やっぱり僕達は高校生だな。
先に着替えた男組は海の家で買ったビーチボールで遊んでいると
「おーい、お待たせ。」
と呼びかける声が聞こえた。その声のする方を見て謙介は絶句した。
「さっ、紗倉さん!?。」
―To Be continues―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます