第3話 桜子との出会い

途中からボクサーとしての練習もあり、わざわざ店まで行くというのが面倒くさくなってきた。そこで、ダイヤルQ2という自宅からかけられるツーショットダイヤルにかけだした。



ただし、5,6秒かに10円というべラボーに金がかかる欠点があった。なもので、内容をギュッとしなければエライ事になる。



おのずと、イケるかイケないの判断を早期に決断するようになっていた。



大したもので声を聞けば、大体、可愛いかそうでないかわかるようになってきた。という事は、もちろん痛い目にあったからである。



ある時なんて、30代の主婦とアポを取り、駅のホームのベンチに座って待っていた。



トントン・・・



ベンチに座っている私の肩を誰かに指先で押された。



私が振り返ると、すんごい太られた女性がにこやかに立っていた。私は驚いてしまったけれど、せっかく会いに来てくれた女性の気持ちを考えて同じように笑った。



やる気マンマンだった女性を、何とか傷つけずに喫茶店でお茶だけして帰った。その女性の電話での声はアニメ声でめちゃくちゃ可愛い声だった。



なので私の辞書には“電話での異常に可愛いアニメ声は要注意!”と、アップデートされた。



そして、その電話で“桜子”と出会った。



『人は、笑わせてくれる人を嫌いになれない』



子供の頃、何かの本を読んでいて、すごく印象に残っている言葉。だから私は、幼い頃から人を笑わせる事に心血を注いできた。



小学生の頃、給食の時にゲラの友達に牛乳を噴射させる為に、日々、面白い事を前の晩に考えるのがライフワークだった。



そうやって生きてきたので、女性を口説く時も笑かせる事に心血を注ぐ。



桜子と繋がってからも、会話の端々に笑いを散りばめる。笑う頻度が増える度に、声色に変化が出てきた事がわかった。



ノリもよく、何より私が言う言葉でよく笑ってくれた事が嬉しかった。



話していたのは昼間だったので、その日の夜に会う約束をした。いつもの手口・・・聞こえが悪いな。(笑)



先に自分の服装やら外見を伝えて、イヤだったら帰っていいよという誘い文句で待ち合わせた。



「エレジーさん?」



夜8時くらいだったと思うけど、待っていたら、仲里依紗のような可愛らしい女の子が笑いながら声をかけてきた。



季節は夏。



ホットパンツ姿で、オシャレなリュックを背負い、肉感的な元気な子だった。



いつものように、まずは居酒屋へ。



そして、いつもの手口で、ひとしきり笑かした頃合いを見てホテルに誘った。



「べつに、いいよ・・・。」



さっきまでの明るいテンションとはうってかわって物静かになった桜子。



あれ?イヤなんかな?



「いや、ムリやったら言ってエエんよ!」



断りやすいようにギャグやん!みたいなテンションで言ってみた。



「エレジーくん、おもしろいし、まだ一緒にいたいから・・・」



「よっしゃ!行こ行こ!」



“機を見るに敏”



桜子の気が変わらないウチに明るく誘った。もう慣れたもので、常習犯のようにこなれていた私。



事が終わり達成感に浸っていると、桜子の様子がおかしかった。



見ると、桜子は泣いていた・・・

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