第5話 深川 みな美 SIDE

私の名前は深川 みな美、中学3年生。


はっきり言って、私は男が大嫌いだ。


嫌いだからと言って冷たい態度をとることはないけど、私からは話かけない。


そもそもの男嫌いになったのは小学生の時の担任のせいだ。


私を可愛いと言いながら、事あるごとに私の体に触れようとしてきた。


始めはあまり気にならなかったが、小学生の高学年になって、その教師の行動に可笑しいと心が気付いた時には、私の身体は鳥肌が立ち走って逃げたのを覚えている。


それからは男性の視線や行動が気になり観察してみると、私の胸や足ばかりを見ていることに気付いた。中学になったころには男性の視線は最悪なものとなっていた。


そんなことから私は男が大嫌いだ。私の心を見ずに顔や体ばかりを見ている男が大嫌いだ。


しかし、今日初めて男性に関心を持った。


今日は学校が創立記念日で休みのため、おばあちゃん家に遊びに来ていた。


特にすることもなく散歩として公園まで来てみると、一人の男の子が子猫に泣きながら近づいているところだった。


家で飼えないからと言って何度も何度も泣きながら謝っていた。


そして、濡れないように傘を猫にさして帰っていった。


彼がいなくなってから私は子猫の側に行ってみると捨て猫だとわかった。


彼が何故あんなに泣きながら謝っていたのか、言葉の意味が確信にかわった瞬間、私の心は温もりを感じていた。


こんな温かい気持ちになったのはいつぶりだろう。私は子猫を見ながら呟き、気付けば子猫と共に家に帰っていた。


何度も何度も親に頼みこんで子猫を飼わせてもらった。


私はこの時、既に子猫の名前を決めていた。


こんな温かい気持ちを繋いでくれた子猫を見ながら、

「貴女の名前は今日からココロですからね~。」


子猫は何もわからずに「にゃ~」と泣いていた。


そして、布団に入って今日の出来事を思い返しているとふと傘が目に入った。


もしかしてと考え、起き上がって傘を開くとそこには彼の名前が書いてあった。


私は居ても立っても居られず、すぐに携帯を手にとって彼の名前をSNSで調べた。


その後もインターネットを駆使して情報を調べること三ヶ月後。


今は彼と同じ学校に通っている女の子と仲良くなって、彼のことを聞いている。


その子に頼んで彼の志望校を探ってもらったら、青蘭高校だと教えてもらった。


さらには今年亡くなった子のこと、彼がそこから変わったこと、今は髪型がオタク見たいになっていることなどを聞きながら写真を見せてもらった。


その写真を見ながら私はウフフと笑いながら青蘭高校に行くことを決めたのであった。


直ぐに親に進路を相談し、理由はこじつけであったが真剣に話し合った結果、問題なく認められた。


そこからはあっという間に時間が過ぎ去った。


そして、ついに今日は高校入学式。


ユキと一緒に青蘭高校に行き掲示板を見た。


私とユキは同じクラスになりユキが喜んでいる。見ている私も嬉しかった。


でも、嬉しかったのはそれだけではない。


なんと彼も同じクラスだった。


彼と喋って見たいと思いながらユキと一緒に教室に向かった。


相変わらず男性の視線はムカつくものだったけど、一先ず私は自分の席を探して椅子に座た後ユキの席を確認した。


そしたら、なんと…ユキの席の隣りには彼がいたのだ。


私の中の心の中は「ズルイ、ズルイ、ユキだけズルイ」と叫んでいた。


気になってしょうがない私は、ユキと彼の話に耳を傾けながら、ユキの元へと急いだ。


そして、彼とユキが話しているの姿を見てすこし心がモヤっとした。


ユキの優しさや笑顔に惚れる男性が多いのを知っているからこそ、焦った私はつい思ってもいない言葉がでてしまった。

「ユキ、そんな陰キャに構うことないよ。自分で一人が好きって言ってるし、相手にしないほうがいいよ」


ユキはビックリしながらも伺うように、

「え~、でも席が隣りなのに…。」


私はさらに動揺して、

「誰にでも優しいのはいいことだけど、そのせいで告白されて断るのは嫌でしょ?毎回断るのが面倒くさいって言ってたじゃない」


「それは…。でも、好きになるかなんて誰にも分からないよね」


「こんな陰キャが、ユキみたいに可愛い子に優しくされたら好きになるに決まってるでしょ」


「も~う、みっちゃんは…」


その後もユキと会話を続けているが、心の中は悲壮感でいっぱい。


彼が気になっていたからこそ喋りたいのに、思ってもいないことを口走ってしまった後悔が頭から離れない。そんなことを考えながら気になって彼を見てみると…私達に一切興味がなさそうに携帯を見ていた。


興味を示されなかったのに私は何故だか嬉しくなった。


やはり彼は私達の顔や体に興味を示すことがないとわかったからだ。


さらには、そんな彼の心が知りたいと私は、彼のことをますます興味を示し、ずっと見つめるのであった。


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