第3話 入学式

青蘭高校に電車を乗って通う一人の青年がいた。


そう、その青年の名前は《加賀 卓斗》


周りから見れば、陰キャに見える。


それもその筈、伸びたくせっ毛の髪は片目を隠し、ワックスも何もつけていない髪はボサボサなままだ。


きちんとすればそれなりに見える容姿も、何もしない伸びただけの無動作な髪型が台無しにしている。そんなタクトに目を合わせる者はいない。


普通の高校生なら、期待や不安でいっぱいながらも心躍らせながら入学式に向かうだろう。しかしタクトは、何も期待などしていない。


一人の時間が多くなり、自ずと時間を持て余すことになったタクトはWEB小説を読み漁り、気付いた時には趣味はオタク化していった。


容姿も気にしなくなったことから、タクトは自分のことを陰キャだと認め、さらには恋することからも諦めていた。


タクトの心の中では、もうあんな悲しみをするくらいなら恋なんてしない方がましだと思っている。だからこそ何も期待しない。むしろ一人で居ることを望むようになっていた。


卓斗は携帯片手に、最近は異世界ファンタジーのWEB小説を読んでいたら、気付けば青蘭高校の最寄り駅の青蘭駅に着いた。


駅から徒歩10分の距離を歩き青蘭高校に着くと、掲示板を確認してタクトは1年C組に向かった。


教室には数名の生徒がいたが、タクトは気にせず自分の場所を探し、机の上に自分の名前が貼ってある場所へと座った。


まだ時間があるので携帯を見ながら待っていると、二人組の女の子が入ってきた。


その内の一人が卓斗の横の席に座ったと同時に話しかけた。


「私の名前は亀岡 由紀、宜しくね」


活発な性格なのだろう、タクトの容姿を気にすることなく笑みを浮かべながら挨拶をしてきたのだから。


タクトは心の中で面倒くさいと思いながらも、

「あぁ、宜しく」


「………。」


その後の言葉がないことに驚きながらユキは、


「それだけ?普通名前くらい名のるよね?」


「加賀 卓斗だ。これでいいだろう?」


「もしかして私に照れてる?それとも女の子が苦手なのかな~?」


「……。悪い、一人が好きなんだ」


そんな会話をしていると、もう一人の女の子がやってきた。

「ユキ、そんな陰キャに構うことないよ。自分で一人が好きって言ってるし、相手にしないほうがいいよ」


「え~、でも席が隣りなのに…」


「誰にでも優しいのはいいことだけど、そのせいで告白されて毎度毎度断るのは嫌でしょ?毎回断るのが面倒くさいって言ってたじゃない」


「それは…。でも、好きになるかなんて誰にも分からないよね」


「こんな陰キャが、ユキみたいに可愛い子に優しくされたら好きになるに決まってるでしょ」


「も~う、みっちゃんは…」


タクトはそんな会話を聞いて、なんで好きになるのが当たり前なんだ。しかも断る前提だし。そんなに簡単に人を好きになれれば苦労しねぇよ。


卓斗は心の中でイライラしながらも、携帯でWEB小説の続きを読むことにした。


程なくして、担任と思われる人が現れ説明を始めた。


説明が終わり、体育館へと足を運ぶと入学式が行われた。


校長先生や生徒会長の挨拶を聞き流していると、やっと入学式が終わり再度教室に戻ることになる。


教室に戻ると担任は今後の予定を説明し、今日は自己紹介をしたら終わりだと告げた

順番に自己紹介が始まり、隣りの亀岡 由紀の自己紹介が終わると男子達の視線が凄いことになっていた。


それもその筈、由紀はサラサラな黒髪が特徴で、目はぱっちりしており、鼻や口は小さく顔全体が整っており、アイドルかと思うくらいの可愛さをしているのだ。


その後も順番に自己紹介は続き、気付けば由紀の友達の番となっていた。


「私の名前は深川 みな美です。趣味は料理で、家で飼っている猫と遊ぶのが一番の癒しです。そんな私ですが宜しくお願いします」


彼女の自己紹介が終わると、由紀の時と同じように男子の視線が凄いことになっている。


しかし、その視線は顔よりもミナミの体にそそがれていた。

もちろんミナミの顔も凄く美人なのだが、何と言ってもスタイルが凄いのだ。

胸がはちきれんばかりに大きいのにくびれがある程に細いウエスト。そして、スカートから見える細く長い脚がより一層際立たせ、さらに、白く透き通るような白い肌にクラスメートの男の子達は見惚れるばかりであった。


その後は何事もなく自己紹介は終わり、タクトの高校生活1日目が終わった。

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