第21話 心の壁

 そのあとは周囲に気をつけ、遠回りしながら歩き始めた。そしてアリーから魔物について色々聞きながら歩いた。

「まずは草原で魔物を倒して、それが慣れたら森の入り口でとか少しずつ弱い魔物を倒すの」

「俺、まだ戦った事ないんだけど…」

 つい、アリーに弱音を吐いてしまった。

「始めて何かするのは皆、初心者だから出来なくてもおかしくないの」

「そんな…もんかなぁ…」

 俺は自信なく呟いた。

「だから、やるかしないかの差だよ」

「えーと…何事もやる気があるかないかと言うこと?」

「まぁ、簡単に言えばそうだよ」

「分かった!頑張ってチャレンジしてみる!」

「そうだよ…始めから出来ないとか決めつけないで!!自分から壁を作っちゃ駄目だよ」

 自信がない俺を励ましてくれて嬉しかった。

 それと同時に自分で壁を作っていたことを気付かせてくれながら、その壁を取り払う様に言ってくれたアリーに感謝した。

「誰にでもチャレンジ出来ると思うの。それに自分自身の壁を取っ払っちゃえば、チャレンジするのも怖くないよ」


「でも、俺自身の壁って…どうすればいいか分からないんだけど…」

 アリーによって解決策は見つかったけど、どうしようか悩んでいると

「ラン自身が苦手な事はない?」

「苦手な事?うーん、一番は…人との関わりかたかな…後は」

「人との関わりかた?人見知りとは違うの?」

「うん…兄上以外からは、ほとんど悪意や殺意しか受けてこなかったから…」

「それって…」

 アリーが何を言おうとしたのが分かった俺は

「ユリアさんやタギ、町の人は別だよ。俺も貴族だったから顔には出さなかったけど…。後、始めてアリーと話してた時も結構緊張してたんだ」

 アリーが悲しそうな声で気を使って

「そうなの…。だったらまずは私と話して、皆と普通に話せるようになろう。そして私以外の人とも少しずつ関わってみようよ」

「う、うん。ありがとう」

 俺は少しずつ時間をかけながら、人見知りを治せるように頑張ろう。

「ランが自然と笑えるように、私も手伝うからさ」

 アリーにそんな事を言われた俺は

「俺、我慢しないでいいの?」

「我慢しながら話してたら、いつかラン自身が壊れちゃうよ」

「そうなの?もう7年はこの状態だけど…」

「えっ!それって限界ギリギリじゃない!?」

 アリーの言葉に疑問を持ちながら

「元々貴族は、我慢の連続だったから我慢するのは慣れてたよ」

「それじゃあ、貴族って我慢するのが当たり前になってるの?」

「うん、人に弱味を出してたらそこを周りから攻撃されるから。感情を抑えることは当然だから」

「…叔父さんから『貴族って…なんか違和感がある』って言ってたけど、感情を抑え込んでるからか…」

 そっか…平民から見たら、感情を抑え込んでいる事は変に感じるのか…

「貴族は作り笑いが基本だから…。その人の感情は関係ないんだよ」

「そ、それって皆自分の感情を出さないの?」

アリーが信じられないというような表情をした。

「う、うん…だから貴族は感情を抑えながら、誰も見てない場所で泣いたり、感情を吐き出したりしてんだよ」

「そ、そうなんだ…」






 

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