だじゃれの魔法

「おばあちゃん、最近寒くなってきたね」

「そうだねぇ。じゃあ今日は寒くなるお話をしようか」


それはね、おばあちゃんがまだ全然生まれてないときの話でね。


昔々、あるところに1人こ洒落好きな男がいました。

あまりにも洒落を言い過ぎるので、周りからは疎まれていました。

いつものように、村をブラブラ歩いていますと、突然面白い駄洒落を思い付きました。

男はすぐにそれを口に出します。早く周りに聞いてほしかったのです。

「布団が吹っ飛んだ」

目の前にあった家の物干しから、布団が落ちてきました。

家の主人は気付いていません。

疑われないよう、こっそりと自分の家へと帰りました。

玄関の前で雀が死んでいました。

男は、

「鴨かもしれない」

と呟きました。

雀は鴨になりました。

寒い季節ですので、鴨鍋が美味しそうです。

翌日、男は寒さで目を覚ましました。

とても寒いです。

囲炉裏に火をくべようとしましたが、炭がありません。

「そうだった。炭は隅っこに置いてあるんだった」

男が取りに行くと、どんどん炭の入った壺は離れていきます。

不思議なものです。

諦めて外に出ると怒りの表情の村人がいました。

口々に、

「お前がしょうもない洒落ばかり言うから寒くなってしまった。どうしてくれるんだ」

と、言いました。言い掛かりです。困っているのは男です。

「えーと、じゃあ暖かくなるような洒落を言えばいいんすかね?」

男は必死に考えました。

が、こういうときこそ何も思い付きません。

男は、村人が暖をとるための篝火にされました。

要は火だるまの刑です。

温かくなりました。

おしまい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る