第5話〜元勇者、出会う〜

さて……私の仕事と言うのは、この国。バイトール王国の中にある一軒の建物の中で、仕事をする事にしていた。まあ、見た目は、フードをすっぽりと被っているから、国の住人に変な目で見られているのかも知れない。でも、何故私がフードを被っているかは、ちょっと理由がある。それは…………私の見た目についてだ。今の私は、銀髪の髪をしているので、この国では特に目立つ。

前にフードを被らないまま、国の中を歩いていたら


「美しい、私に相応しいな、金貨200でどうだ? 可愛がってやるぞ」


裕福な格好をした男に、そんな事を言われてしまった。金貨200と言うのが、どれぐらいの価値なのか、解らないが……この男……私の容姿を気に入って、そんな事をほざいてきた。

しかも明らかに視線がにやけている。

これはあれか?私の事を性奴隷として、手に入れたいとか思っているんじゃないだろうか?

ちなみに性奴隷と言うのは、この国では禁止されてはいないので、普通に性奴隷もいたりする。私が前に見た奴隷は、首輪をした女性で、目が虚ろな感じだった。

奴隷にされれば、その先に何が待ってるかは、まあわかる気がする。特に女だとね……

とにかく、私は性奴隷になんかなりたくなかったので、きちんとお断りしたら、その男が激情して襲い掛かって来たので、私はその男に攻撃を加えた。まあ……女の身で弱くなっちゃったし、魔法も使えないので、とりあえず男の急所を思いっきり蹴り上げる。ぐちゃって嫌な感触がしたが、まあ……あんな事を言って来たんだし、自業自得だと思う事にした。

めっちゃ痛いんだっけ?あそこを潰すのって?

もし使えなくなってしまったら、ご愁傷様と言う事で、まあその方が助かる女性もいるのかもしれないけどね?

男は白目を向いて倒れたので、その隙に逃げる事にした。

で、そんな事があってから私は、見た目を隠す為、フードを被る事にしたのである。

後で聞いたのだが、白髪の髪は、特に貴重でなかなかいないんだと言う事。

種族にもエルフ等がその髪の色をしていると聞いたので、じゃあ私は、エルフなのか?って思ったが、エルフの特徴は、耳が尖っているらしいので、確認したけど全く尖ってなかった。

まあ、あの魔王に性別を入れ替えられただけだし、種族変換なんかさせられた訳じゃないって事だよなあ……。そんな訳で、外に出る時は、ほとんどフードを被る事にしたのであった。

そんなある日、私はいつものように仕事場にたどり着く。



「あ、ナナさん、おはようございます」


「おはよう、タマコ」


私は、働いている職場に辿り着き、同僚に挨拶する。

この同僚の女の子、頭に猫耳が生えていて、猫の獣人だと言う。ヒーリングキャットって呼ばれる種族なんだと語ってくれた。で、名前はタマコ、濁点をつけたら美味しそうな名前だと思うけど、気にしない事にした。

しっかしなあ、この猫耳の女の子も可愛いな?かなり男にモテるんじゃないか?なんか私の周りには、可愛い子が多いな。まあ、役得なのでいいんだが。


「ナナさん、今日はそんなに忙しくないみたいですよ?」


「そう? じゃあ早めに終われる?」


「それは解らないですね……あ、そろそろ仕事始めましょうか?」


「そうね」


そう言って、タマコと一緒に仕事を始める。

ちなみに私達がやっている仕事と言うのは、馬車から送られてくる品物の整理、品の状態チェック等を行っている。で、私が担当しているのは、食材のチェックだった。

馬車は、色んな国や村からの品を運んでくるので、たまに食用として使えない物など、毒物等などが紛れこんで入ってくるので、それのチェック作業を行っている。

後で解った事なんだが、私には魔法が使えない代わりに、ある特殊体質が備わっている事が解った。

それは……状態無効。この状態無効、魔王に女にされた時に備わったらしく、魔王城で暮らした時、魔王が「お前には、状態無効の能力をつけてやったぞ。だから毒殺とかされないし、状態を変える魔法とかも効かないしな。けど、我の子は産めるように設定しといたぞ」とかほざいていた。

いや、なんでそれだけ残すんだよ?魔王……って思ったのだが……

つまり、あの魔王だけがこの能力を解除出来るらしい。まあ……もう魔王、いないしな。

この能力のお陰なのか、人がいる時に、猛毒のドリカブト草が大量に入った物をうっかり食べて、何ともなかったので、そこにいた人達に凄い目で見られたけど……(ちなみに後で聞いたら、このドリカブト草、一つあっただけで、即死するレベルの猛毒だったと後で聞いた。ちなみに味は不味かった)

で、本当に状態無効なのか? 色々と実験してみた結果。

私は、麻痺・毒・火傷・凍傷・呪いなどが、ほぼ効かないと言う事が解ってしまった。

なので、それを他人にあまり知られないように、隠しながらバイトール国にやって来て、今の仕事に付いたんだが……タマコぐらいには、教えてもいいのかも知れないな……とか、最近ちょっとそう思っている。今日の仕事は、上司が言うには、馬車二台分の荷物しかないので、いつもよりかは楽だった。一台をタマコが担当して、もう一台を私が担当する事になって、馬車の中身を確認していく。今日運ばれたのは、別の国から来た、お肉だった。

私はお肉を確認してから、少し切り取って、食してみる。焼かれてないので、ちょっと旨くなかったが、毒性反応は無いので、商品として使える品と決めて、馬車から出していく。そんな作業を続けて、ある程度時間が経って、馬車に積まれていた荷物が全部なくなったので、仕事が終わった。

仕事が終わったので、タマコの様子をみてみると


「あれ? ナナさん、もう終わったんですか!?」


「まあね? えっと……タマコは?」


「見て解りません……?多いんですよぅ~それに品も少し重いし、あの……ナナさん?」


「……はいはい、手伝って欲しいんでしょう?」


「わあ、助かります!」


私はそう決めて、タマコの仕事を手伝う。ある程度時間が経過して、タマコの方も仕事が終了した。


「ありがとうございます、ナナさん」


「いいわよ、それじゃあ私は帰るわね?」


「え、あの……一緒に食事とかどうです? お世話になったし、奢りますよ?」


「……いいわ、すまないけど、お断りするわね」


「そうですか……あの……もしかして……か、彼氏と待ち合わせとかですか?」


「…………何を想像しているかは知らないけど、全く違うから。それじゃあね」


「あ、そうですか……それじゃあお疲れ様です」


そう言ってタマコと別れる。彼氏と言われてもな……その相手とか全くいないんだが?

男がいると思われてるのだろうか?

全くいないんだけどね……

あの子は一体何を想像したんだ?って思ってしまった。とりあえず、仕事が終わったので、娘の為に何か買って行こうと思ったので、移動しようとして、ドンっとぶつかってしまった。


「あ、すいません……」


「いえ、お気遣い無く」


そう言われて、フード越しに相手の顔をよ~く見てみると、そこにいたのは、今、私が、もっとも会いたくない人物。

あの、勇者君なのであった……

えっと……何でこの国にいるんでしょうかね?この男……

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