私は、、、コウちゃんと呼ぶのはよしてくれ

 予定時刻ぴったりに現れたが、どういうわけだ。


「偽装にしては目立ちすぎだぞ」

「仕方ないさ」


 二人の魅力に、すれ違う男たちは漏れなく目を奪われているではないか。


「俺のことは見てないさ」

「見てるさ。瑞々しい美女を二人も連れたあのおっさんは誰だってね」


 男は静かに視線を下げた。


「本題に入ろうか、コウちゃん」


 できれば席を外してほしいのだが、エリちゃんもユリちゃんも立たない。困ったな。


「聞かせてもらおうか」

「あぁ。蛙が冬眠から目覚めたようだ。例のリストの中に、大使館と出国のやりとりを始めた男がいる。出国歴は近3年で5回あるが、本人が出たことは一度もない。どうやら今回は本人らしい。直行便を予約するとは、嘗められたもんだ」

「私の任務に関係のある部分だけを話せ」

「その英国人は、元締め《マスター》だ。今日も協力者たちと接触している。後片付けだな。出国前に奴とも会うはずだ」

「つまり、ついでに、ということか」


 二人の前でどこまで口にするつもりなんだ。この娘たちに何をさせるつもりなんだ。


 男はさりげなく指を折った。

 一本、了解。次に三本、標的は三人。次に三本、こちらは三人。そして二本、片付けが要る、か。

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