第2話アメリカにもゲート出現



キラーズの死体を文庫本と一緒に撮ってみた。

1匹だけだと凄さが分からないので、20匹を集めてもう1度撮って投稿する。

キラーズを倒して、ステータスボード表示やスキルと魔法についても投稿しておいた。

それについての書き込みが賑わっていたが、ある事に気が付いた。


最初の動画が今日の午前8時頃だった。

今は16時を過ぎようとしている。

岡山駅から隣の兵庫県でも、結構な距離がある筈なのに魔物がここまで来ていた。

あの動画でも男性10人が戦いを挑もうとするも、あの小人1人にあっけなく倒されていた。

キラーズは魔物の中で最弱な魔物だったのかも知れない。

偶然にも1匹相手に戦えた事も幸いした。

あの後ろの19匹に初めから襲われていたなら到底勝てないだろう。

そして推測だが魔物は基本的には集団で行動をしていると思う。

あの小人が仲間を呼び寄せていたのが証明している。

すると1匹目は偵察をおびていたのか?


凄いスピードで被害が広がっているのでは…。俺はそう思うと急いで親に電話をした。


始めはこちらの話を信じるどころか正気を疑い出す始末だったが、俺が撮った写真を送った事でようやく信じてもらえた。

絶対に避難する事を約束させた後、ようやく通話を切ったが心配で堪らなかった。

警察にも連絡したが、どうも信じて貰えなかったようで対応が素っ気なかった。


取り敢えずわが身を守る為、ここを砦のように強化しようと思う。

家の周りの植物に、植物魔法で【捜索】を発動しておいた。

不審な物を見つけたならすぐに知らせてくれるのだ。

24時間続く魔法で、MP10を消費してしまった。


次に土魔法の【創作】を使って土塀を作って行く。

高さ3メートルの土塀で囲み、外側はできるだけ垂直にしておいた。

その土塀に植物魔法で周りの植物を集めながら植えつけた。

土塀の植物に植物魔法の【成長】と【拘束】を掛けてゆく。

この植物達に魔法効果が24時間続くだろう。

この成長で強く大きな植物になるハズで、今後期待できる防御ラインになってくれるだろう。

また不審な物が近づいたなら【拘束】して知らせてくれるはずだ。


その瞬間、立ちくらみがするとドッサと倒れた。




「あ!痛たたた」


頭がズキズキとして、頭痛がしている。

どうやら失神していたようだ。地面にあお向けで倒れていた。

ステータスを確認すると、俺のMPは16になっていた。

多分MPを使い切ったのだろう、そして失神してしまった。

そして回復には、時間が必要なのだろう。

今後、気を付けないといけない。


頭痛を我慢しながら立ち上がると、スマホで時間を確認。

午前9時で、一晩中倒れていたみたいだった。

たしか倒れたのは、16時頃で今は9時だ。

17時間ぐらいだから、1時間にMP1回復するのだろう。

しかも親からの着信も何度も有った。掛けると母親が泣いて怒っていた。

栃木の母親の実家に避難したらしく、俺もようやくホッとする事ができた。


そして頭痛が治まった頃に、土塀にキラーズが拘束されているのに気が付いた。

手斧で次々と倒して行く。

すでに拘束で首を絞められて死んだキラーズが12匹も居て驚いた。

もっと驚く事があった。手斧で倒した数は53匹も居たのだ。


それと拘束で絞め殺した植物は、シアンと言う魔物に進化していたのだ。


シアン


Lv1


HP5

MP10


STR2 VIT1

DEF1 INT1

DEX2 AGI2


鑑定した事で、シアンは俺に従順な魔物である事が分かった。

そして俺のステータスは、


紅 一


Lv4


HP50

MP60


STR6+2 VIT2+2

DEF2+2 INT3+2

DEX2+2 AGI3+2


SP530


植物魔法・土魔法


鑑定


称号

従魔を従えし者(魔物を従える能力)


どうやらLvアップした事で、MPが全回復するのだと納得。


俺はハッとして軽トラに乗り込んで急いで農村へ行く。

ひどい事になっていなければ良いと思いながら向かったのだが、残念な事にそれは当たっていた。

農村に着いた時には、周りは静かでシーンとしている。

いつも吠える犬が吠えていないからだ。

何度か世話になった食品店に入ると、生物の肉や魚が荒らされている。

床には、赤黒くなった血だまりが残っている。

たどたどしく買い物をしていた俺に、辛抱強く対応してくれたおばさんの事を思い出す。


「誰か居ませんかー、誰か居ませんかー」


返事は返ってこない。ドカドカと土足で奥の部屋に入るも誰も居なかった。

軽トラのクラクションを、何度も鳴らしてみたが何の反応も無かった。

他人の家だが人を探すため入ってみたが、壊れた窓や血だまりしか発見できなかった。

30軒程入ったが、やっぱり同じだった。

道路上に残る血痕をたどると山の中へと消えていた。


そんな悲惨な跡を動画のため撮り住所も明記して投稿。

住民の姿が見当たらないと書き込んだがどうなるのだろう。



食品店の日持ちのする食料を、軽トラに載せてゆく。

紙に俺の住所を書いて置いておく。

多分、おばさんは帰ってこないだろうと分かっていたが、一抹の希望をこの紙に託した。


次にガソリンスタンドに寄り、ガソリンを満タンにした。

ここにも誰も居ないので、ガレージを覗くと空のガソリン携行缶20Lが3缶あった。

それにガソリンを満タンにして、軽トラに載せて俺の家に戻った。


土塀を前にして、この荷物をどうして家まで運べば良いか迷った。

出るときは飛び越えたが、荷物を持って飛び越えるには難しい。

Lvアップした事で身体能力が上がったのだが、1回2回なら出来なくもないが10回はキツイ。

土魔法で垂直になった土塀を、1ヶ所だけ少し傾斜をつけ、そこに階段を作った。

内側にも階段を作ることで、出入りを容易にする事が出来た。

階段の両脇にはシアンを配置して、防衛を万全にする。

もちろん植物を配置して階段が見えない様にする。


家に入って何気なくテレビをつけると、ゲートの報道がされていた。


アメリカのニューヨークの中心地にゲートが出現したらしい。

はっきりしないのは、手振れがひどい動画だったからだ。

人が逃げ惑う中、痛ましい悲鳴の声がハッキリと聞こえる。

そんな頭越しだが、黒いゲートが少し映っていた。

間違いなく駅前のゲートと同じだ。


次の動画はプロのカメラマンが撮ったのだろう。

バイクでの2人乗りをして、逃げながらの撮影だった。

黒い狼が次々と人を襲っている中、1体の黒狼が執拗に追いかけていた。

その黒狼の形相は、迫力を直に伝えるには満点の映像だった。


アメリカ政府の動きも速く、海兵隊が召集され魔物討伐に向かった。

ゲート出現点から30キロが、防衛ラインと定められ続々と兵隊が召集されている。

討伐に向かった海兵隊の、ヘルメットに装着されたカメラ映像が次々と映されていた。

最初は優勢に魔物を倒していたが、数が増えて被害が出てくると撤退を開始。

そんな撤退戦も流されている。


違う局では、日本政府を非難していた。

日本政府の対応が遅いと同じような話を何度も討論している。

1時間前に日本政府が自衛隊の緊急発動を記者会見で発表。


俺は無性にムカついたのでテレビを消した。

政府批判より、魔物に対して何をどうすれば良いかを俺は知りたかった。



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