第5話 生徒会長との出会いを再会と呼ぶらしい


 一時的に記憶を消されていたとはいえ、今ハッキリと思い出した大和。

 同時に大和は自分の使命と役割、そして鏡月華との関係も。 

 鏡月華の正体はコードネーム銀幕(ぎんまく)とわかった。国家戦闘員は一人一人にコードネームを与えられ基本戦場で本名は使わない。国家戦闘員の特徴の一つとして基本的に国が抜擢したメンバーは強制的に軍人となるがそれと引き換えに権力やそこそこの生活が約束される。それと同時に学生の場合は学校に行かなくても無条件卒業保障や、周りの学生にバレないよう生活する為の生活拠点も与えられる。


「貴女は銀幕ですね。最初は誰か全く分かりませんでしたが今の貴女を見て察しがつきました。女王陛下の記憶操作と言い何が目的ですか?」


 実は詳しいことまでは聞かされていない大和は鏡月華に質問して確認する。


「目的はただ赤城君には学年代表となって私のお手伝いをして欲しいのと学年代表としての力をあの子達に見せてあげて欲しいだけですよ。残念ながら女王陛下のことは知らないとでも言っておきましょうか」


「では何故、生徒会メンバーにも国家機密であることを口留めだけで教えたんですか?」


「あぁ~それは今年の生徒会メンバーは今の三年生の副会長が引退しても他のメンバーは私と同じ二年生です。なので来年も今のメンバーで行くのと今後副会長権限を与える者の秘密を教えることで信頼関係を構築する為ですよ。それにいずれ時間が経てばばれますからね」


「もしかして半年後の生徒会役員選挙で副会長になれと?」


「そうですよ? 知っての通り他の有力な魔術学園は全て会長、副会長は国家戦闘員がなっています。それだけ学校通しのパワーバランスも大事なんです。何より重要なことは魔人が攻めてきた時にすぐに対応できるための準備ですから」


「いい加減にしてくれ。ただでさえ国家戦闘員ですら嫌なのになんで学園生活まで面倒なことに巻き込まれないといけないんだ」


「それが力を持つ者の宿命だからです。今回は簡単に手合わせと思いましたが丁度いいですから一回貴方に現実を教えてあげましょう。ファントム全力で来なければ死にますよ?」


 華の雰囲気が変わる。今までの笑顔だった華が目が細く鋭くなり獲物を殺す目へと変わり、肌が焼け付くような殺気が直に大和へ伝わる。大和は全身に冷汗をかいた。このままでは死ぬと身体が警報を鳴らしたからだ。大和はビビっていたら間違いなく死んでしまうと震える身体に何度も言い聞かせ、震えて動くことを放棄しようとする身体を必死に制御する。


「このままじゃ……本気で殺されるよな……こうなったら、魔力全開放。全魔力目の前の敵を葬る剣となり我が身を護る盾となれ。敵は眼前にあり。明日の光掴みたくば、己が限界を超えた力を我に授けろ。異論は認めない。太古からの契約の名の元に命ずる我が名はファントム。来い、幻影にまといし大いなる力」 


 ここまで来たら面倒がとかそう言う問題ではないと開き直った大和はこれは生きるか死ぬかの問題だと認識を改めた。


「あら? 完全詠唱と言うことは本気でくるつもりかしら?」


 大和からしたらさっきまでの華の言葉遣いは嘘みたいにな光景だった。本来華の口から日常的に敬語が出ることはない。むしろさっきまでが異常すぎて大和は油断していた。今も一応敬語と言えば敬語を使っているがさっきまでみたく一言一言に気持ちがこもってない。


「精霊レベルの魔獣を簡単に殺す貴女相手ですから」


「魔力のオーラは完全詠唱でもAランクまでしか防げないのを忘れたのですか?」


「完全に防ぐ必要はないからこれで十分です」


 言葉を言い終わると同時に大和が動く。


「五大元素の一つ水よ、球体となりて直進せよ。球水。我に力を与えよ。レジスタンス」


 大和が二つの詠唱をした。

 華と接触するまでに剣の生成と球水による先制攻撃を可能にした大和。

 大和自身正直Cランク魔術では通用するとも思えないがないよりましだと考える。

 高位魔法や高位魔術は生成する魔法陣が複雑化し詠唱も長くなる。勿論例外は何事にも存在するが基本はそうゆう仕組みだ。


「光の矢よ。汝の敵を射抜け」


 華がCランク魔法で対抗する。

 動く気配を見せない華は落ち着いた態度を崩さない。

 ただ冷静に周りの状況を把握し分析することで最善の手を打つだけ。


「魔法陣展開。裁きの光を目前の敵に示せ」


 大和が焦る。

 三つの詠唱を華がほぼ同じタイミングで終わらせたからだ。

 光の矢四本が大和に向かって直進。

 これには自動追尾性能がある。大和は水の球水の攻撃対象を華から光の矢に変更して対応する。


 演習会場の一角には大きな魔法陣が展開された。

 展開だけで魔法行使にすぐに利用する気配を見せない華。

 大和は突撃し右手に持っている剣で斬りかかる。

 だが華の剣がそれを阻む。

 華はさっき「裁きの光を目前の敵に示せ」の詠唱で生成されたSランクの光の剣を持っている。 あの剣は光属性で最高位の位置に値するが故に光魔法と魔術はほとんどあの剣で反射されてしまう。唯一光で反射出来ないのが剣より上位クラスのS+ランクの魔法、魔術だ。彼女のコードネーム銀幕はこの銀鏡の剣からきている。今の一太刀で大和の生成した剣が砕けた。巧みな足さばきで素早く間合いを取るが、華はそれを読んでいたかのように大和へ詰め寄る。

 大和は魔力のオーラを媒体に飛んでくる剣による連撃を避けながら詠唱を開始。


「闇の力よ。目の前に我が道を阻む者を切り裂く為の力を分け与えたまえ」


「光に招かざる者、その闇の罪を受けよ。全てを焼き付くせ聖なる光。汝が敵は我の行く末を阻む者。ならば焼き尽くして構わない」


 武器系統の呪文は比較的短いが戦闘中となるとそれでも生成するのには一苦労する。ましてや相手が格上の場合はそこに神経を集中させないといけないので中々に骨が折れる作業となる。

 大和の頭が警報を鳴らす。

 今の詠唱はまずいと。

 しかし、まずは頭上から振り下ろされた光の剣を生成した闇の剣で受け止める大和。


「ほぉ~、今の軌道読みましたか。私の一撃を止めるとは流石ですね」


「ぎ、ギリギリだけどな……」


 瞬間、大和がお腹に痛みを覚える。

 華の左拳で殴られた大和は間髪入れずに飛んでくる蹴りに対して後方にジャンプをして威力の軽減を図るが壁まで蹴り飛ばされてしまう。魔力のオーラでは物理攻撃は防げないからだ。防げるのは魔法と魔術攻撃。華の魔力が乗った蹴りは蹴り自体が物理攻撃となっている為、女の子とは思えない重たい一撃を喰らってしまった大和は壁に衝突すると同時に口から少し血を吐いたがすぐに魔力のオーラで治癒を開始して気合いを入れ直す。完全詠唱のオーラに自動治癒をさせると魔力を結構消費することから長期戦になれば大和の魔力量が辛くなる。それでもしなければここで勝負が付いてしまう。これが今の実力差。


「あら? 結構辛そうですね? 学年代表になってくれるのであればここで終わりにしますけどどうしますか?」


 華の大和に対する殺気が弱まる。

 生徒会長として大和に質問をしているからだ。


「学年代表はまだ受けてもいいが副会長はいやだと言ったらどうする?」


「それは……困りましたね。では、力尽くになりますがどうします?」

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