Episode21

永遠の眠りエターナルスリープ』で素振りをして、十分に身体が温まったところでバットに向き合う。


「オイ、タケル。マヂで止めろ。ソレで撲られたら、洒落になんねーだろ!」


「いやいや、バットさん。二度と忘れないように身体で覚えてもらいますからね。」


「もう二度と忘れねーから!もう大丈夫だから!!」


 バットの懇願を華麗にスルーして、イ◯ローのように『永遠の眠りエターナルスリープ』を構える。


「逝ってこい、大霊界!!」


 フルスイングで『永遠の眠りエターナルスリープ』を振り抜きバットの顔面を捉える。


「ひでぶ!!」


 どこかの世紀末でヒャッハーしている人の断末魔が聞こえたような気がしたが気のせいだ。


 撲られた直後、バットの身体が治癒の魔力に包まれあっという間に回復した。


「これで、バットさんも二度と忘れないでしょうね。」


「おう、身体的にはなんともないが、精神的にダメージを受けたな。」


 この事がきっかけとなったかどうか分からないが、冒険者が怪我をして治療院に来る人数が格段に減っていく事になった。



 次に僕が気になっていたことが、フィクシアの衛兵に関してだった。

 フィクシアはそれなりに大きな都市であり、端から端まで移動するにも一苦労する。衛兵の詰所は幾つかあるものの、衛兵の数が少ない上に先の防衛戦で戦死者も出た為に詰所として機能していない所もあった。


「エレナさん、この都市の衛兵について気になる事が幾つかあるので、提案したいのですが…」


「タケル君、衛兵に関しては私の管轄ではないのだよ。知事に話を通しておこう。」


「ありがとうございます。」




 エレナさんに衛兵の件をお願いして三日たったある日。


「タケル君、すまない。知事に衛兵の件を話そうとしたのだが、先の防衛戦のどさくさに紛れて知事の一家が逃亡してしまった。」


「えっ!?じゃあ、今のフィクシアの代表は誰になるんですか?」


「今は空席の状態だな。そもそも、このフィクシアは『アーバン帝国』、『ライオネス獣王国』、『ルナミス神聖国』の三ヶ国によって造られた中立貿易都市なのだ。知事は各国が持ち回りで選出し任期は5年。今期は『アーバン帝国』から選出された知事で、任期は残り半年だったんだがな…」


「中立なのに帝国が攻めて来たンですか!?」


「まぁ、最近の帝国は天下統一を目指しているそうだからな。」


「…帝国以外の住民にとっては、迷惑な話ですね。」


「そうだな…」


 二人して、暗い雰囲気になってしまった。


「そう言えば、タケル君の言っていた衛兵についての提案とはどんな事なんだ?」


 エレナさんが話題を変えるように、話して来たので僕は思っていたことをここぞとばかりに話してみた。


「そうですね。衛兵の皆さんが身に付けているのは革製の防具ですよね?」


「そうだな。動き易さを重視しているのは確かだ。」


「ってことは、防御力はそれほど無いってことですか?」


「そうなるな。」


「では、全身鎧が有るとしたら、どうしますか?」


「ッ!?タケル君、そんな鎧が存在するのか!!」


「勿論。しかも、オーガの渾身の一撃をノーガードで受けてもびくともしない代物です。」


「魔法は?魔法の方はどうなんだい?」


「上級魔法並びに、ドラゴンのブレスを反射します。」


「そんな…その鎧をフィクシアの全衛兵に配備するつもりなのか!?」


「はい。後は、盗難防止のため個別に認識票ドックタグを支給しましょう。この認識票ドックタグは生体認証機能が付いているので、本人以外が持っても効果がありません。」


 僕のイメージとしては某アメコミのヒーロー『ア◯アンマン』的な鎧です。

 連続駆動時間は最大168時間、暴徒鎮圧用武装として電撃棒スタンスティック、拳銃型スタンガン、捕縛用ネット、催涙スプレー、魔封じの手錠。

 魔物対策用武装としてショルダーパルスレーザーガン、スタングレネード、スモークグレネード、レーザーブレイド。


「この鎧を着れば、準備運動がてらに一個師団(約10,000~20,000人)を壊滅させられる位の戦闘能力は有りますよ。」


「そ、それほどの戦闘力が有るのか…」


「フィクシアを守る為に必要だと思い用意しました。」


「ふむ、なるほど確かにタケル君の言うとおりこのフィクシアを守る為に必要な戦力となるだろう。しかし、過剰な戦力は余計な戦闘を招く恐れがある事も考えておかなければならない。

 タケル君、その事はどう考えている?」


「確かに、エレナさんのおっしゃる通り余計な戦闘を招く恐れがある事は理解しています。

 だからといって、無抵抗を貫いたとしても蹂躙されるだけならば、僕は激しく抵抗させてもらいますよ。

 それに敵は外から来るだけではありませんからね。」


『エレナ様、マスターは都市に蔓延る悪人を捕縛する為にも戦力は必要不可欠だとおっしゃられております。』


「AIさん…わかった。タケル君の申し出、ありがたく受け取らせて貰おう!!」


 こうして、フィクシアの防衛戦力は拡充して行くのであった。

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