EX-Episode1

 これは私達『神風』がタケルちゃんに出会うほんの少し前のお話。


◇◇◇◇◇◇◇◇


「なぁ、レイナ。本当にこの辺りがそうなのか?周りを見ても何も無ぇなぁ。」


「何よバット。お師匠が残した資料によると、この辺りにあるはずなんだから。」


「ねぇ、レイナ。ホントにあるの?その伝説の錬金術師の研究所って。」


 私はレイナ。Aランクパーティー『神風』に所属する魔法使い。

 私のお師匠が魔法の研究をする傍ら、錬金術の研究もしていた。そのお師匠が苦心の末、ようやく手に入れた資料が、かの伝説の錬金術師『エルドラ』が晩年に建てたという秘密の研究所の場所を記した地図であった。私達はその地図を元に研究所を探した。

 だが、『エルドラ』の研究所への道のりは遠く険しいものだった。

 そして、ようやく研究所の近くまで来たところで、私達は『災厄』に出会った。

 それは深紅に輝く鱗を持った一匹のドラゴンだった。


「オイ、レイナ。ドラゴンだ!!このままじゃ全員お陀仏になる!!研究所の事は諦めよう。」


「そんな!あと少しの所まで来たっていうのに、ここで諦めろっていうの!?冗談じゃないわ!!」


「けどレイナ。アタシ達冒険者は命あっての物種なんだから、ここは一度引いた方がいいよ。」


 バットやミラの言う通りだ。

 けど、お師匠が死ぬまで研究を続けてきた事を私が引き継いだ。ならば、お師匠の心残りを晴らすのが弟子としての務めではないだろうか?


「ええい!!ミラ、レイナを引き摺ってでも逃げるぞ!!」


「了~解!!」




 そうして、私達は深紅のドラゴンから命からがら逃げ出したのだった。

 ドラゴンから逃げている時、私達の横を何かが通り抜けた後、突風が駆け抜けたことがあった。




 フィクシアの街まで20キロというところで、私達は再び『災厄』に出会ってしまった。


『かようなところで人種に出会うとは、思ってもみなんだ。余興としては良い機会かの?』


「クソ!!ふざけんな、ようやくここまでたどり着いたっていうのに。」


「バットどうしよう?アタシ達ここで死んじゃうの?」


 私は恐怖で震えることしかできなかった。


『人種というものが、余の力にどれほど耐えられるか試すのも一興よ。』


 私達は地獄を見た。






『つまらん。余の爪がかすっただけで脇腹が抉れ、ため息をついたら半身に火傷を負うとは…』


 そう言って『災厄』はどこかに飛び去っていった。


 後に残ったものは傷付いた私達だけだった。

 重傷のバットを運びなんとかフィクシアに到着する。衛兵の人達の手を借りギルドまで移動する。

 ギルドまでたどり着いた時、衛兵の一人が大声で叫んだ。


「オイ、誰か治癒術師を呼んでくれ!!仲間がかなりの深手を負ってしまったんだ!!頼む、仲間を助けてくれ!!」


 そうして私達は、タケルちゃんと運命の出会いをはたしてのだった。

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