06_美少女とスーパー

スーパーについても違和感はあった。

結構周囲の人が見てくる。

人の視線を感じて生きるというのは、結構ストレスだ。


堀園さんがカートにかごを乗せて着いてきた。

なに気に新婚さんのような感じで、勝手に一人で考えて、勝手に一人で赤くなっていた。


これヤバいな。

美少女とは一緒に歩くだけで、何故か俺が優越感を感じるという危険な存在のようだ。

俺は何に対して優越感を感じているのだろうか?


『かわいい彼女を連れて歩いているんだ』みたいな感じだろうか?


だとしたら、彼女は俺の彼女ではないので、俺の勘違いだ。

俺の脳がバグってる。


「セリカくん、今日は何が食べたいですか?」


堀園さんが笑顔で聞いてきた。


やっぱりこれはかなりの破壊力だ。

こんなかわいい美少女が家で手料理をふるまってくれる・・・

仮に出来上がったのが消し炭みたいな料理であっても、いくらでもお金を出しそうだ・・・

どこならそんなサービスが受けられますか?


「食べたいものないんですか?」


しまった、また、どうでもいいことでトリップしていた。


「堀園さんはどんな料理が作れるの?」


「うーん、そうですねぇ。和食が多いんですが、ハンバーグとか洋食もある程度作れますよ?


あごに人差し指を添えて、少し上を見ながら考える堀園さん。

美少女は、仕草の一つ一つがいちいち可愛いな。


俺と同じ生き物だというのが、やや信じられなくなってきた。

こんな子の彼氏はさぞ鼻が高いのだろうなぁ。


「ハンバーグも魅力的だけど、和食はあんまり食べないから気になるなぁ」


「そうですか?お魚の煮物とかおいしいですよね」


ああ、『焼き』じゃないんだ。

コンビニ弁当が中心だと煮魚とか絶対売ってないからな。

あの、弁当の焼き魚も『焼き』じゃなくて、実は『蒸し』って話もあるしな。


そんな話をしている時に、全ての思考を覆す事象が起きた。

試食の実演をしていたのだ。


そこで、新発売のカレーのルーを宣伝していた。

俺の心はカレーに決まった。


堀園さんの方を見たら、彼女もこっちを見ていて、目が合ってしまった。


「カレーにしない?」

「カレーにしませんか?」


リンクしてしまった。


「「ははははは」」


野菜コーナーに戻って、じゃがいも、にんじんなどをピックアップしていく。

冷蔵庫に何があるのかなど見る必要はなかった。

だって、何も入っていなかったのだから。

普段料理は全くしないので。


調味料とかは入っていたと思うけど、それがいつのものなのか・・・


「セリカくん、カレーの肉は牛ですか豚ですか?」


あれ?何だろう?

普通はどっちなのか。


「堀園さんは?」


「うーん、うちは、牛の時が多かったです」


「じゃあ、牛でお願いします」


「はい」


うわぁ、微笑みながらの『はい』は、全ての男の心を鷲掴みにする破壊力があった。

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