第19話 なんかカウボーイでてきそうだな

 私が住んでいた場所からティファナまでは、トロリーという電車に乗って向かいます。ガタガタと、電車に揺られながら見る移動中の景色は、もう、その辺カウボーイが馬乗り回して綱ブンブンしてそうな景色です。

(どんな景色だ)


 なお、トロリーの途中駅にある、オールドタウンは、カリフォルニア発祥の地。歴史ある建物がいっぱい残っていて、西部劇のセットみたいな建物があちこちでみられます。


 元々この辺りは、メキシコになったり、アメリカになったりと度々国境線が行き来してるとこなので、本場のおいしいメキシコ料理の店とかもあるんですよ。


 トロリーに揺られ続け、ティファナの最寄り駅のSan Ysidro (サニシドロ、と聞こえた)に到着。メキシコ国境からティファナに入るのはめちゃくちゃゆるくて。パスポートをペラっと見せてハンコ押されるだけでサラッと入れます。入国審査5秒。


 流石に今はもうちょっとちゃんとしてるのでは、と。


 入ってすぐの場所は、割と普通の公園でしたが、確かカラフルな旗みたいなのがいっぱい立ってて。色使いの感じが、アメリカとも日本ともちがうなぁ、というのがまず初めの印象。


 アジア人は珍しいようで、たまたま下校で外に出てきていた小学生から歓声が。大勢の子どもたちのお手振りに、なんか韓流スターになった気分でした(言い過ぎか)。


 銀製品とかが有名らしいので、マーケットのあたりをウロウロしていると。売店のおばちゃんが声をかけて来ました。


「ニイハオ」


 違うわ!……まあ、仕方ないのです。私たちが、オーストリアの人とポーランドの人を見分けられないように、彼らから見たらアジアなんて一緒なのです。日本の場所を正確に知ってる人もどれくらいいるか結構怪しい。


「アンニョハセヨ、こんにちは」


 正解! でも、買いものするつもりもなかったので、スルーしようと立ち去ると。


「ドラえもん、クレヨンしんちゃん」


 私たちを日本人と断定し、なりふり構わず、知ってるアニメの名前を出して来たのです。なお、韓国人2人には意味がわからないので、私だけに意味は伝わってるわけで。


 遠ざかって行く客を前に、焦ったおばさんは、最後に必死の形相で叫びました。


「ちびまるコオオオオ!」


 この、誰にも笑いが共有できない、当時の私の苦しみを、理解していただけますでしょうか。


 なお、冒頭でだいぶおどかしてましたが。昼間に行って割と早めに出て来たので、特に危ない目には遭いませんでした。


 ただ、入国審査5秒なのに、出るのに2時間ほどかかるという。不法入国が多いらしく、出る方が厳しいようです。



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