第26話 市木美咲
「マルちゃん、ありがとうね」
清田は今、職業安定所に行っている。帰りには図書館へ行って本を借りてくるそうだ。その帰りに喫茶店へ寄ってコーヒーでも飲みながら本を読むらしい。暫くは帰って来そうにもない。
「ええねん。ワイも美咲ちゃんに会いたかったしな。それに未だ願いが叶った訳でもないねんけどな」
「もう充分だよ」
「そうかぁ、あいつ、このままやったら、また人生に迷いよるで」
「大丈夫だよ、これからは私達家族で頑張らないといけないんだもの」
「美咲ちゃんは偉いな。よう分かってるやん」
「チャンスを作ってくれたのはマルちゃんだよ」
「せやなぁ、願いを叶える星の使者、言うてもな願いを叶える訳やないねんな」
「でも、いっぱい願いを叶えてくれたよ。奇跡だって起こしてくれたもの」
「奇跡やのうて必然な。まだ地球では分かるには早すぎることかもしれんけど、いつかは理会できる時があるやろ。宇宙空間での全ての繋がりをな」
「また、難しいこと言い出したね!」
「あはははー。せやね、難しいね、うん、ややこしいわな」
「うふふふ、マルちゃんとお話ししてると今にも奇跡が起きそうだよ」
「まぁ、宇宙科学の力を借りたら必然が、ある場所では奇跡に見えるかもしれんな」
「だったら奇跡でもいい事にしようよ」
「せやね。でも奇跡って、そうそう起こるもんでもないやろ。これから美咲ちゃん達家族に何が襲いかかってくるかもしれん。そん時に大切なんは、それさえも捨て去るこやねんな。あいつは分かったような気になってるけど、ワイから見たらまだまだ不完全や。捨てる言う意味を分かってへんねんな。嫌になって何もかも投げ捨てるんやのうて、嫌やと思う前に切り離すんや言う意味を何処まで理会出来てるんか。そうやって要らんもんを捨てる事によって、重い荷物を背負ってまで旅に出る必要がなくなる言うことを。それからが始まりであり、再生なんや言うことを、あいつが理解できた時が覚醒やっていうことを知って欲しいねんな。そんためには、もう少しだけでも居てやってたかってんけどな」
「ありがとうね。でも彼は分かっていることがあるよ。近いうちにマルちゃんが星に戻ること。そして、いつまでも頼っててはダメなこと。それに、おかしいことがあるの。兎が守ってくれてる、って言うのよ。それって昔飼ってたウサギのムーのこと?って聞いたら、ムーは死んじゃいない、まだ何処かで生きている、って言うのよ。なんか不思議過ぎてマルちゃんとお話ししてるような気分になっちゃったよ」
「そうかぁ、ムーかぁ、不思議な奴っちゃなぁ」
「ええ? マルちゃん知ってるの?」
「あ、いや、あの元古本屋で保育園の園長で医者に化けたりするペットショップのオーナーに噂を聞いただけやねん」
「マルちゃんの星の親友だよね」
「ええ! 親友いう訳やないねんけど。星?って知ってたん」
「それぐらい分かるよぉ、リンちゃんだって絶世の美人で賢くて力持ち! 不思議だらけだよ」
「あかんわ、ワイらバレバレやん。この星の滞在期間もそう長いことないな」
「大丈夫! 絶対に喋らないから」
「ま、美咲ちゃんやからな。せやしバレる限界まで頑張ってもうたわ」
「もうバレちゃってるけどね。ありがとう」
(タッタリア、ワイの心の声が聞こえるか? この子だけには、あの記憶なくす薬、絶対に使わせへんからな)
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