第22話 破滅と破壊と新次元



 マルセリーノは今、目覚まし時計型タイムマシーンの中で超時空回線を使って交信している。


「おう、マレーロか? 忙しいとこ悪いな」

「いえ、瞑想していただけですから」


と宇宙哲学教授は答える。


「すまんすまん、妄想やのうて瞑想中に悪いねんけど、ちょっと教えてほしい事あって連絡してんねんけどや、ワイがそっちの星から出て行く時に作った理論でな、ジュリーアーノが機械を立ち上げよってん」

「噂は研究所から届いていますよ」

「そうか、ほなら話は早いな。早速やけどジュリアーノが完成させた機械のバロメーターが何んやおかしい数値を示してるらしいねん」

「宇宙エネルギー観測装置のことですか?」

「それな。こいつが分かったら全宇宙統合エネルギーの仮説を証明できる。そう思てジュリアーノに観測装置を作ってもうててんやんか」

「大胆な事をしますね。それでジュリアーノ宇宙電子工学教授が研究室から一歩も出て来られなかったのですね」

「まぁ、あいつにしてみたら珍しい事でも無いと思うねんけどな。あいつ、新しい理論ができたら、速攻で理論に基づいた機械さぁ、作り上げよるしな」

「働かせすぎです」

「うっ、それ言われたら辛いねんけど・・・。そんでやぁ、まぁ聞いてぇな。その観測装置の示した値がな、エネルギーがマイナスを示してる、ってジュリアーノが連絡して来よってん。宇宙には限りないエネルギーが偏在してるはずやのに、それはおかしいやろ! ってワイが言うてんけどな。お前、どう思う」

「簡単に言うと観測装置を作る前の段階で間違っていたと思えますね」

「それって、ワイの作った理論が間違えてた、って言うこと?」

「間違いではありません、と思います。ただ、先程までに瞑想をしていた時に宇宙の変化を捉えました」

「何んなん、それ?」

「破壊、です」

「それ、どう言うこと? めっちゃ物騒なこと言うてるんちゃう?」

「物騒かもしれません。が、このままずるずると進んでいても何も変わらない。それどころか現在の宇宙で起きている事実からすると進化どころか退化、つまり破滅へと向かいかねません」

「全然、分からへんねんけど?」


・・・・・・・・・。


「いや、ちょっと待った。お前、またワイが凡人やからって言おう思てるやろ」


「・・・・・・・・。」


「分かったよ、はい分かりました。凡人でも凡ペンでも何んでもええさかい教えてくれまへんか!」


「よろしいですよ。現在の宇宙の状況からすると方向性に停滞、悪くすると負の方向に行きかねないようです。負の方向といっても直接に破滅につながるのではなく、進化の同じ繰り返し、停滞、無限のループ、そのようなイメージが入りました」


「なるほどなぁ、そうかぁ、と言うことはワイの作った理論は間違いやったと言うことやのうて、観測を装置化するところに間違えた理論があったって言えるな」


「物理学や電子工学のことは知りませんが、負と思えるような方向をエネルギーとして捉えてしまう観測装置であれば」


「なるほど、宇宙エネルギーは存在し続けていて、その方向が変わった時に観測する。いや、そうやのうて、ワイの理論は、ある一定のプラスの方向のみを捉えるようにしか考えてなかったから、違う方向のエネルギーをマイナスと捉える観測装置が出来上がった、言うことやな」


「そうかもしれません」


「うん、それは分かった。ただ一つ、また疑問ができてんけど、破壊とか破滅とか言うとったな? それってどう言うこと?」


「同一視していただいては困ります。破滅は現在の方向性の中の一つの現象でしかありません」


「じゃ、破壊は?」


「この方向性を変えるために、一度、全てのものを破壊しなければなりません。破壊の後に新しいものが生まれます。これは宇宙の星々が辿ってきた運命と同じことです」


「そうか、マイナスや思てたエネルギーは、実はプラスのエネルギーやったんか。でもや、やっぱり破壊ってやばくない?」


「何も生命体が無くなるとは言っておりません。そこには物質的変化も起こり得るでしょうが、大切なものは物質ではなく精神であり、その精神を投げ捨てなければ新しい世界に辿り着けない。と言うことです」


「それが今起こり始めてる破壊や言うことはやで・・・?。そうか、分かった! あいつ、そうや、確かにこのままやったら無限のループや、破滅やのうて破壊を選ばなあかんねんや! ぺペンギンだけに飛んだところで見つかった? いや、飛ばんわな・・・。 てかそんなんどうでもええねん! 全く別な問題の方向性を見つけさせてもろたわ。ありがとうな! マレーロ!」


「凡ペンにしては良く理会できました」


「やかましいわ! あ、いや、助かったわ」

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