第14話 宅配便到着



 翌朝、清田はいつもとは変わって元気に家を出て行った。そんな夫を見送りもせずに洗濯物を干しながら美咲は、どうしてかしら? と不審に思っていた。


 一方、マルセリーノは、

「あかんねん、あいつ。ワイが来たから元気になるって、全然独り立ちできてへんやん」


 マルセリーノは、清田の部屋で一人、空を見上げているだけの昼前に、

「さて、どこから手ぇ付けるかやな」

 などと1匹で考えている頃だった。


 玄関でチャイムが鳴った。どうも宅配の人のようだった。美咲が玄関に出て、

「お疲れ様です」

と言って缶コーヒを一本手渡す。

「いいんですか、どうもすみません、ありがとうございます」

宅配の方が来た時ように市木家では冷蔵庫に缶コーヒーが数本入っている。


 暫くすると、清田の部屋を開ける扉の音が大きく響いた。

「マルちゃん!」

 そう言った美咲の手には大きな目覚まし時計がしっかりと掴まれていた。

「居るんでしょ!」

「居てるよ、来たで、美咲ちゃん」

「マルちゃん」

 そう言うと美咲は、その場で泣き崩れた。


「安心し、あいつ、ちょっと疲れてるだけやねん。人生には、そう言う時期があるもんや」


 言いながらマルセリーノは美咲の横へ行き、正座して美咲が泣き終わるまでじっとしていた。

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