第11話 兎牧場



 ある朝、窓から兎牧場を見ながら、マルセリーノは嘴を泡だらけにしながら嘴ブラシで磨いていると、


「ムーやん」


 マルセリーノは急いでうがいをし、牧場へと黄色い短い足で、今度はゆっくりと、ムーの方へと歩いていった。


「やぁ、パドレ」

「帰って来てたん?」


 マルセリーノは出来るだけ何気なく言った。


「うん、帰って来てたよ」

「地球に行ってた、って聞いててんけど」

「うん、地球に行ってたよ」

「ふーん、何んかペットショップから買われて行った、って聞いててんけど」

「うん、飼われていたよ」

「あっそ。で、それからどうしてたん?」

「うん、飼われて死んだよ」

「え! 死んだって?」

「うん、それから土に埋められたよ」

「おい! それ、ほんまに死んでまうやん」

「死なないよ、土を掘って出てきたよ」


 兎は土を掘るものである。


「お前、一体何者なの? 一回死んで、生き埋めにされて、掘って出て来たって?」

「うん、そうだよ」


 その時、マルセリーノの家で送受信器のベルが鳴った。

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