第3話

「いや、今日変な夢を見てな…。」

「まさか、授業中に入眠していたんですか~?」

「いや、朝だよ朝!」

一瞬だけギクッとしたのは、ここだけの話だ。

「ほうほう、それはどんな夢で〜?」

清香は、興味深げに目を細める。

「女の子が何か言っていたんだ。でも、何を言っているのか聞き取れなかった。何だか、ガラス越しというか何かで隔てられている感じだった。」

清香は、物憂げに目を細める。

「っ…。それは…。」

「ん?何だ、何か知ってるのか?」

「ええとですね〜、…何も知りませんよ〜!」

絶対知ってるだろコイツ!

「もったいぶらないで教えてくれよ…!」

「え〜、あっ…!用事を思い出しました〜!では、さようなら~!」

清香は足早に去っていった。

「お、おい!待てって!」

そう声を発した時にはもう居なくなっていた。

「足速すぎだろアイツ…!」

 清香は足が速くない。むしろ、遅い方だったはずだ。毎年のマラソン大会で最下位をとるくらいには。それとも、か弱いふりをしていたのだろうか?否、清香はそんな性格ではない。彼女は異性からの評判など気にもとめていなかった。では何故?何のために?そんなことばかりを考えていたのが祟った。


「おい、校内ではスマホの使用は禁止のはずだ         が…?」

この声は…。

「ッ!」

間違いない。この清香とはまた違った恐ろしく威圧的な声の主は

「桐沼先生…!」

背後に立っているガタイの良い男性を見やる。

「お前何度目だ!?何度言ったら分かるんだ!?」

ヤダ!怒らないで!ボクそんなに強くないの!泣いチャウから!

「すみません…。」

その後、俺は、一時間ほど生徒指導室にてお言葉を聞かされたのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る