かみをきりたい俺とかみをきりたくない私

るり

第1話

チリリン…!チリリリン…!

「はあ…。」

憂鬱な朝。目覚ましの音で目を覚ます。

いつもと何ら変わりない生活。悪く言えば、刺激のない生活。

いつも通り、制服を着て、朝食を食べ、顔を洗い、歯磨きをし、鞄を持って、学校に行く。そして、遅刻して怒られ、学友と駄弁り、授業中入眠して呆れられ―そんな、平和な生活がずっと続くものだと思っていたのだ。



一瞬にして、奪われた。目を、耳を、心を。目線の先に居るのは、銀髪隻眼の少女である。不吉なほどに端正な顔立ちをしていた。少女の、桜色の唇がゆっくりと開く。

『………く………す…。』

聞き取れなかった。それほどまでに、彼女の声は、か細く、儚げだった。庇護欲を駆られる少女である。

「君は…?」



チリリン…!チリリリン…!

「はあ…。」

いつも通り、制服を着て、朝食を食べ、顔を洗い、歯磨きをし、鞄を持って、学校に行く。

背後から声をかけられた。

「おはよ…って、どうしたの?」

友人の裕二だった。彼は小中高と、俺とずっと同じ学校に通っている。親友と呼んでも差し支えない間柄だ。

「あー、なんかおかしな夢を見てな…。」

そう。今日、夢を見たのだ。俺は夢を滅多に見ないのだが…。

な夢!?」

裕二の目はキラキラ輝いている。いつもはハイライトが入っていないというのに。

ふと、注がれる視線に気づく。可愛い女子高生(複数人)が、顔を赤らめながらこっちを見ている。その視線の先にいるのが俺であるはずもなく…。案の定、俺の隣りにいる友人だった。

女子高生1「あの、メアド交換しませんか…?」

裕二「いいよ〜。」

こいつのイケメンスマイルは目に毒だ。

女子高生2「あっ、私もお願いします…。」

女子高生3「私も…。」

女子高生4「私も…。」

女子高生5「私も…。」

もう、友達やめようかな…。

メアド交換した女子高生は帰っていった。

ああっ…!こいつ、既読スルー、未読スルー常習犯だからな!俺ならしないけども!

「それで、どんなお菓子が出たの!?」

「お菓子じゃないぞ!だからな!変な、って意味だ!」

「なーんだ。お菓子じゃないのか…。」

目に見えてテンション下がってやがる。

「ああ、変な夢を見たんだよ!」

「……。」

あっ、待って!ハイライト!ハイライトが!!目が、目があ!!

「帰りに買ってやるから、な?」

「ホント!?」

ハイライト戻ってきた。

「反応早くないか!?」

こんなふうに他愛のない話をしながら登校する。

やっぱ、いつもどおりだ。

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