アウラ

@pokarikorude-

第1話 始まりと終わりはふもとの丘で

「つまらん」

自然と心の中で呟いた。今学期の終わりを告げるチャイムが鳴り終わった校舎には、先ほどまでの静寂をかき消す程の生徒の声量で活気を取り戻していた。

 周りを確認してみるとある者は友と長期休暇の話を、ある者は部活へと、ある者はこの夏で回りと差をつけるために図書館に向かうなど、ここにいるもの達はこの夏それぞれに目的もしくはやることがあることが分かる。ただ私はここにいる人たちとは違いやることがない。つまり暇人なのだ。

 そんな暇人はここに残る意味はないと言うことに気付いた俺は、ゼンマイがまかれた人形のように素早く帰り支度を始める。ここに来る予定も今のところないので教科書などは全て黒い少し大きめのリュックサックへと押し込む。計画的に持ち帰らなかった俺のカバンは以前とは違い、一回りも二回りも体を横へと広げていった。その見た目に反して質量が重いリュックサックを背負い周りの目的を持ち青春を生きている生徒たちの群衆へと紛れて校門へと向かう。

 外に出で見るといきなり目の前が薄暗く感じた。ふと空を見上げると外は夏だというのに暗く曇天模様が空一面に出来上がっていた。朝から蒸し暑かった気温は変わらず、更に蒸し暑さとジメジメ度が上がったのではないかと錯覚さるような熱風が半袖により露呈した肌を伝う。

「今夜は暑くなるな」

そう呟き青緑色のまだ熟れていない並木の道路を歩き始める。けやきの群衆は乾いた風に命を吹き込まれたようにゆらゆらと揺れている、彼らのような植物にもこの夏の目的ややることがあると考えると何だか自分だけがこの世界から取り残された気分になった。そんな生きているものの影の上を通りながら空を見上げていると、俺はふとある場所へ行きたいという衝動にかられた。全くもって気まぐれな思いつきであったが、その場所は俺にとって大切であり最近は行ってなかった馴染みのある大事な場所だ。

「ひさびさに行ってみるか。」

肩にかけていたリュックを背負い直し、とある場所へと向かう。


山のふもとにある両親の墓へと

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