亡国の姫君の媚びない強さがイイ!

 プロポーズをされて、飲みかけのワインを吹き出しそうになったという冒頭の描写で、ヒロインのマーレがただの亡国の姫君ではないと気づきました。

 滅亡したと言われるナタリア王国の姫君だったらしいマーレは、まだ幼い時に従者のラディーレに連れられ国を逃げ出し、イージェス王国に密入国して身分がバレないように暮らしていました。そこに騎士団を率いて現れたのがアルベルトという公爵家の当主。マーレを手がかりにナタリア王国の秘密を探るため、彼女に結婚を申し込みます。

 驚いてワインを吹き出しそうになったところに、どん底の暮らしから救い出してくれると大喜びするのではなく、過去はどうあれ今は身分が違いすぎると自分を卑下して逃げだそうとするのでもないマーレという女性の、自分をしっかり持って状況に流されずに生きている強さが見えました。

 立場は違いすぎるのに、憐憫ではなくギブ・アンド・テイクな関係で信頼感を育み、親愛へと発展させていくマーレとアルベルトの関係がとても気持ちいいのです。そんな二人がクライマックスの大冒険をワクワクしながら楽しんで、どんな結末を迎えるかを確かめてみてください。


(「運命を自ら最高にする結婚小説」4選/文=タニグチリウイチ)

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