『完結』冒険者パーティーを追放~「戻って来いと言っても知らないからな」と言ってパーティーを抜けた俺は、魔眼の力を使い最強冒険者を目指します~

夢見叶

第一章 追放と出会い

一、追放

 俺、マイル=マイヤーは冒険者をやっている。


 同じ村出身の幼馴染達と組んでいる冒険者パーティー「赤い流星」は、たった三年でAランクパーティーへと上り詰めた。


 目立って強いスキルを持つ者はいないけど、パーティーでの連携や下準備をしっかりとしてきたことで、初依頼から今日まで依頼を失敗することなくやってこれた。


 そのおかげか、街ではかなり有名になっていた。


 今日も、朝から冒険者ギルドで依頼を受けて帰ってきたところだ。


 結果は言うまでもなく成功。


 モンスター討伐の依頼だったが、難なく討伐。


 今は、リーダーであるケイル=グレードが、依頼の報告から帰ってくるのをギルドの中にある酒場で待っている。


 その間、周りにいる他の冒険者達が、俺達を見て何かをコソコソ話している。


 これはいつもの事で、俺達は何も気にしていない。


 そして、


「これが今日の報酬だ!」


 ケイルが戻って来て、今回の報酬を皆に配り始める。


 だがここでいつもと違うことが起きた。


 俺の分の報酬が配られなかったのだ。


「皆に少し聞きたいことがある。俺達も、もうすぐSランクへと上がれると先ほど受付で言われた」


「本当にケイル!」


「ああ」


「凄いじゃん! 三年でここまで来れるなんて嘘みたい!」


 ケイルの報告を聞いて喜んでいるのは、キリエ=ミリクサー、パーティーメンバーの一人だ。長く伸びた長い髪が特徴的な少女だ。火と風、水それに結界魔法を得意としている。


「だが、そうなるとだ、このパーティーには邪魔者がいると思わないか?」


「邪魔者? 彼の事?」


 ケイルの問いかけに答えたのは、キリエとは正反対で物静かな少女、ライラ=レート。弓術と回復魔法を得意としていて、短い青い髪が特徴的な少女である。


「そうね。確かに邪魔者ね」


 俺は仲間達の言葉を聞いて、誰の事を言っているのか理解で来た。


「なあマイル、お前もそう思わないか?」


「まさか、皆からそんな風に思われているなんて思わなかったよ。昔から仲が良くて、村でもいつも一緒に遊んでいたのに」


 俺達は、村にいた頃は毎日のように一緒に遊んでいた親友だと思っていた。


「ああ、俺達が冒険者になった時、都合のいい荷物持ちとしてこき使うためにな」


 その言葉に俺の頭は追い付かなかった。


 一体何を言われているのかと、


「そうね。そうでなければ誰がこんな無能と仲良くなんてするものですか!」


「本当に、スキルを持たない出来損ない」


 二人の言っていること自体は間違っていない。


 俺は、この世界で誰もが普通に持っているはずのスキルを持っていない。


 それが故に村ではいつも虐められていた。


 ただそんな俺にも唯一出来る事がある。


 スキルではないが、生まれつき持っている物がある。


 対象を鑑定することの出来る鑑定の魔眼。


 この力を使って、ケイル達のスキルの成長を毎日見てあげたり、依頼に何が必要かを調べたりしていた。


 この世界に存在するスキルには、一部例外を除いて熟練度が存在している。


 俺の鑑定の魔眼は、その熟練度を確認することが出来る。


「だが、俺には鑑定の魔眼がある。いつも依頼に行く前に、何が必要かとか調べて、本当に必要な物だけ依頼に持っていけるようにしていたじゃないか! そのおかげで荷物も軽くなり、より依頼をスムーズに達成できるようにとしてきた」


「別に必要ないんだよ。俺達がお前の持ってきている道具を使ったことがあるか? 無いよな。そらそうだ。俺達がモンスターの攻撃を受ける事なんてないんだからな。それに受けた所でダメージなんてほとんどない。そんな俺達にお前の準備など必要ないんだよ」


「うん。私達最強」


「無駄な準備なんてしても意味ないよね」


「何を言っているんだ! 依頼に行くのに、準備が必要ないなんてことないだろう」


「そうだな。確かに多少はいるかもしれないが、お前がするような準備は必要ないんだよ」


 何を言おうと無駄だと思った。


 だが、


「俺がいなくなっても同じことが言えるのか!? 荷物を持つ者がいなくなるぞ。それに俺のサポートもなくなる」


「お前のサポート? 何寝ぼけたことを言っているんだよ! お前はただいつも金魚のフン見たく俺達にただついてきているだけ。正直そんな奴に依頼の報酬を渡したくないんだよ。無駄金をな」


 そうか、確かに俺も、もう一つの秘密は話していなかった。


 話していたところでどうにかなったとは思わないが、それでも、もう少し皆からの信頼を得られている物かと思っていた。


 でも、信頼どころかただの荷物持ち、いやそれ以下だと思われていたようだ。


「後悔するぞ。俺を追い出したことを」


「そうだな。便利でなんでも言うことを聞く荷物持ちがいなくなると少し困るかもな」


 ケイルにキリエ、ライラが俺を見て笑っている。


「だが、それ以上に価値のある新たな仲間を招けるんだから問題ないよ。お前がいる方が俺達にとってはマイナスでしかないんだからな」


「そうか、分かったよ。俺はこのパーティーを出て行く。もうお前らと関わることはないよ」


「ああ、そうしてくれ。それと、今いる宿だが、俺が借りている宿なんだからな」


「分かっているさ。荷物を片付けて出て行くよ」


 俺はケイル達と別れて、今泊まっている宿へと荷物の片付けに戻る。


 外は既に夜。


 街の中は外套の光があるだけで少し薄暗い。


 そんな薄暗い道を歩きながら、


「来ちゃったか。この時が」


 空に浮かぶ星を見ながら独り言をつぶやく。


 周りには殆ど人がいないため、人目を気にする必要もない。


「正直心のどこかでこうなると思っていたんだよな。スキルを持って無くて出来ることは鑑定のみ、それだけしか伝えていなかったもんな」


 俺はそんなことを呟きながら、昔の事を思い出していた。

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