毒親からの脱出!! 私、奴隷卒業します。

美杉。節約令嬢、書籍化進行中

第1話  脱出は青い鳥と共に

 スマホの青い鳥からさえずりが聞こえる。終わりと始まりを告げる合図だ。私はもう一度スマホを強く持ち、深呼吸をするそして最後の挨拶を言うために、玄関前で一度だけ振り返った。


「さよなら、母さん。私はもう、あなたの奴隷でいるコトを辞めることにしたの」


 小さくまとめた荷物だけを手に持った。数日分の服、充電器。仲間がいれば、あとは何を捨てても、もう後悔はしないと決めたから。重い過去はみんな、ココに捨てていく。そうこの人……母も一緒に。


「奴隷だなんて馬鹿じゃないの? だいたいあんたが一人でなんて、今更生きていけるわけないでしょ。親を捨てる子の方が、よほど悪魔だわ」

「そうね。そう思いたいなら、それでいいから。何を言われても、もう私はあなたと関わらない。それに今は、私一人じゃないの」


 私はスマホを振って、母に見せた。


「あんたそれ……。それのせいだよ! そんなSNSなんておかしなものを始めたから、頭までおかしくなったんだ。本当にいい子だったのに」

「あのね……、私はあなたにとっていい子になるように、ずっとずっと頑張って来たからよ? そういう風に育てられてきたから」

「だったらなんで」

「なんで? そうだよね……。分かるはずないよね……。何度も言うよ? 私はあなたの奴隷じゃない。そう気づかせてもらったからよ」


 激高した母が、言葉とも言えない大きな声を上げた。そして台所にあったモノたちを床にたたきつける音が、部屋の中に響き渡る。


 いつもならこんなに母が暴れる前に、私が折れて謝っていただろう。しかし今はもう振り向かない。そういう約束だ。ココから、この地獄から抜け出すためには、迷ってはいけないから。


「さよなら、母さん。もう二度と会うことも、連絡もしないから」


 走馬灯のように流れる今までの記憶を思い出しながら、私はあの人へと繋がる扉を開けた。

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