第29話 異端者認定

地下牢に入れられて、数時間。

冷たい石の床に座り、待つ。

すると、1匹の鼠が俺の牢に入ってきた。


『ザクルード様ですね?』


鼠が喋った!?

異世界の鼠は話すのか?


『私はサルヴァ様の部下の者です。私の異能で鼠を媒介にしております。伝言をお伝えします』


なるほど、こんな異能もあるのか…


『今回、伯爵の次男が主導しているのは間違いありませんが、裏で聖神教が動いているようです』

「教会が?理由は?」

『理由まではまだ不明です。こちらも裏から手を回し情報を集めるので暫く待つように。との事です』

「…わかった」


(教会が何故俺を…? 接点は異能の祝福を受けに行ったくらいでしかないのに、どういった理由だ…?)


考えても仕方ない。

待っていれば何らかのアクションがあるだろうしな。



---


次の日。


(くそ…飯も出ないとはな。腹が減ったな)


すると、牢に近付く気配。

体格は普通。騎士の格好ではない、ローブに身を包み顔の見えない人間。


「出ろ」


端的に言うと、牢から出るように促される。


(雰囲気的には暗殺者のようだな…強者の匂いがする、何者だ?)


牢から出る前に、金属で出来た手枷を嵌められ上の階へ移動する。


「なぁ、どこ行くんだ?」

「黙って付いて来い」

「兵士じゃないな?アンタ何者?」

「……」


ダンマリかよ。


階段を上がっていき、辿り着いたのは高そうな調度品が多くある豪華な部屋。

そこに居たのはこれまた豪華そうな煌びやかな服を着た、いかにも貴族というような男。顔はニヤニヤとイヤらしく俺を見ている。


「貴様がザクルードと言う奴だな?」

「で、アンタは?」

「口の聞き方に気を付けろ、平民が。俺様は次期伯爵のゴカミス様だぞ」

「あそ。それでそのゴミカス様が何の用です」

「ゴカミスだ!! ふん、貴様平民にしては強いらしいな。俺様の家来にしてやろうと思ってな」

「断ったら?」

「断れると思っているのか?俺様はこの街を治める次期伯爵だぞ。お前のような平民冒険者など、どうにでもしてくれる」



聞いたまんまのどうしようもないカスだな。

さて、こんな奴に仕えるという選択肢は無い、かと言ってタダで帰して貰えそうにも無いな。

どうしたもんか?出来るだけ丁寧に断ってみるか。


「俺なんぞその辺にいる子供の冒険者ですよ?わざわざ次期伯爵様の家来には相応しくないので辞退させて頂きます」

「ふん、先日12柱との闘技で貴様は勝ったらしいじゃないか、俺様の家来になる分には及第点だ」


ちっ…知ってるか。まぁ当然か。


「それに貴様、異端者として認定されたようでは無いか。なに、俺様に任せれば教会の犬どもなど幾らでも誤魔化せるぞ?」

「異端者?何ですそれ?」

「知らんのか? 特別に教えてやろう。まぁ俺様も詳しくは知らんがな。何でも教会は貴様を教義から外れた悪として処罰したいようだな」


何だそりゃ、一体誰がそんな事決めたんだ?

接点はワグナスって爺さんだが、あの時はそんな素振り無かったが…。

もう少しこのゴミカスから情報引き出すか。


「それは、この街の教会で一番偉いワグナスって爺さんが決めたんです?」

「クハハ、何も知らんのか?ワグナスは背信者として処分され、この街には既に居らんわ。そもそも、もっと上の聖神教の本部の-「ゴカミス様」っとそうだったな」


ゴカミスが何か言おうとした時、ローブの人間が止めに入る。止めた時から察するに、こいつ教会の人間か。

しかし、何だ?ワグナスは居ない?本部?一体何が起こっている。


「まぁ、その辺はどうでも良い。で、どうだザクルードとやら」

「……」

「考える時間はあまり時間は無いぞ?」

「…どういう事です?」


ゴカミスは時間が無いと言うが、何の事かわからない。

情報が多すぎて整理しきれていない。一体どうなっている、サルヴァからの伝言も昨日から無い。

くそ!なんなんだ一体!


次にゴカミスの言った言葉は、色々な情報が錯綜して混乱している俺に更に追い討ちをかけるものだった。






「貴様の育った村だがな、異端者の村として滅ぼした。貴様は使える駒だから、まだ処分されて居らんのだ俺様の計らいでな。早く決めんと貴様も処理されてしまうぞ」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る