第4話 今はどのくらい出来るの?

この世界は小さい頃にやったゲームの世界に酷似している。

モンスターも入れば、それを狩る冒険者もいる。魔王や勇者なんてものがいるかはわからないが、少しずつ前世の記憶と今世の記憶が融合し混乱も収まってきた。

ただ、前世で自分が何と言う名前で、どんな人生を送っていたか詳細は思い出せない。

色々な武術、格闘技をやっていた事は何となく覚えており、【強くなりたい】という想いだけは心にしっかりと刻まれている。


(完全に前世の記憶が戻るってわけじゃないのか…それとも今後もキッカケがあれば完全になるのか?)


「--君! ねぇザク君ってば」


おっと、思考に没頭してしまった。まぁ、その辺はなるようになるだろ。


「なんだよ、カイル」

「聞いてた? ほら、ガーマンのお兄ちゃんの話。謝りに行こうって」

「いや、いいよ。先に手を出したのは向こうだしこっちは悪くない」

「でも…」

「ま、大丈夫大丈夫。なんとかなるって」


全く、心配性だなカイルは。

仕返しに来るのはたかだか9歳の子供だろうに。そりゃ、国の騎士とかがくるってんなら慌てるが。


「何にせよ、カイルには火の粉が飛ばないようにするよ」

「そういう問題じゃ無いんだけど…」


未だにアワアワしてるカイルは放っておいて、自宅に戻る事にするか。

今何が出来て、何が出来ないのか確認しないとな。





---


「母さん、ただいま」

「おかえり、ザク。あら? 鼻が赤いわね。また喧嘩でもしたの?」


あー、そういや怪我して帰ってくるときは喧嘩したって言い訳してたんだっけ。今までは一方的にやられてただけだったんだが、心配かけたくなかったから喧嘩って言ってたな。まぁ喧嘩でも心配かけることには変わりないんだけど。


「いや、喧嘩っていうかちょっとしたアレだよ。気にしないで」

「アレって何よ…男の子だから喧嘩もするでしょうけど大怪我したりさせたりしないようにね」

「わかってるよ」


俺の家には今は母と俺の2人が住んでいる。父親は俺が物心着く前に魔獣狩で死んでしまったようだ。

ずっと母と2人暮らしではあるが、特に寂しいとは思った事はない。それにこれから忙しくなりそうだしな、


「また、ちょっと出てくるよ。夕飯くらいには戻る」

「わかったわ、気を付けて行ってらっしゃい。村の外出るのはダメよ?」


家を出て、人通りの少ない場所を探してウロウロしているとおあつらえ向きな場所発見!

広場からも離れてるし、周りに店も無く、倉庫の影になっている少しひらけた場所があった。


「とりあえずはココで試すか」


まずは、内功を練る。呼吸を整え、丹田を中心に体内の気を巡らせる。

が、思ったように練れない。


「こりゃ、修行不足待った無しだな」


その後、シャドーを行うもキレが無く、そもそも思ったように動けない。息もすぐにあがる。


「次は…業を試すか」


その辺に落ちてた木の板を倉庫の壁に立てかけ、掌を当て気合いを込める。


「哈!」


発勁は結構得意だったんだけどな、真っ二つとはいかず、ヒビが入るだけとは…酷いな。

次は、裏当てを試すか。


そこらに落ちている大きめの石を2つ並べて、右拳を腰に構えて…打ち込んでから、素早く引く!

すると後ろの石だけに衝撃が伝わり…


「本当は割れる位はいきたかったんだけどな…」


実際には3mほど飛んだだけ。

出来てはいる。いるんだけど、あまりにも酷い結果だ。


「合気も試してみたいが、1人じゃ出来ないしなぁ…」


おそらく他の業も軒並み低いレベルになってるだろうな。小一時間程度の運動だったが、わかった事は1つ。





「鍛錬が足りない」


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