第2想定 第2話

「!」

 割れるような拍手にビクンと跳ねて周囲を見回す。

 いかん。居眠りをしていた。

「高鍋南高等学校の演奏でした」

 七月の終わり。

 基地で待機の日だったが姪乃浜に特別に休みをもらっていた。

 宮崎市民文化ホール。二段階構成の豪華な大ホール客席。俺はその二階席でお目当ての楽団の出番を待っていた。

今日は宮崎県吹奏楽コンクール高校部門の日。

 俺が通っている宮崎県立家鴨ヶ丘高等学校。ここの吹奏楽部は宮崎県屈指の強豪なのだ。レギュラー落ちが発生するほどに大所帯の吹奏楽部でなんと舞香はレギュラーになっている。つまり今日は彼女である舞香の晴れ舞台を観に来たのだ。ちょっと話は逸れるが彼女は一年生だった去年も先輩たちを抑えてレギュラーに選抜され、しかもそのまま全日本吹奏楽コンクールにも出場してしまった。先月ひとつ後輩のひなたから教えられた事なんだけど舞香は中二からフルートを始めたらしい。吹奏楽部の多くは中学一年生から吹奏楽を始めている。中には小学生から続けているというベテランもな。一年遅れてフルートを始めた舞香はそんな先輩たちを抑えてレギュラーに選抜されたのだ。まったく誇らしい話だぜ。

 俺も吹奏楽経験者なんだけど全日本吹奏楽コンクールなんて夢のような話だった。俺がいた吹奏楽部――日向市立赤岩中学校吹奏楽部は県北で最も有名な弱小校だった。いや、少しはマシになったが今でも弱小だ。過去には『宮崎県吹奏楽界の巨匠』と呼ばれていた超有名な顧問が指揮棒を振っていたこともあり九州大会の常連だった。最盛期には四十六回と四十七回……だったかな? 今は解体されてしまったが、吹奏楽の聖地と呼ばれていた普門館で演奏した実績もある。つまり全国大会に出場した実績もある学校だった。

今となってはその栄光は『黄金世代』と呼ばれているが、俺がいたときの赤岩中吹奏楽部はその真逆で『暗黒世代』と呼ばれている。

 コンクール直前の講習会なんて最悪なんてものではなかった。県北のほうはどうだか知らないが、県北では日向市、延岡市、門川町の吹奏楽部を集めて『課題曲クリニック』という講習会を行っている。イベントに各年三、四校ほどが持ち回りで実際に演奏を行い専門家からの指導を受ける。それを他の学校が見学するという内容だ。

模範演奏を行う吹奏楽部はコンクール直前ということもあってどこの学校も演奏が仕上がっていた。そんななか暗黒時代真っただ中の俺たちも代表で演奏を行った。

 ステージにいても分かった。なんてひどい演奏だ。これまでの部活時間で遊んでいたのか。そんな侮蔑の視線を肌で感じていた。

 そして指導を行う専門家が客席からステージに上ってくる。それは創部されたばかりの赤岩中吹奏楽部を一瞬にして九州大会常連校に育て上げ、数年後には全国大会へと連れて行った当時の顧問。あの『宮崎県吹奏楽界の巨匠』だった。

 その巨匠はステージに上がるなりチューバを吹いていた俺に聞いた。

「お前本当に三年生なの? 一年生じゃなくて?」

 それほどに俺の演奏技術はひどいものだった。当時はそのフレーズが県北の吹奏楽界で大流行するほどにな。もしもどこかでそのフレーズを聞いたら俺を思い出してくれ。

 そして楽団の合奏レベルもひどいものだった。

 他の学校は課題曲についての細かい高度な指導が行われるなか、赤岩中吹奏楽部は指揮棒に合わせて音を出す練習、周りとのピッチを合わせる練習……そんな基礎的な指導ばかりだった。

 数週間後に迎えた宮崎県吹奏楽コンクールは誰もが予想していた通りの銅賞。言っておくが吹奏楽コンクールの銅賞とは第三位というわけではないからな? 審査は数名の音楽家によって行われそれぞれA、B、Cの三段階で評価される。A評価が過半数なら金賞、C評価が過半数ならば銅賞、それ以外が銀賞という結果になるわけだ。

 ともかく俺がいた吹奏楽部はとてつもない弱小校だった。全日本吹奏楽コンクールという単語を口に出すこともおこがましいほどに。世間の小説やアニメでは弱小吹奏楽部が強くなっていくという物語があふれているがそれはフィクションの中だけ。現実は九州大会どころか県大会でダメ金を取るのも難しい話だった。

 全国大会のステージに立った去年の舞香はいったいどんな世界を見たのだろう。その景色を俺は見ることはできない。いや、見ることはない。俺は吹奏楽を中学でやめたんだ。定期演奏会が最後のステージだった。ほかの同級生たちはその後も部活に遊びに行って中には去年の定期演奏会にゲスト出演もしている。しかし俺は引退してから一度も顔を出していない。もう演奏者として吹奏楽に関わることはないのだ。

 昔のことを長々と思い出すのはここが懐かしい場所だからだろうか。中学時代の放課後や土日休日をここでの十二分間の一瞬に捧げたことがあるからだろうか。確かに弱小校だったが、それでもあの時代はそれなりに楽しかった。

 ……いや、それだとしてももう楽器を持つことはない。俺がそう決めたんだ。

盛大な拍手に包まれるホールの中、眠気を振り払うため他の観客の邪魔にならないように小さく縮こまるように体を伸ばした。

 寝過ごしていないよな?

 しわが寄った手元のパンフレットを広げてついさっき演奏が終わった学校を探し出す。舞香のコンクールを観に来たというのに居眠りしていました、だなんて言おうものなら彼女にどんなお仕置きをされることだろう。それはそれで楽しみでもあるけどな。

 さてと。さっきのは高鍋南だったな。

 高鍋南、高鍋南っと……。

 危ねぇ。お目当てのプログラムの一つ手前だった。

 照明が落とされた舞台上では本番を終えた学生たちが撤収し、それが終わると次の学校の吹奏楽部が入場してきた。暗くなったステージ上で人影が動いているのが確認できる。その動きはやがて静まり、中央に立っている人物が舞台袖に向かって合図を送った。

 ステージに明かりが灯され、アナウンスが入る。

「プログラム十八番、家鴨ヶ丘高等学校。課題曲、Ⅳ。自由曲、バッハ作曲、パッサカリアとフーガ。指揮、柘植つげおさむ

 指揮者を務める吹奏楽部顧問が客席に向かって一礼。そして指揮者台へと上り、部員たちに向かって指揮棒を掲げた。

 彼の体が揺れる。

 パーン、パパパーン、パパパン。

 トランペットのファンファーレと共に、舞香たちの夏の十二分間が始まった。


 クラリネットの旋律。

 チューバの軽やかな伴奏。

 一瞬の盛り上がりを見せて再び主題が奏でられる。

 そしてマーチの定番。中低音域の見せ場がやってきた。チューバを経験しているからだろうか。ぶるぶると身震いをして全身に鳥肌が立った。昔の感覚が蘇る。

 重低音の熱を仄かに残したまま三度目の主題。

 そして演奏は中間部に差し掛かる。

 サクソフォンの子守歌。

 赤ちゃんをポンポンと寝かしつけるようにトライアングルが優しく響く。

 グロッケンシュピールのオルゴール。

 ミュートを付けたトランペット。

 さっきまで腕の中ですやすやと眠っていた赤ちゃんは大きくなり、いつの間にか親の手がかからなくなっていく。

 我が子が成長していく喜び。

 親元を離れていく寂しさ。

 それでも演奏は終わりへと向かって歩んでいく。最後のマーチに入った。未来への希望と切なさを抱いて。

 課題曲がもうすぐ終わる。

 俺は昔の感覚を思い出していた。

 先輩と共に出場した初めてのコンクール。

 先輩が卒業してチューバは俺一人となった二年のコンクール。

 そして初めての後輩と共に臨んだ最後の大会。

 数年前の出来事がつい数日前のことのように感じる。

 暗いステージに入場するときの不安。

 照明が灯され学校名のアナウンスが流れるとともに絶頂する緊張感。

 指揮棒が振り下ろされる瞬間の恐怖。

 演奏が進むにつれて膨らんでいく幸福感に、すべての演奏が終わった時の安心感。

 あの時感じたあらゆる感情が記憶の奥底から這い上がってくる。

 稲葉先輩。

 高砂さん。

 彼女たちはどうしているんだろう。

 心の奥底から涙が込み上げてくる。それを溢すまいと俺は目元に力を入れる。とてつもなく深い皺が眉間に寄っていただろう。

 センチメンタルな俺をよそに、演奏はただひたすら終わりへと前進していく。

 もう過去へと戻ることはできない。

 これまで多くの人に出会い、そして別れを告げてきた。さまざまな世界を経験し、その世界を後にした。人間は臆病な生き物だ。昔を思い返すことはできても、その時代に再び戻ることはできない。一度は捨てた故郷に帰る勇気がないのだ。

 込み上げてくる涙を抑えることはできない。目元が熱くなる。

 俺は男だ。

 高校生だ。

 泣いて堪るものか。

 クラッシュシンバルが激しく打ち鳴らされ、中低音楽器が細かく機動する。

 ぎゅっと目を瞑り、ただじっと舞香たちの音楽に耳を傾ける。

 クラリネット、フルート、ピッコロが音階を素早く駆け上がり、ステージ全員のテュッティでバババン、と課題曲が終わった。

 残響がやむ。

 指揮者は指揮棒を下ろし、演奏者は楽譜をめくる。

 課題曲から自由曲に移る数秒間。張り詰めた空気が一瞬だけ弛緩する。課題曲の演奏が問題なく終了した自身や安心感。そしてすぐに襲ってくる自由曲の恐怖や緊張感。張り詰めているが緩んでいる、しかし緩んではいるが張り詰めているこの独特な空気はコンクールに出場した人間しか感じることができない感覚だろう。

指揮者が部員たちに目配せをして、すっと指揮棒を掲げた。それが振り下ろされるとともに重厚で厳格な重低音が響き渡る。

 バッハ作曲、『パッサカリアとフーガ』。

 俺が最後のコンクールで演奏した自由曲、バーンズ作曲の『アパラチアン序曲』とは曲想も雰囲気も何もかもが違う。楽譜を見なくても聞いただけで難易度が比べ物にならないことが分かってしまうような難解な楽曲だ。

 舞香と一緒に過ごした昼休み。彼女がたまに鼻歌で奏でているのを聴いていた。そして彼女に教えてもらった。この『パッサカリアとフーガ』とは音楽室に肖像画が飾られているあのバッハ。バロック音楽の最重要人物であり『音楽の父』との称号を持つヨハン・セバスティアン・バッハがオルガンのために作曲した作品だ。舞香たちが今演奏しているのはオルガン曲を吹奏楽用に編曲したもの。

 この楽曲はその名の通り『パッサカリア』と『フーガ』という二つの音楽形式から構成されている。まず前半の『パッサカリア』。これはスペインの舞曲が起源となっている。オスティナート・バスという低音主題が少しずつ変形しながら何度も演奏されていく荘厳な三拍子の音楽形式だ。そして後半の『フーガ』。こちらは主題を複数の楽器や音程で繰り返し演奏していく音楽形式で、いわゆる対位法という作曲技法をふんだんに使用されている。

 バッハのオルガン曲のなかでも最高傑作と呼ばれているこの『パッサカリアとフーガ』。それは吹奏楽用に編曲されたものでも壮大なスケールの大作だった。

 俺は音楽の知識がなければセンスなんてものも持ち合わせてはいない。舞香たちが演奏しているこの自由曲をどのように解釈すればいいかなんて見当もつかない。ただ難しそう、ただそれが俺の解釈だった。

 歓喜や悲壮といった感情を音楽で表現することが確立されたバロック音楽。「歌うよりも語る音楽」と言われている時代であり、短いフレーズに抑揚をつけ、一つの音の感情を微妙に変化させながら聴衆に語り掛けるように演奏するのが理想とされていた。超ド派手な現代音楽に親しんでいる今の若者には物足りないかもしれないが当時はとても画期的で斬新なジャンルだった。通奏低音が確立され長調アイオニアン短調エオリアンの明確化。和声法や対位法が進化したのもこの時代。話は逸れるが同時代のイタリアではヴァイオリンの製作が活発化していた。現在では数億円で取引されているストラディバリウスやグァルネリウスが作られたのもこの時代だ。ここ、テストに出るからな?

 この『パッサカリアとフーガ』は難易度の高い曲であるが、楽譜で見るとそこまで難しくはないだろう。俺はこの楽譜を実際に見たわけではないが、聴くかぎり全体的に音価が長い。音価というのは音をどこまで伸ばすか、という意味だ。よく言えば素朴、悪く言えば単調なメロディがどこまでも続いていく。チューバパートを取り上げてみても難しいことはやっていない。確かにクラリネットの跳躍進行などもあるが、近代の序曲のような早いものではない。

 吹いてみろと俺に楽譜を渡されても、ある程度の時間を練習すればそれなりに吹けるだろう。中学の吹奏楽部で経験した序曲系の自由曲はどれもテンポが速かったからな。

 しかし楽譜通りに演奏することと音楽を演奏することは全然違う。

 もし仮に俺が吹奏楽部の連中に混ざって演奏することになっても、俺は銅賞の演奏しかできないはずだ。

 バッハは言った。

「私は書かれた通り楽譜を演奏するが、神こそがそれを音楽にするのだ」と。

 楽譜通りに演奏してもそれは楽譜をなぞっただけに過ぎない。それに意味を見出して音楽へと昇華させる。それができるかどうかどうかが凡人と神の分かれ道だ。その違いは銅賞と金賞の違いとなって結果に表れると言っても過言ではない。

 一人の指揮者と五十五人の神たちは三百年前の音楽を現代へと蘇らせる。神聖ローマ帝国の音楽を現代日本に再現している。

 ただ古臭いだけではない。

 偉大なるバッハの再来だ。

 宮崎県の吹奏楽関係者で宮崎県立家鴨ヶ丘高等学校吹奏楽部の名前を知らない者はいない。会場の誰もが一人の指揮者に導かれた神々の芸術に恐れおののいていた。その神々しさは他の追随を許さない。彼女たちを前にして居眠りなんてできる者はいないだろう。

 厳格な重低音で始まった自由曲の『パッサカリアとフーガ』。その演奏は細部もゆるがせないままに終わりを迎えた。

 ホールに残響が残る。

それがやむと指揮者が指揮棒を下ろし、部員たちを立たせて振り返った。

 客席から盛大な拍手が送られる。

「家鴨ヶ丘高等学校の演奏でした」

 終わりのアナウンスが流れ、舞台の照明が落とされる。

 これで舞香たちのステージが終わった。

 舞香たちの夏がこの十二分間で終わるか、再び十二分間の夏がやってくるか。

それは最後の結果発表で明らかになる。


 さて、そろそろ楽器の片付けが終わったか。

 きっと今頃はホールの入り口あたりでミーティングをしている頃だろうな。舞香たちの舞台が終わってそのあとに続く学校を二つほど鑑賞した俺は客席を抜けた。人込みをすり抜けながら舞香たちを探す。学校ごとに日程が分かれているとはいえ県内の吹奏楽関係者が集まるこの会場には独特の空気が流れている。中学校時代の部活を思い出す。

 目的の集団はすぐに見つかった。集会はやっていなかった。

「舞香」

「あ、宗太郎」

「ミーティング終わった?」

「うん、ちょうど今終わったところ」

「ナイスタイミングだ」

「これから他の学校の演奏を聴くんだけど、宗太郎も一緒に聴く?」

「おうもちろんだ」

 舞香の隣の席は貰ったぜ。

「おやおや、誰かと思ったら宗太郎君じゃないか」

 俺の存在に気づいたのは白髪まみれの五十代後半の男性。柘植理つげおさむ。俺の通う高校の音楽教師でもあり吹奏楽部の顧問。母性がにじみ出る楽曲解釈と指揮からこっちの教師は『宮崎県吹奏楽界の女神』の異名を持つ。

定年間際のジジイなのに。

「応援に来てくれたんだね」

「はい、予定もなかったので」

「ところで宿題はちゃんとやっているかい?」

「もちろんですよ」

 本当は訓練でそれどころじゃない。

 例えば自由研究。身近に手に入るもので爆発物を作る話だったら数分あれば書き上げられるんだけどな。ただそれをやったら再提出を食らうだろうし、それを俺に仕込んだ愛梨によって張り倒されるだろう。

「そういえば宗太郎君は中学でチューバを吹いていたんでしょう?」

「そうですよ」

「宗太郎君も吹奏楽に入ればいいのに」

「県大会で銅賞を取りたかったら俺に任せてください」

 俺は県北では有名なチューバ奏者だったからな。

 悪い意味で。

 偶然近くを通りかかった他校の女子生徒が吹き出していた。

「入ってから上手くなればいいじゃないか」

「悪いんですけど、俺はもうチューバは吹かないって決めているんです」

「……そうか、無理は言わないよ」

 そのやり取りを見ていた舞香が残念そうな顔をしていた。

 本当は俺と一緒に部活をしたかったのだろうか。

 悪いがその願いは叶えられない。他の部活に入っているからとかそういうちっぽけな理由じゃない。そもそも舞香のためならば部活なんて辞めてやる。

 別にチューバが嫌いとかいうわけじゃない。むしろ今でも好きだ。

 だけどもう二度と楽器はしないと誓っている。

 その場に微妙な空気が流れた。

「あ! 宗太郎さんだ!」

 俺の存在を認識して歓喜の声で沈んだ空気を打ち払ったのは一年生部員のひなただった。

「私の本番を見に来てくれたんですか!?」

「そうさ。ひなたとか舞香とかみんなの演奏を見にきたんだ」

 無難な回答を口にだした。

 ひなたが目的で来たと言えば舞香が機嫌を悪くするだろうし、舞香と答えればその逆だ。こんなに人が多いところで機嫌を損ねてヤンデレ化されたらたまったものではない。一人で鎮圧をしないといけないし野次馬の対応もしないといけない。民間人が混乱して二次災害も起こるだろう。

 本音を言えばせっかくの休日にまで仕事をしたくない。

 それでも舞香が嫉妬したのか、俺の腕をそっと掴んだ。

 それに対抗するかのようにもう片方の腕をひなたが掴む。

 いわゆる両手に華。

 年頃の男ならば誰もが夢に見る光景だろう。

 だけどこの状況下でヤンデレ化でもしたら大変。唯一の武器である両腕を封じられている。腕を封じられていて反撃できずに殺されるなんて二度とごめんだ。

 吹奏楽部顧問が孫を見るかのようにその光景を見ていた。

「宗太郎君はモテモテだねぇ」

「俺はいろんな人に好かれているので」

「刺されないように気を付けなよ」

 それは先月の始めに言って欲しかった。

 今となっては積極的に立ち向かう仕事をしているけど。

 そのやりとりを栗野が蔑む目で、彼女の相方でもある坂本が引いた目で見ていた。

 おいおい、栗野たちも嫉妬かよ。

「栗ちゃんもどうだ?」

「うっさい!」

 このツンデレさんめ。

 本当は俺に抱きつきたくてたまらないんだろ?

 それにしても「栗ちゃん」って呼びかた――

「いつもエロいね」

 きっと性欲があふれて仕方ない男子生徒あたりにつけられたのだろう。

 栗ちゃんは何かキーキー荒れ狂っているがこっちはこんなものでいいだろう。坂本のほうも相手をしなければな。

「坂本さんも俺にしがみついていいんだぞ?」

「いいです! いいです!」

 彼女は必死の形相で顔を横に振り回す。

「遠慮はしなくていいんだ」

「嫌です! 無理です!」

 その声は悲鳴に近かった。

 そんなに照れ隠ししなくてもいいのに。

「知っているぞ。本当は俺のことが好きなんだろ?」

 彼女が手で口を押えてえずいた。

 おいおい、ゲロ吐きそうなくらい俺のことが好きなのかよ。

「ね、宗太郎。早く客席に行こう。ひなたちゃんも一緒に」

「そうだな。じゃあ坂本さん、また後で」

 俺は坂本から引き離されるかのように、舞香に手を引かれていった。

 まったく舞香のやつ。

 そんなに俺が坂本と話すのが嫌だったんだな。

 明らかに嫉妬しちゃって。本当に可愛いやつだ。


 今年の宮崎県吹奏楽コンクール、高校A部門の出場校は二十三校。

 舞香とひなたと共に客席に入り、四、五校の演奏を見たところで出場校すべての演奏が終了。最後に演奏した学校の撤収と審査結果の集計のために数十分の時間があけられ、いよいよお待ちかねの閉会式が始まった。

「続きまして本日の成績発表を副理事長、窪川勉が行い、表彰を理事長、香久山達也が行います」

 式が始まって宮崎県吹奏楽連盟の理事長や来賓による講評が行われていたが、客席に座る高校生たちにとってはそんな堅苦しい話には集中できていなかった。なぜならこれから行われる結果発表が気になって仕方がなかったからだ。

 舞台脇に立つ男性が黒い革張りのノートを広げてマイクに語り掛ける。

「それでは、結果の発表を演奏順に行います。なお金賞の場合には頭にゴールドとつけて発表させて頂きます」

 舞台奥に立っていた各学校の代表者が表彰を受けるために少しずつ移動する。

「プログラム一番、宮崎海堂高等学校、銅賞」

 会場がざわめいた。

 宮崎海堂高校は野球部の強豪校として有名な学校だ。その実力は折り紙つきで一週間後に開催される夏の高校野球大会に今年も出場するほどに。そして吹奏楽部も規模が大きくてそれなりに強かったはずだ。

 部長と思われる代表者がステージの中央に歩み寄り、表彰状を持った宮崎県吹奏楽連盟理事長の前に立ち止まった。

「表彰状、銅賞、宮崎県立海堂高等学校殿。貴団体は第五十六回九州吹奏楽コンクール宮崎支部予選で頭書の成績を収められました。その栄誉を称え、表彰いたします」

 手渡された表彰状を受け取った代表者は礼を述べると客席に向き直して一礼。そして来たところとは反対側から舞台奥の雛壇に帰っていく。その道中、彼女が目元を拭ったのを俺は見逃さなかった。

「舞香、海堂って強いところだよな?」

「そうだね。いつもはダメ金なんだけど」

 おそらく今年になって顧問が変わったのだろうか。顧問の転勤によって吹奏楽が弱くなるというのはよく聞く話だ。

 舞香が口にした『ダメ金』というのは「ダメな金賞」という意味ではなければ金魚の種類でもない。むしろほとんどの金賞がダメ金に該当する。吹奏楽コンクールの地方大会、支部大会では金賞を受賞した学校の中から上位三校だけが上位大会へと進むことができるが、その逆で上位大会へと進むことができなかった金賞のことを『ダメ金』というのだ。

「二番、赤城高等学校、ゴールド金賞」

 意外と早い金賞のコールに会場が沸き立つ。

 金賞と銀賞では聞き間違いが発生しやすい。そのため金賞を呼ぶときには頭にゴールドとつけて「ゴールド金賞」とアナウンスするのだ。最初の「ゴ」と言われた時点で呼ばれた学校は絶叫するからきちんと聞こえることは少ないけどな。

 ちなみにこの赤城高校を補足するとサッカー部がめちゃくちゃ強いところでプロサッカー選手を大量に輩出しているところだ。まぁ複数の部員が非常勤講師と同席のうえ居酒屋で飲酒喫煙していたことで問題になったことがあるがそれはまだかわいい。それを教頭が「野球と違って申告義務がない」と言って大会にそのまま出場させようとして全国区で大炎上した学校だ。

 え?

 元ネタが特定される?

 悪いがサッカーは趣味じゃない。

 吹奏楽部が金賞獲ったんだからそのくらい許せや。

「三番、宮崎県立由乃高等学校、銅賞」

 この学校を補足すると……西都市にある高校だ。

 元宮崎県知事とか航空会社の代表取締役とかを送り出したぐらいで正直この学校って特に特徴がないんだよなぁ。

 え?

 大企業の経営者の出身校だから凄いって?

 そんなの珍しいことじゃねぇだろ。俺の高校の卒業生にもいるぞ。超大手医療機器メーカーの創業者にして代表取締役会長。ちなみに彼は野球部出身だったらしい。つまり俺の部活の大先輩でもあるというわけだ。

「四番、霧雨高等学校、銀賞」

「五番、串間高等学校、銅賞」

「六番、近江高等学校、銅賞」

 金銀銅のコールに会場は浮き沈みしながらもステージでマイクを握っている貫禄のある男性は淡々と結果発表を続けてくる。

「十七番、高鍋南高等学校、銅賞」

 パチパチと送られる。

 俺たちが陣取っている客席の後ろ側から嗚咽する気配が伝わってきた。彼女たちはこの夏のたった十二分の一瞬に放課後や土日祝日のすべてを捧げてきたのだ。上位の九州大会へと進むことを夢見て。その未来が「銅賞」の一言で絶たれたのだ。

 俺は銅賞を獲ることは慣れていた。こんなものだろう、と心のどこかで思っていたのだろう。その結果が告げられると同時に顔を手で押さえて号泣する先輩や同級生を何人も見てきた。鈍感なのか人の感情を失っていたのか、彼女たちの気持ちを俺は理解することができなかった。いや、彼女たちに対して罪悪感を覚えていた。吹奏楽は個人プレイではない。全員が心を一つに音楽を作り上げる共同作業だ。嗚咽する彼女たちに共感できないということは俺がその和を乱していたということ。少なくとも俺が上手ければせめて銀賞ぐらいは獲れたかもしれない。

 過去の嫌な記憶が沸々と湧き上がってくる。「日向市立赤岩中学校、銅賞」とコールされたときの空気、拍手、先輩や同級生たちの涙。それらが鮮やかに蘇ってくる。

「宗太郎、大丈夫?」

「……ああ、大丈夫だ」

 隣の舞香がそっと囁く。

 その声で意識が現在へと戻ってきた。

 俺がフラッシュバックを見て動揺していたのを彼女は気づいたのだろうか。平静を失っているところを彼女に見せてしまうなんてなんとも俺らしくない。ホールの天井を仰いで呼吸を落ち着ける。大丈夫。俺は高校生だ。もう楽器はやっていない。吹奏楽は中学で辞めた。そう自分に言い聞かせるが、ホールに漂う空気は確かにあの時と同じものだった。

「次がうちの学校だからね」

 舞香はステージを見つめたままそう言った。普段の彼女はあまり感情を表に出さない性格だが今は違う。俺が彼女の恋人であり付き合いが長いというのもあるが、それを差し引いても舞香の緊張が全身からにじみ出ているのがよく分かる。

 ピンっと張り詰めた彼女の表情を見ているとなんだか恥ずかしくなった。なんだろう、今日の俺は俺らしくない。いつもならば頬っぺたを突っついて怒らせるぐらいのことをするだろうに。

 舞香から顔を逸らしてステージを凝視する。舞台では先ほど表彰された高鍋南高等学校の部長たちが表彰状と盾を貰っている。二人は特に表情をあらわにすることなく差し出されたそれを受け取っているがきっと内心では悔しがっているのだろう。代表者だから感情を表に出していないだけで本当は俺たちの後ろに座っている仲間たちと同じように涙を流したいのだろう。

 だけどそれを俺は理解することができなかった。

 理屈ではわかる。

 だけど共感ができないのだ。

 まるで売れない大根役者のへたくそな演技を見ているようだ。

 高校生活を捧げた十二分間。

 夏が終わった瞬間。

 感動の押し売り。

 そのような表彰式ごっこを見ていられなくて俺は再び天を仰ぐ。結果に一喜一憂する彼女らはそのようにプログラムされたロボットに見えてしまった。いや、それが分からない俺がロボットなのか。自分のことが嫌になる。

 舞香とは反対側に座っているひなたの表情を伺ってみる。いつもはデレデレしているはずの彼女も今日ばかりは真面目な顔をしていた。

 あぁクソっ!

 まるで俺の中に別の誰かが入り込んでいるようだ。いつもの俺らしくない。

 舞台に立つ代表者が客席に向かって一礼。会場からは再び拍手が送られる。そして二人がその場を去ると同時に反対側から家鴨ヶ丘高校の制服に身を包んだ二人がやってきた。うちの学校の代表者だ。彼女たちはややぎこちない動きで舞台中央に進み、表彰者の前で立ち止まる。

 あたりのピンと張り詰めた空気はさらに鋭くなっていく。

 右も左も前も後ろも。

「十八番、家鴨ヶ丘高等学校、ゴールド金賞」

 そのアナウンスが終わらないうちに緊張は絶頂を迎えた。普段はあまり表情を変えないクールビューティーな舞香でさえ、彼女が出したとは思えないような黄色い叫び声をあげていた。

 ゴールド金賞を受賞した学校が歓喜のあまり叫ぶというのは吹奏楽コンクールではいつものことだ。それは元気な部員たちだけが叫んでいると思っていたが、本当は程度の差はあれども物静かな部員も感情を露わにするのか。きっと吹奏楽コンクールは人を豹変させる魔物が潜んでいるに違いない。

「十九番、広瀬高等学校、ゴールド金賞」

 別の場所から歓声があがるが、ゴールド金賞の余韻に浸っている今の家鴨ヶ丘高校の連中の耳には入っていなかった。

 舞香を見てもひなたを見ても、どちらも涙は流していなかった。上半身をひねって後ろの様子を伺っても、誰も悔しさに顔を覆ってはいなかった。吹奏楽部顧問の柘植先生は満足げに頷いて隣の部員に何かを語り掛けていた。

 ゴールド金賞を獲るということはこういう感覚なのか。これまでに受賞する学校をいくつか見てきたが、受賞する側に立つのはこれが初めてだ。

 もちろん俺は吹奏楽部員ではない。だけれどもまるで自分も吹奏楽部の一人のような感覚を感じていた。これが強豪校だけが見ることができる景色なのか。

 ふと柘植先生の言葉を思い出す。

「宗太郎君も吹奏楽に入ればいいのに」

 ………………。

 いや、この世界を見てしまった以上、もう楽器を持つことはできない。

 俺がいた頃の赤岩中学校吹奏楽部は俺のせいで仲間たちにこの景色を見せてやることはできなかった。悔しくて涙を流しながらしゃくり上げる同級生の姿のフラッシュバックが流れる。すべて俺のせいだ。

俺がいなかったら、せめて銀賞ぐらいは獲れていたかもしれない。

 仲間を絶望のどん底に突き落としたのに、いまさら楽器を持つ資格なんて俺にはない。

 入部してから上手くなればいいだって?

 冗談じゃない。

 俺がチューバを吹いたって、悲しむ人が増えるだけだ。


「第五十六回九州吹奏楽コンクールへの推薦団体の発表です。見事推薦されました団体の指揮者または顧問の方は、すぐに舞台下手へとおいでください。引き続き副理事長、窪川勉が推薦団体の発表を行います」

 各学校の表彰が終わり、すぐに上位大会への出場校が発表される。

 発表者である副理事長が革張りのノートをめくり、マイクへと向き直った。

「八月二十一日日曜日、長崎のブリックホールで行われます、第五十六回九州吹奏楽コンクールへの推薦団体を発表いたします。二団体です。まず一団体目」

 会場内が再び張り詰める。

 さっきゴールド金賞を受賞した学校の中から上位二校が九州大会へと進めるのだ。今回ゴールド金賞を獲得することができたのは六校ほど。その中の上位二校が上位大会へと駒を進めることができ、呼ばれなかった学校は今日で夏が終わってしまうのだ。

 銀賞銅賞に終わった学校にとっては関係のない話だ。しかしそれでも今年はどこの高校が先に進むことができるのか。内心はどこの学校も気になることだろう。

 スピーカーが振動する。

「プログラム、二番」

 それに続く「赤城高等学校」というアナウンスは歓声によって掻き消された。その喜びようはゴールド金賞とアナウンスされた時とは比べ物にならない。この光景を見るのはこれで四回目だ。この様子を俺はこれまで拍手を送る側から眺めていた。

 ステージ奥の雛壇に立っていた赤城高校の代表者が再び舞台中央へと歩み寄ってきた。

「推薦状、赤城高等学校殿。貴団体は第五十六回宮崎県吹奏楽コンクールにおいて優秀な成績を収められました。ここに九州大会へ宮崎県代表として推薦いたします。このうえはさらに精進を積まれ遺憾なくその実力を発揮されることを望みます」

 差し出された推薦状を代表者が満面の笑みで受け取り、礼を述べる。

 そして客席に向かって一礼。彼女の表情はとてつもない喜びに満ちていた。

 九州大会への進出が決まった大淀高校の部員だろう。努力が実を結んだ勝利の余韻はまだホールに残っている。悲鳴のような絹を切り裂く声でとある人名が叫ばれる。おそらく推薦状を受け取った代表者の名前だろう。俺は現役時代に叫んだことはないが、称賛する立場から何度もその光景を見てきたから分かる。

 表彰者が雛壇の元の位置に戻ったことを確認し、副理事長が二校目の発表を行う。

 今年の九州大会へと進める最後の切符だ。

 切符一枚に対して可能性があるのは五校。

「二団体目です」

 今回ゴールド金賞を獲得したすべての学校がアナウンスに注目する。周囲を見ると誰もが目をぎゅっと瞑り、ハンカチを握りしめて天に祈っている。

その空気は周りにも伝染していく。

対象から外れた銀賞、銅賞受賞校でさえも緊張している。

「プログラム、十八番」

 俺が通っている家鴨ヶ丘高校だった。

 番号がアナウンスされると同時に俺の周りは立ち上がって喜びの悲鳴を上げた。絶叫だ。部外者であるはずの俺もそれに加わった。自分が通う学校の吹奏楽部が勝ち残って次の大会へと駒を進めたのだ。自分の事であるかのように嬉しく思うのは当然だ。歓喜のあまり隣にいた舞香を抱きしめ、ほっぺたに熱い口づけをしてやった。驚いたのだろう。彼女はへなへなと座席に腰を落とした。

 やべぇ!

 こっちはひなただった!

 まずいぞ。一瞬にして全身の毛穴から冷や汗が湧き出した。

 あんなところを見られたらヤンデレ化は確実。キスどころかハグでもアウトだろう。それにここはホールの客席だ。立ち回れるような広さはない。

 しかしやってしまったものは仕方ないことだ。非番とはいえ俺はSST隊員。たとえ俺が刺されたとしても民間人から犠牲者を出すわけにはいかない。

 一瞬にして振り返った。この狭い足場で少しでも格闘戦ができるように両腕を胸元に構えて。

 しかし舞香は俺と反対側の女子部員と抱き合って頬ずりをしていた。

 なんだよ。

 隣に彼氏がいるんだぞ。

 俺を放置かよ。

 だけど舞香がヤンデレ化しなかったのは助かった。もしそんなことになっていたらこの宮崎県大会が全国区ニュースになっていただろう。

 ほっとしながらも複雑な気持ちで俺は座席に座りなおした。

 一歩間違えていれば再びうちの学校から悲鳴が起こっていただろう。歓喜の悲鳴ではなく殺人事件を見たときの悲鳴。県内の高校吹奏楽部関係者が集う宮崎市民文化ホール。あったかもしれない惨劇の未来を知っているのは俺だけ。

 ホール内の千八百名の中でたった一人だけだった。


「宗太郎君もバスに乗って帰るかい?」という吹奏楽部顧問のジジイによる嬉しい言葉を頂き、俺もバスに同乗して日向市に戻ることになった。

 全くありがたい話だぜ。

 俺は明日の朝までに基地に戻らないといけない。つまり日向市から電車に乗らなければならないのだ。自腹で。それにバスが日向市に到着するのは二十一時を余裕で過ぎるだろう。たしか二十二時半までに日向市駅に行くことができれば南宮崎駅行きの特急が残っていると思うけど特急料金が八百円ぐらいかかるんだよなぁ。自腹で。しかもそこから二つ隣の駅まで歩かないといけない。

 宮崎市民文化ホールから基地まではおよそ六キロ。走れば一時間もかからない。毎日やっている十マイルのハイポート、要するに戦闘装備に小銃を抱えて十七キロを走る訓練に比べれば楽勝だ。

 しかたない。明日は始発電車に乗って出勤するか。自腹で。

 バス車内はジジイの総括も終わり、飛び込み参加した俺はコメントを求められて大演説をぶちかました。あとは学校に帰り着くまで思い思いに過ごすだけ。舞香といちゃついていると通路を挟んだ反対側の座席から「今日が最後の日でもいいかも」なんて声が聞こえてきた。ふとそちらを振り向いてみるとひなたがウットリと蕩けていた。

 今日が最後の日でも構わないが間違えてもその理由を話すんじゃないぞ。もしそれをしたら今日が俺の最後の日になってしまう。嫉妬でヤンデレ化した舞香の手によって【SOTARO IS DEAD】になってしまう。

 ひなたが爆弾を投下しないかヒヤヒヤしながらも俺はただひたすら早く目的地についてくれと祈り続けた。考えていることを読まれないように舞香と会話をしながらも。こんなことならば口封じにもう一度だけ口付けしておけば良かったかもしれない。

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