神様代行

幽宮影人

「私のおばあちゃんを返して! 優しいおばあちゃんを、あったかいおばあちゃんを返して!」

 少女は泣き叫びました。


「こういっちゃあ悪いがアイツがいなくなってせいせいしてるぜ。何も知らない奴は『ご兄弟が亡くなられて……』なんて言うがそれこそお門違いってもんだ」

 青年はどこかほっとした様子でそう言いました。


「母が亡くなって、もう」

 くたびれた様子の女は生気のない声で呟きました。


「これでよかったのかもしれません。苦しみの中生きていくよりは。だってずっと病院でなにもできなくて」

 気まずそうに目を逸らしながら男は口にしました。


「あの子は精一杯生きようとしていたのに! どうしてあの子が死んであんな殺人者がのうのうと生きているの⁉」

 ヒステリック気味に叫ぶ女は涙で顔がぐしゃぐしゃでした。


「そっか、じいちゃんようやく逝けたんだな。うん、墓参りにはじいちゃんの好きだったものちゃんと供えるから」

 晴れやかな顔に少年は笑みを浮かべました。


「ごめんなさいごめんなさい。貴方のこと愛していたわ。でも、どうしてかしら。貴方がいなくなってこんなにも嬉しいの。私ったらどうかしているわ」

 狂ったように謝る夫人は青白い顔に隈を携えていました。


「返せ返してくれ! 俺の彼女を返せ!」

 涙に溺れながら男は慟哭しました。



 もしあなたなら、どうしますか?

 もし大切な人が亡くなったとして、それをやった犯人は今もぬくぬくと生きているとして。

 あなたら何を思いますか?

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