第21話 束の間の満足

 我々の建てた家。しみじみ満足する間も無く、あれが足りない、これが無い、お庭周りの工事がまだなどなど、「家を建てる」に終わりはない。

 引き渡しから一週間あまり、間に合わなかった水栓も、扉の取手も付いた。引越しを機に半月ほど休みをとったものの、すぐに新たな転職先で仕事を始めたナマケモノ。最早ナマケモノではない程の働き様です。

 なにせ、ローンが返せるのか心配で心配で…高収入を狙って転職したのだから、仕方がない。新たなことが経験できてとても良い職場だったが、とにかく忙しい。時間は定時で帰れるが、とにかく帰るとヘトヘトヘロヘロ状態だった。

 おうち時間を満喫とはいかないが、なんだかんだいって新しい家はいい。しかも、自分たちの希望がつまった我が家。欲を言ったらキリがないが、少しの不満も住めば都となるよう、過ごし易く少しずつ変えていけばいい。

 夫と私の意見が一致してたのが、扉と壁の少ない家がいいということ。玄関スペースと居住スペースを仕切るドアのみで、あとはトイレと子供部屋以外のドアはない。

 お店部分もあるので、比較的コンパクトな居住部分となっているが、余計な壁や戸がないおかげで、狭苦しさは感じない。

 仕事嫌いのナマケモノがどこまで頑張れるか先々の不安はあるが、新居の快適さに、家を建てた後悔はない。

 フルで働くわたしの代わりに、夕飯の支度、掃除や洗濯を夫が担ってるくれている。しかも、高いコミュニケーション能力で、年代を問わず近所の人ともすぐに仲良くなる夫。夫に代わってわたしが稼ぎ頭となってから、娘の保育園や学校のことも夫がしてくれるようになって、いつの間にか、ママ友がたくさんできている。ナマケモノは、表面上、当たり障りなく誰とでも話すが、踏み込んだ付き合いは面倒で、ママ友と呼べるような人は、ほぼいない。

 我が家には、夫を通して、ママ友や近所の人からの色んな情報が入ってくる。これはこれでよかった。

 持ち家となると、近所付き合いも大事である。自治会やゴミ出しなど、引っ越してすぐに、近隣との関わりは始まっている。ゴミ集積所についても、ハウスメーカーが絡んでの問題が巻き起こるのです。これもなかなか時間のかかる問題だったが、それはまた追々…。


 とりあえず、家自体は完成し、あとは、この家に慣れて馴染んで親しんで、もっともっと快適になっていくだけ。念願のウォークインクローゼットも、待望の書斎も、とりあえずは片付いて、しっかり荷物が全て収まった。

 新しく忙しい日常をなんとかこなしていたある日、思いもしない大事件が起こったのだ。

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