The 2edバトル ~幼女とエプロンと通報~

「ちょっとロリコン、遅いじゃない!!」


 都内北公園。

 ベンチに腰をかけていた女の子が立ちがり、少女特有の甘く甲高い声を張り上げる。

 生麻愛姫。

 出席番号7番。好きなものは猫と苺と母親。正真正銘の女児である。


「うるせぇなクソガキ。お前と違ってこっちは仕事があるんだよ」


 そう毒付きながら、愛姫と距離を取りつつタバコに火を付ける。

 松井逸馬。

 社畜歴10年。好きなものは酒とタバコと幼女。まごうことなきロリコンである。


「タバコ吸わないでって言ってるでしょ! 公園の中は禁煙なんだから!!」

「こっちはさっきまで昼飯も食わずに仕事してたんだ。一服ぐらい多めに見ろよ」

「ダメったらダメ!!」

「わーったよ、融通の効かないガキだな」


 愛姫がムッとした眉のまま仁王立ちで睨みつける。

 渋々と逸馬が長さを残したタバコを携帯灰皿へと押し込んだ。


「それで、この前言った物は持ってきたんでしょうね?」

「あぁ、これだろ。まったく、余計な荷物増やしやがって」


 そう言いながら鞄から取り出したものは、白とピンクを基調に装飾をあしらった小さなエプロンだった。

 先日、何度目かの勝負を終えた後、調理実習があるからと愛姫が賭けの対象を指定した物だ。


「姪が使ってたやつだ。もう使ってないみたいだし、お前が勝ったらくれてやるよ」

「ふ、ふん。思ったより可愛いじゃない」


 愛姫がそのエプロンのデザインが気に入ったのか、まんざらでもない反応を見せる。

 逸馬が持ってくるものだから、どうせセンスがないものと思い込んでいたのだ。


「それで、私が負けた場合は?」

「そうだな、どのみちお前負けても調理実習で違うエプロン使うんだろ? だったらそれを持ってこい。洗濯はするなよ」

「えっ……」


 ストレートに引いていた。

 何の目的かは分からないが、得体の知れないおぞましい感覚が愛姫の全身を包む。


「エプロンなんて持ってこさせて、ど、どうするの?」

「そんな顔すんなよ。ちょっと匂い嗅ぐだけだって」

「へ、変態!! 気持ち悪い!! 絶対嫌よ!!」

「なんだよ、ちょっと持ってきてその場で一嗅ぎ二嗅ぎさせるぐらい安いもんだろ」

「安くない! 絶対嫌!!」

「じゃあこのエプロンの賭けもなしってことでいいな」

「うっ、そ、それは……」


 ため息混じりに逸馬が突き放すと、愛姫は言い淀んだ。

 生理的嫌悪と見返りの板挟み。切望と拒絶の葛藤。自問自答を繰り返し、その先に彼女はどんな答えを出すのだろう。何故神はそんな過酷な試練を幼い少女に与えるのか。そんなことを逸馬は思った。

 どう考えても元凶だった。


「もしかしてあんた、そのエプロンも……!?」

「安心しろ。俺でもさすがに、姪のエプロンの匂いを嗅ぐほど道を踏み外しちゃいない。それに洗濯済みの衣服に何の価値がある」

「もう十分踏み外してるわ……」


 眉を潜め、細めた目で侮蔑の視線を投げかける。

 逸馬はその嫌悪にまみれた愛姫の表情を好ましく思い、ニヤニヤしながら受け止めた。

 嫌悪感を催しつつも、この賭けに乗らざるを得ない心中を察したからだ。


「いいわ。やる。やってやるわ!」

「負けられない戦いだな」

「ただし今回は私に勝負を決めさせなさい!」

「ふーん、まぁいいけど。あ、ただこの前みたいな鬼ごっことかやめろよ。というかあんなもん鬼ごっこじゃねぇ」


 何度か前に、逸馬と愛姫は鬼ごっこで勝負した。

 しかし、単純な一回勝負などではなく時間の許す限りゲームを続け、鬼でいる時間の長い方が負けという地獄の耐久レースだった。

 当然小学生の足の速さに負けるはずもなく最初は逸馬が優勢だったものの、そこは普段運動らしい運動をしていない社会人である。

 長期戦は厳しく、最終的に逸馬は動くことさえ困難となり、愛姫の圧勝で終わった。


「自信ないの? 小学生の女の子に体力で負けるなんてかっこわるーい」

「お前な、あと二十年もすれば分かると思うけど、走るって本当は重労働なんだからな」

「あんたおじさんだもんね。それじゃあ、かくれんぼなんてどう?」

「かくれんぼか。また典型的なの出してきたな」


 逸馬がそう提案を受けて少し考え込む。

 

「かくれ鬼じゃなくて、かくれんぼなんだな?」

「そうよ!」

「回数は一回で構わないのか?」

「いいわ!」

「じゃあ俺が」

「私が隠れる役ね!」


 遮るように愛姫が宣言したが、その希望は逸馬と利害が一致していた。

 逸馬はどうしても鬼役を選びたかった。というよりも、かくれんぼと聞いたときから、鬼であれば確実に勝てると確信していた。


 かくれんぼであるということは、すなわち姿を視認するだけで良い。触る必要もないから体力勝負に持ち込まれることもない。

 また、いくら愛姫が小さいからといって、範囲の限定された公園内に隠れられる場所など限られている。

 時間が短く設定でもされていない限り、圧倒的に鬼側が有利だと踏んだのだ。


「ふん、馬鹿だな。ガキってのは、何故かかくれんぼだとやたら隠れる方をやりたがるんだ。別に俺が鬼で構わないが、あとで負けたときに文句言うなよ」

「あんたこそ、私がずっと見つからなくて仕事に遅刻しちゃっても知らないわよ」

「ほう、上等だ。勝ってお前の使用済みエプロンで思う存分深呼吸してやる」

「き、きもっ……」


 基本的に二人の賭けは逸馬が有利だ。

 勝負の勝敗ではなく、負けた時のリスクが絶えず愛姫の方が高く、逆に逸馬は失ってもさほど痛くないものを賭けているからだ。

 とはいえ、人間として大事なものをその都度失いつつはあるのだが。


「それじゃ始めるぞ! 三十秒で準備しろ!」

「短い!!」

「ちっ、それじゃ百秒だ。せいぜいよく考えて隠れるんだな」


 そう言うと、逸馬は公園の入口まで行き、背を向けて数を数え出した。

 数を数える間も背後の公園内の音に耳をそばだてる。

 しかし、愛姫も極力音を立てないように動いているのか、逸馬は自分の数える声にかき消されて殆ど何も聞き取れなかった。


「99、ひゃーくっと。ふっ、クソガキめ、五分とかからず仕留めてやる」


 余裕とも取れる不敵な表情を浮かべながら、逸馬は入口から歩き出した。

 都心にしては広めの公園で、遊具も多くアスレチック的なものもあるとはいえ、五分もあれば簡単に一周出来てしまう。

 割の良い勝負だと、逸馬は内心ほくそ笑んでいた。

 そしてそのまま見落としがないように、敷地の端から端までゆっくりと索敵していく。


 しかし五分後、入口の前に戻ってきた逸馬は困惑の表情を浮かべていた。


「おかしい……。どこにいやがる?」


 出来る限り隈なく、どんな小さな物陰も見落とさず、ゴミ箱の中でさえも確認した。

 しかし愛姫の姿はどこにもなかった。

 

「はっ! 上か!!」


 バッと逸馬が顔を上げ、キョロキョロと見渡す。

 公園内には背の高い木も多く、視野外にまで伸びているものもある。

 逸馬は生い茂った木の葉に隠れていないかと、一本一本下から見上げていった。

 もしいたのなら、下からスカートの中が見えるのではないかという一縷の希望を抱きながら。


「くそ、外れか」


 しかし愛姫の下着、もとい姿を確認することは出来なかった。

 木以外にも視野外になる砂場の上を覆う蔦の絡まる屋根や、トイレの建物の上も、遊具などに登って確認する。

 だが、依然として愛姫の姿を捉えられない。


「もしかしてあのガキ、帰ったんじゃないだろうな?」


 ここまで苦戦すると思っておらず、思わずそんな言葉が漏れる。

 逸馬は入口に立って数を数えていたが、この公園は裏手の方にも小道に出る入口がある。悟られないように黙って帰ることは至極簡単だった。

 しかし、すぐ近くのベンチには愛姫の赤いランドセルが置いてあり、それを置いて帰ることは考え難かった。

 しばらく考え込んでいた逸馬は、ある方法を思い付き公園の中央まで移動する。

 そして、息を深く吸い込み、出来るだけ大きな声で叫んだ。


「くそがき、見ーつけたっ!!」


 公園の隅々まで届くような声量だった。

 しかし、叫び終えた後に残るのは、ただただ虚しい静寂だった。


「ちっ、さすがに引っ掛からねぇか。しかし、あと探してないところと言ったら……」


 逸馬がチラリとトイレに目をやる。

 簡易トイレのような一人用の作りではなく、男女が別れたコンクリートの建物だった。

 そのまま歩を進め、まずは男子側を確認する。

 当然そこに愛姫の姿はなかった。


「とすれば、やっぱり残るは……」


 女子トイレの前に立ち、しばし躊躇する。

 最初から隠れ場所の候補の一つとして疑ってはいたが、ここは最後の最後まで立ち入るまいと決めていた。

 もし間違っていた場合、ただの不審者にしかならないためだ。

 何より、かくれんぼでトイレに隠れるのは御法度である。


 逸馬が幼少の頃かくれんぼに興じた際、実際に女子トイレに隠れていた女の子がいたが、入って見つけた途端に女子グループから変態変態と非難されたのだ。

 逆に女子が鬼の際、同様のことを行い男子グループがからかったことで、その子は泣いてしまった。

 そのときから、鬼と同性ではないトイレに隠れるのは厳禁、というのが暗黙のルールとして出来上がっていた。


「ったく、最近のガキは良識ってのを分かってないな」


 やれやれと言った様子で、逸馬が女子トイレの入口に立つ。

 そしてそのまま中へと呼びかけた。


「おいクソガキ、ここにいることは分かってんだ! 大人しく出てこい!」


 しかし、トイレの中からは何も返事がない。


「もしかして腹痛くて糞でもしてんのか? それだったらちゃんと拭けよ。しょんべん娘の次はうんこ娘になっちまうぞ」


 分かりやすい挑発だった。

 事実と違うことを言い、否定の言葉を引き出す安い罠だ。

 だが、その手の煽りが幼くもプライドの高い愛姫に有効なのを逸馬はよく知っていた。

 しかし、依然としてトイレの中から返事はない。


「返事しないんだったら中入るからな! 本当に糞してても知らねぇぞ!」


 しびれを切らした逸馬が、少し躊躇いつつも女子トイレへと足を踏み入れた。

 男子トイレと違い、小奇麗で安い芳香剤の臭いが漂っており、ピンクのタイルが敷き詰められた空間にドアが三つほど並んでいた。

 いずれもドアに着いたスライド式の取っ手は青を表示しており、鍵はかかっていないようだ。


 逸馬が一つ、また一つと押し開く。

 そして、疑心暗鬼な心持ちで最後の扉を押した。

 そこで逸馬は確信し、信じられない心情を吐露する。


「ば、馬鹿な。全部、洋式だと……?」


 男子トイレは和式だというのに、何故か女子トイレは全て洋式である。

 その理不尽さに、逸馬は社会のあり方に疑問を感じた。


「いや、そんなアホなこと言ってる場合じゃねえ。どこ行ったんだあいつ」


 いざ開いた三つの扉。

 しかしそこに愛姫の姿はなかった。

 

「もう探してないところなんてないぞ……」


 許された時間は残り少なく、重い足取りでトイレの入口へ向かう。

 それはまるで、失敗が許されない任務で標的を見失ってしまった殺し屋のようだった。

 当然負けたところで、変な組織から消されるわけでもなく、タダでもらってきたエプロンを失うだけだ。

 しかし、女児の衣服を嗅げるという、千載一遇のチャンスを逃しそうな事実が彼の精神に深刻なダメージを与えていた。

 手を伸ばし、あと僅かで届くと確信していたものが、フッと目の前から消えてしまう絶望感は幾ばくか。


 が、ここでさらなる絶望が逸馬を襲う。


「ひっ!!」


 逸馬でも愛姫でもない、枯れた女性の小さな悲鳴。

 トイレから出たところで、散歩でもしていたであろう白髪の年配女性と目があったのだ。

 逸馬は目を見開いたまま固まり、その頬に冷や汗が伝う。


「あ、あなた、そんなところでいったい何してるの?」

「いや、違うんです! 俺は別に怪しい者じゃなくて、ただ、小学生の女の子を探してるだけで」

「小学生の女の子を探してる!?」


 その言動はさらなる誤解を生んだ。

 事実を言っただけだが、状況が状況だけに、疑惑を払拭するどころかむしろ不審者としての確信を得てしまう。

 

「誤解です! 隠れるのが上手いからちょっと手こずってるだけで」

「あなたから逃げてるってこと!?」


 もはや収拾が付かなかった。

 年配女性が逸馬に抱いたイメージは決定的なものとなっており、どんな弁明もフィルターを通して悪いものとして聞こえる。

 通報秒読みの状況がそこにはあった。


「け、警察に電話するから、動かないで!」

「ちょっと待って下さい! 俺はただクソガ、子供とかくれんぼで遊んでただけなんです!」

「嘘付きなさい! じゃあなんで女子トイレなんかにいたの!」

「それは、あいつがどこ探しても見付からないから、残るはトイレかなって」

「言い訳は警察が来てから聞くわ!」


 女性が鞄から老人用のシンプルな携帯を取り出し、110という魔の数字をプッシュする。

 結構な割合で詰みかけていた。

 仮に冤罪だと分かっても、警察が来て事情聴取を受ければ仕事には大幅に遅れる。

 そして、遅刻の原因としてそのことが会社に知られれば、疑惑であったとはいえ社会的に死にかねない。

 というか、仕事中に時間を潰して小学生女児と遊んでいる時点で実際にアウトだった。


「ちょっと待って下さい」


 まさに通話ボタンを押そうとしたその時、女性の背後から幼い声がかけられた。

 言わずもがな愛姫である。


「そのロリコ、その人が言ってること本当です」


 振り返った女性が愛姫の姿を確認すると携帯を下ろし、再度逸馬の方を確認する。


「だ、だから言ったじゃないですか! 俺はその子とかくれんぼしてただけなんです!」


 九死に一生を得た逸馬が、心臓をバクバクと鳴らしながら潔白を主張する。

 女性は愛姫に向き直ると、心配そうな様子で問い正した。


「本当なのね? この男に言わされてるってわけじゃなくて?」

「はい、本当です」

「この男とはちゃんと面識があるの? 今日初めて会ったとかじゃなくて?」

「結構前からよく賭、ゲームとかしてるんで大丈夫です」

「そ、そうなの。ごめんなさいね、早とちりしちゃって」


 ようやく疑いが晴れたのか、女性が逸馬を見ながら頭を下げた。

 まだ釈然とはしていないようだったが、愛姫の小学生らしからぬ毅然とした態度が言葉に信憑性を与えていた。


「でも女子トイレに入るのは誤解を与えると思うわよ。物騒な世の中なんだから気を払いなさいね」

「そ、そうですね。すみません、お騒がせしまして」

「それで、あなたはこの子とどんな関係なの?」


 言われて少し言葉に詰まる。

 愛姫と逸馬の関係。

 たまに公園で勝負をし、愛姫が勝ったら主に物品を、逸馬が勝ったら愛姫に何かしてもらう。

 事実を正直に言えば、おそらく再度女性が警察に通報することは想像に難しくなかった。


「き、近所に住む子供なんですよ。なぁ?」

「……」


 苦し紛れに出した嘘を、愛姫が黙殺する。

 黙っている愛姫に逸馬は焦った。


「前からよく遊んであげてるんだよな? な?」

「……そうね」


 素っ気ない様子で一言だけ呟く。

 ようやく出た肯定の言葉に逸馬は胸をなで下ろした。


「この通り、こいつもそう言ってるわけですし、安心して下さい。よくここで遊んでると思うんですけど、次見かけても気にしないで下さいね」

「そうなの、仲が良いのね。せっかく遊んでるところお邪魔しちゃってごめんなさい」

 

 そう言いながら、女性は頭を軽く下げ公園を通り抜けていった。

 やっとのことで去っていく危機を、逸馬は姿が見えなくなるまで見送る。

 そして、完全に消えたところで声を荒らげた。


「ふざけんなよてめえ! 危うく警察沙汰だ!!」

「なによ、あんたが勝手にトイレに入って通報されかけただけじゃない」

「なんで途中で黙るんだよ! また疑われたら終わるだろうが!」

「だって私、あんたの近所になんか住んでなんかないもん。それに遊んであげてるってなに? 私はそんなつもりないんだけど」

「そ、それはあの場を切り抜ける言葉のあやだろ。それぐらい分かってくれよ」

「私はあんたがおまわりさんに捕まっても別に困らないもん。それなのに協力してあげたんだから感謝しなさいよね」

「ぐっ……」


 確かにあの場で愛姫が女性の通報を制止しなければ厄介になっていたことは明白だった。

 愛姫はそれを分かったうえで、話を合わせるのをもったいつけたのだ。


「貸し一つだからね。それと、当然勝負は私の勝ちよ」

「し、仕方ねぇな。けどお前、どこに隠れてたんだ? まさか公園の外に出てたとかなら、勝敗の件は話が違うからな」

「トイレの上に登ってたの」

「は? そこは確認したぞ」

「あんた馬鹿なんじゃない? 同じとこでジッとしてたらすぐ見付かっちゃうでしょ」

 

 この公園という限定された範囲内でのかくれんぼが、鬼側に有利であることなど愛姫は百も承知だった。

 しかし、要所要所で鬼の様子を確認しながら隠れられる場所がいくつかあることで、愛姫は常に逸馬の動向を確認しながら死角に隠れていたのだ。


「上から見てたら、あんたアホみたいにじっくりゆっくり探してるんだもん。途中で下りて場所変えたりしてたのよ。あとひとりごと多すぎ」


 確かに逸馬の独り言は、その都度自分の場所を知らせてるようなもので、安全圏へ移動しながら隠れるのに都合が良かった。

 ようは愛姫を侮りすぎていたのだ。


「このガキ、小癪な真似しやがって……」

「あんたが馬鹿なだけでしょ。負けを認めなさいよ」

「けっ、くれてやるよ」


 鞄から取り出したエプロンを放ると、受け取った愛姫がご満悦そうに頬を緩めた。

 そして時計の時刻を確認した逸馬は少し焦った様子で、「じゃあなクソガキ」と言い残して小走りで駆けていった。

 その背中に愛姫が声をかける。


「貸し一つだからね! 覚えておきなさいよ!」


 苦々しく思いながら、逸馬は聞こえないふりをして公園を後にする。

 そんな逸馬の様子を、勝ち誇ったドヤ顔で愛姫は見送った。


 結局逸馬は仕事の予定に遅刻した。

 後日、調理実習で愛姫は年相応の可愛らしいエプロンに身を包んでいた。

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