第14話 更科健太①


「綺麗...」

「ええ。そうね...」


 BBQが終わて片付けも済ましたオレらはこのキャンプ場にある桜並木道を散歩していた。目的地は並木道の先にある動物と触れ合えるいう場所。


 丁度季節は4月やから桜さんはたいそう綺麗に咲いとる咲いとる。ポツリ感動をこぼした翆ちゃんの気持ちも分かるっちゅうもんや。そこに気持ちええ風が吹けば花びらがひらひらと舞って花に大した興味のないオレかて見惚れてまうわ。


 結局じゃんけんに勝てずエビもホタテも食えへんかったけど、こないな風景見てると悔しさも忘れて癒される――


「訳あるかい!!!太郎!ホンマにもう無いん???」


 急ぐ必要なんかどこにもなく各々が携帯で写真を撮ったり撮られたりして楽しんどる中、オレは最後尾にいる太郎に詰め寄った。


「健太。・・・めっちゃうまかったぞ!」

「やかましい!!」


 その立てた親指へし折るぞおどれ! しれっとホタテ喰いよって、バター醤油の香ばしい匂いは拷問に等しかったで!!?


「確かに。何故人数分用意していなかったのかしら?」

「うっ、そう怒らないでよ夢ノ中さん。やっぱりゲームは白黒勝者敗者がはっきりした方が楽しいじゃん?」


 ええぞ!もっと言うてやれ!!


「ひどいわ。あんまりよ」

「せやせや!ふこーへいや!」


 オレらの会話が聞こえたのか前を歩いとった睡ちゃんが振り向いて太郎へジト目を向ける。彼女もまた戦いに敗れた者。その別嬪な顔立ちも相まって中々迫力のあるジト目や。


「あら、翆。どうかした?」


 そんな時、ふと翆ちゃんが睡ちゃんの袖を引っ張り――


「美味」

「ちょっと水原さん!!?」


 先ほどの太郎と同じように親指を立ててそう言い残し、そそくさと和歌奈ちゃんのところに戻っていった。


「へぇ。・・そう。それは、よかったわね」

「「・・・」」(ゴクリ)


 あかん。据わった目ぇ怖すぎる。


(おい何とかせえ!)

(はあ!?何をどうしろってんだよ!?)

(元はと言えばお前がちゃんと人数分用意せんかったからやろ!頑張れ幹事!骨は拾ったる。)

(嘘だろ、おい...。)


 交わしたアイコンタクトは一瞬。それでもオレらはこの時通じ合っとった。


「あ~、うん。ま、まあ他にもちょっとした催し考えてるからさ、そこで挽回しようよ。ね、ね?」


 なるほど。睡ちゃんの怒りを次のゲームに向けさせることでこの場をやり過ごす気やな?


「ほ~、またアワビを出してくれんのか?なら今出せ早よ出せ!」

「まあまあ落ち着けよ健太。先に言っちゃったら面白くないだろ?あとのお楽しみってやつだよ。夢ノ中さんも・・・な?」


 顔引き攣っとるぞ!もっと自然に言えへんか!?


「・・わかったわ。次こそ私が勝つから」

((セーーーフ!!))


 太郎と二人して額の汗を拭う。なんや睡ちゃん気合入っとるけど意外と負けず嫌いなん?


 そう言って睡ちゃんは少し前で桜を見上げている七貴を睨む。

 あ、七貴の奴気付いたのかほくそ笑みよったで。


(な~んや、そういうことかい)


 ほんまあの二人は仲悪いの~。まあ性格からして水と油っちゅう感じやししゃーないか...。


「お~い!こっちに撮影スポットあるって!!みんなで撮ろうよ~~!!」


 和歌奈ちゃんが手を振ってオレらを呼ぶ。丁度携帯を置く台があって確かに絶好の撮影スポットみたいや。


「よっしゃ、行こか!」

「おう!」

「ええ」


 記念写真パシャリや!




―――――




「もっふもふっ...!」

「や~ん可愛いーー!!ねね、翆ちゃんあたしにも抱っこさせて!」

「ちょっと大丈夫なの?噛まれない?」

「へ~、結構種類豊富なのね。あ、ほらほら勝重さん写真撮って撮って!」

「はいはい」


 桜並木を堪能しふれあい広場に到着するや否や和歌奈ちゃんと翆ちゃんはダッシュで受付を済ませ入っていった。ここではウサギやハムスターって小動物の他にもカワウソやフクロウにも触れ合えたりするみたいやな。


「で?太郎。お前今回の目的忘れてへんやろうな?」

「そりゃ勿論。でもなかなか二人きりってのが難しくてだな~、何より普通に楽しい」

「はぁ~。そんな事やと思ったわ。いいか?俺が手本っちゅうもんを見せたる。よう見とけ!」

「おお!!?」


 全く情けない奴やで。女子と二人きりになんて余裕やわ。ここはビシッとキメたる!誘うんは和歌奈ちゃんやな。そしたら太郎は自然と翆ちゃんと二人きり。完璧や!


「なあ、和歌奈ちゃんちょっと・・」

「む。アルマジロ」

「え!ほんとだ!翆ちゃん行ってみよ!」

「りょ」


「・・・」

「・・・」


・・・・・ふぅ。


「どや?」

「どやじゃねぇーよ!!??」


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