やけに若々しい老爺のおむすびころりん

前略(実際の物語)

おじいさんが山へしばかりに行きました。しばかりに疲れたおじいさんは切り株に腰掛けて、おにぎりを食べようとしました。


ここから創作

「さてと、おむすびを食べるとするか」

私はおむすびを取ろうとしたら手を滑らしてしまいました。

「あ!」

偶然にも目の前は坂でしたのでおむすびは転がります。折角の食料ですので、必死に追いかけましょう。3秒ルールです。まだいけます。

「待て!止まるのだ」

年甲斐もなく驚異的な瞬発力を発揮しスタートダッシュに成功しました。ですが、なかなか坂の勾配がきつくて最高速度の制御はできません。若ければもっと体の自由はありましたが、もうそんな歳ではありませんので、仕方ありません。


最後はおむすびと並走という形までいけそうでしたが、無念…途中に空いてあった穴におむすびが落ちて消えていきました。

(誰じゃこんなとこに穴作ったやつは。シバキ倒したろか)

もう少しで取れたのでかなりフラストレーションが溜まります。

すると、穴の中から何か音が聞こえます。私は耳を近づけて聞いてみるとどうやら音の正体は誰かの声のようです。

「はれぇたまげた。こんなとこから声が」

何事かと思ったので覗いてみるとネズミ達の楽園がそこにはありました。どうやら彼らの声が聞こえてきたようです。

「不思議なものだなぁ。喋るネズミなんてミッ〇ーくらいしかいないと思っていたが探せばいるものじゃのう」

気分がよくなって彼らの声をしっかりと聞いてみました。

「ありがとう。おむすびありがとう」

ネズミ達は感謝の言葉を発していました。

「おぉ、なんて律儀なネズミじゃ。いいことした気分じゃ」

更に聞いてみると

「梅はやだ。鮭がいい。すっぱいの嫌い」

聞こえたのは文句です。

「図々しいやつらじゃ。先程の私の言葉を返せ」

ですが、返答が返ってくるのは面白いものでおむすびをもう1つ入れてみることにしました。

「ありがとう。おむすびありがとう」

そして、

「明太子じゃない。鮭だ鮭。聞こえてるのか」

図々しいにもほどがありますね。

「なんじゃこいつら。もらっておいて文句が多すぎる」

更に何か聞こえました。

「たくわん欲しいたくわん欲しい」

ご飯のお供も要求してきました。

「すっぱいの嫌いと言ってたじゃろ。意味わからんな。あ、」

足を滑らしてしまいました。するとどうでしょう。何故か穴の中に吸い込まれるように入っていきました。

目を開けると目の前にネズミがいました。それも人と同じ位の大きさで。恐怖でしたがネズミ達がかなり親切にしてくれたので警戒心は無くなりました。

「おじいさんおむすびありがとう。感謝して食べるね」

「おぉそうか。食べな食べな」

「おじいさんも遊ぼう」

せっかく来たのですから楽しまなくては勿体ないです。遊ぶことにしましょう。

「さてと、少し遊びますか。何をするんだい?」

こういう時は大体何か踊ることをする描写を見るだろうが期待を裏切る光景が目に入ってきました。

「丁か半か!」

「遊びが可愛くないな。丁半賭博なんてヤクザかね君たちは」

私達の理想とは反してかなりエゴが大きいネズミ達のようです。

「楽しいよ。おじいさん」

「楽しいけどなんでここまで来て賭け事しなくてはいけないのだ」

楽しむというよりは負けて憤慨して帰る羽目になりそうです。そんな歯切れの悪い終わり方で物語を終えるのは納得いきません。

「これは勘弁しておくわい」

「じゃあこっちに」

彼は扉を指さしました。どうやら広いホールなようです。やっと踊りをするのかと私は思っていますが、また期待を裏切りそうで怖いものです。

ネズミが扉を開くとそこには明るい光が沢山入ってきました。

「お、こ、これは…」

「おじいさん気に入った?」

やはり予想を裏切りましたこのネズミは。目の前に広がるのはスロット、パチンコ、ポーカー台等々いわゆるカジノです。

「結局賭け事じゃないか」

「えぇ賭け事しないとやってられないもん」

お前ら現代人か。

「こんなもの沢山作って…ファンタジーの世界で人間のエゴが出るものは勘弁してくれい」

「じゃあ帰る?」

帰るのもいいですが、折角カジノに来ましたしもうカジノなんて行くことは無さそうです。ここは1勝負くらいならいいのでは。

「ちょっとだけな」

ネズミは喜びました。

「よし!負けないよ」

そこから見事にカジノの沼にハマりまして沢山のゲームをしてしまいかなりの時間を費やしました。結果としては大勝ちになったので結果オーライでしょう。景品は小判の入ったお重です。

「こんなにいいのかい」

「おじいさんが勝ったんだもん。勝負の景品だよ持っていきな」

これでばあさんにいい土産ができました。ルンルンになりながらネズミ達に別れを告げました。

気づくと穴の外にいました。小判の入ったお重は無事です。夢ではありませんでした。家に帰るとおばあさんはびっくりして腰を抜かしましたが大喜びしましたとさ。

それを聞いた悪いおじいさんはあのネズミのカジノでものすごく擦って大損をしたそうです。


めでたしめでたし

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