計算高い女のシンデレラ

私はシンデレラ。お父さんと再婚した義理の母及びその連れ子(姉達)にいじめを受けています。日に日にそれはエスカレートして辛い毎日を送っています。ですが、最近最高な日を送ることができました。この国の王子様が主催されましたパーティーに妖精さんの力を借りて出席することができたのです。それはもう楽しい時間を過ごさせていただき久しぶりに羽を伸ばせました。0時になると魔法の力は解けてしまうので焦ってその場を離れることとなり、王子様からの声を振りほどいて帰宅してしまいました。それはもう悲しいですし、申し訳ないことなのですがその時に靴を落としておきました。


あ、皆さん知ってらっしゃるあのガラスの靴です。わざと落としました。

私の長年の経験上あの人は私に気がありますね。それがわかったのに魔法の効果が切れるとかいう訳の分からない理由のおかげで直接お話できる機会が少なかってのですわ。だから、とりあえず落としておいて、後でその持ち主探して頂けるかなと考えましてその場を後にしました。

目論見は的中となりました。

おば様と義理の母の会話を聞いてみると。

「王子様が婚約者候補を探しているらしいわよ」

「なんともう候補は決まっているらしく、ガラスの靴に足入った人が花嫁らしいわ」

「あら、それなら私達の娘も可能性あるということだわ」

「嫌だねぇえげつないこと考えて」

うるさいわよババア様達。その靴私の物であり、私が戦略的ドジを成功した賜物なのよ。絶対渡させませんわよ、その婚約者の座を。結婚してこの生活からおさらばよ。

「フッフッ…早く来て貰えないかしら」

不敵な笑みを浮かべてしまいました。失礼致しました。王子と結婚する身なのですからもっとお淑やかな態度で振る舞わないといけませんわ。反省反省です。

ブスなお姉様たちも何かしら噂していますね。

「ガラスの靴履けたら王子と結婚よ」

「私達も頑張らないとダメね」

「絶対履いてみせるわ」

「靴のサイズはどんな感じなのかしら」

「結婚したらどうしよ〜」

喚くではありませんブス共。まずあなた達は鏡を拝見していただきたいです。それに、あなた達では靴は履けません。あの靴は私の足に合わせて魔法で作られています。つまり、扁平足でないと上手く履けないシステム。サイズが合ってても上手く履けないという完全犯罪。

「フッ…私の勝ちね。王女になったらあなた達をこき使わせて頂きます」


このために私は着圧ソックスも装着させてもらってます。夕方ともなると家事の疲れなどで足が浮腫んでしまいます。その理由で伸縮性のないガラスの靴が入らなかったらたまったもんじゃありませんわ。こちらは本気なのですから。


夕方になると王子がこちらの家を訪ねてきました。


「このガラスの靴を履けるものを探している」

護衛らしき方がそう仰るのと同時に王子が現れました。

そして、こちらからはブス姉様方が出陣されました。哀れに散ってくだされれば大丈夫です。


ブス姉1

入らず撃沈


ブス姉2

無理矢理入れようとして足が負傷


ブス姉3

サイズは大丈夫でしたが扁平足ではないので撃沈


そりゃそうです。さてと、そろそろ私の出番ですわね。


「この家には貴様ら3人だけか?」

「えっと…」

「私がいます」

はい、華麗に登場させてもらいましたわ。

「ふむ、もう1人おられたか。では、こちらへ」

王子は私に気づいたようで出てきました。

「あなたは、あの時の」

「王子まだ履けたわけではありません。お待ちください」

私は待っている間に着圧ソックスを脱いで浮腫み防止はバッチリ。あの硬い靴のせいでできてしまった「マメ」や「靴擦れ」は全て絆創膏で隠しました。これ以上ない足の仕上がり…これは勝った。

足を入れるとすっぽりと入りました。

(おっしゃァァァ)

護衛も大変驚いていました。

「なんと!ピッタリと入られましたか」

「シンデレラ!あなたのくせに生意気よ!」

もうあなた方の喚きは何も聞こえませんわ。

王子が私に話しかけられました。

「シンデレラというのですね。なんて綺麗な扁平足。そうでなくてはこの靴は入りません」

(王子、褒め方お下手です。それは褒めてません)

そんなことはもうどうでもいいです。これでこの成功と離れて贅沢な暮らしの始まりです。


その後王子とシンデレラは結婚しましたとさ。めでたしめでたし。

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