俺のユニークスキルがなぜか【魔物討伐デスゲーム】なんだが ~陰キャ高校生は、ダンジョンが現れた現代世界で生き残るべく、異世界に行きレベルアップする~ 【改訂版】

四角形

第1話 蹴散らして下さい、雷鳥様。

 針葉凪。

 高校一年。両親をともに失い孤独に生きている俺の朝はいつも――


────────Quest───────── 

〈餓狼の主〉サーペントを討伐せよ!

----報酬-------------

生存権

スキル〈 ? 〉の習得

─────────────────―── 


 ――そんな青く透き通っったパネルを見るところから、始まる……わけがない。


 寝ぼけ眼を擦り、俺はその青いパネルを二度見すると、あまりにも呆けた声を漏らした。

 

「……は?」顔をひきつらせたまま、俺は言う。「んだ……これ」

 

 外では、相も変わらず蝉たちが騒がしく鳴いていて。

 窓から差し込む陽の日差しが、俺の肌をじわじわと焦がしていた。

 

 いつもと変わらない一日。

 今日も、そうなるはずだった。確かに、ついこの間までは。

 

 ――あの日世界が・・・変わるまでは・・・・・・

 

 ◇

 

 ~一週間前~


『世界では原因不明の死が相次いでおり、我々先進国はこれと三ヶ月前の〈アナウンス〉との繋がりを調べ、原因を解明すべく――』

 

 ぷつりと、スマホから流れる音が途切れた。

 耳からイヤホンを外して、青空を泳ぐ鳥を見上げながら、俺は膨れ上がった頬を擦る。


「あいつ、強く殴りすぎだろ……」

 

 つい先程のことを、詳しく言えば「クソ陰キャ犯罪者」と罵られながら殴られ蹴られした時のことを思い出して。

 まじふざけんな……なんて呟きながら、俺はおもむろに立ち上がった。とぼとぼと歩き、そして、屋上のフェンスに手を掛ける。

 

 ――この世界は多分、俺を必要としていない。

 

 不甲斐ない自分自身に歯噛みして、俺はゆっくりと息を吸った。

 フェンスをゆっくりと乗り越えて、遥か上空より地面を見下ろす。高い。……怖い。

 

 飛び降りようってのに、腰が引けて、足が震えて、体が思うように動かない。

 ……どこまでも、俺は出来損ないみたいだ。

 

 生徒手帳を取り出し、俺はあの日手渡された”人間ランク”を凝視する。 


 ――ランクF

 殺人、強盗、強姦……それら人間のクズによる行為を働いた者にのみ与えられる、”世界のゴミ”としての不名誉な称号。

 

 あの日……二ヶ月とちょっとくらい前のこと。

 世界は、一夜にして一変した。

 

 脳内に響くアナウンス。

 それが、始まりの合図だった。

 

〈これより選別を開始致します〉

〈三ヶ月後、世界は”セカイ”と交わります〉

〈それまでを”準備期間”とさせて頂きます〉

〈これより与えられる”人間ランク”を、あらゆる手を使って上げてください〉

〈人間ランクが高ければ高いほど、生存の確率は上がります〉

〈それではまた、三ヶ月後に〉


 全世界の人間全ての脳内に響いたアナウンス。

 それと共に、俺達は己の、そして人の”ステータス”を可視化できるようになった。

 

 ステータスはその人間の”価値”を表す指標だ。

 例えば、我が校トップであると言われている白崎真冬のステータスがこれ。

 

Status──────────────────―

白崎真冬 17歳

 

人間ランク:A

評価値:861


笑顔:951 頭脳:891

愛嬌:912 容姿:971

運動:871 性格:893


称号:愛しきみんなの天使


―ー総評―ー

容姿淡麗、成績優秀。性格も良く品性も良い。

貧乏な家庭に生まれるも、嫌な顔せず家庭のためにバイトも掛け持ちしている。

あらゆる人間に好かれており、また将来への期待値も高い。

あと一歩、Sランクまで”特別な何か”が足りない。

──────────────────―───


 流石我が校トップとも言える。どの数値もずば抜けて高い。

 俺とは比べ物にならないくらいだ。というかそもそも、人間ランクFの俺が彼女に勝っているはずもないのだが。

 

 そして、そんな俺のステータスがこちらだ。

 

Status──────────────────―

針葉 凪 17歳


人間ランク:F

評価値:23


戦闘:12 頭脳:112

容姿:13 無能度:811

ビビリ:712 頼りなさ:521


称号:無能殺人鬼


―ー総評―ー

生きる価値のないゴミクズ。圧倒的無能。

将来の夢・なし。特技・殺人。趣味・ゲーム。

過去に”殺人”の経歴を持ち、”窃盗””強かん”の経歴もある犯罪者。

すぐさま裁きを受けるべき人間。見た目もキモい。クソ陰キャ。

──────────────────―───


 散々な言われようである。

 本当……散々な言われようだ。

 

 何せ……俺には、一切の記憶がないのだから。

 記憶喪失とでもいうのだろうか。兎にも角にも、俺には中学三年間の記憶が一切ない。まるでタイムスリップでもしてきたとでも言うみたいに、その期間の記憶がすっかりと抜け落ちているのだ。

 

 殺人に窃盗に……強姦だとか。

 一体、俺は何をしてしまったのか。

 

 分からないが、覚えてもいない罪を償う術はない。

 ただ、得体の知れない気味の悪さに怯え続けるしかない。でもまあ、しょうがない。多分それが、俺に与えられた罰ってやつなんだろう。

 

 屋上から地上を見下ろしながら、ホッと一息つく。

 出来損ないだ、と自分でも思う。得意なこともなく、頭も悪く、運動も人並み程度しかできない。多分だけど、あのステータスは本物なんだろう。確かに、俺はあのステータス通りの人間なんだと思う。

 

 生きる価値のないゴミクズ。

 確かに、俺はそれなんだ。


 でも、死ぬのも怖い臆病者で。

 だから、ダラダラと生きていくしかない。 


 青空の下。

 懐からゲーム機を取り出した俺は、鼻歌を歌いながらゲームをプレイする。

 画面には、斧を手に持った牛の化け物――ミノタウロスが映っていて。

 

「蹴散らせ雷鳥――【サンダーバード】!!」

 そう叫びながら、俺の操作するキャラクターがミノタウロスを一閃した。


 ウガガガ。悲鳴をあげて、ミノタウロスはドロップアイテムへと変貌する。

 

 すると、画面には【クエストクリア】の表示と共に文字が次々と浮かび上がった。


You are the HERO君は主人公だ!!

 You saved the worl――】

 

 そこで、ぷつりと画面が暗転する。

 ……おいおい、嘘だろ。充電切れかよ。ツイてない。本当……つくづくツいていない。

 

 あーあ。

 ゲーム機を閉まって、思う。

 

 このまま生きていて、良いこととかあるんだろうか。

 そういえば、三ヶ月前のあの〈アナウンス〉。あそこで確か言っていたよな。

 

〈三ヶ月後、世界は”セカイ”と交わります〉って。

 

 もし、もし本当にこの世界が変わるなら。

 あわよくば、この世界がゲームのような世界に変わるなら。 


 ――こんな出来損ないな俺だって、少しは強くなれるのかな。 


 思って、青空を泳ぐ鳥に無意識に手をかざしていた。

 すっと息を吸い込んで。そして、呟くように俺は言う。


「蹴散らせ雷鳥……【サンダーバ――」

 

「――宮村さん……お、俺は!」


「……え?」

 

 どこかで不意に声がして、呆けた声が漏れた。

 なんだ、今の声……?


 息を殺して、フェンスを乗り越えて屋上の内側に戻っては、ゆっくりと声のする方へ近づく。どうやら、俺のいる方面の裏側に誰かがいるらしい。ゆっくりと、角から顔を覗かす。

 なんだろ? って、あ、ああ……そうか。

 

 ――これ、告白か。

 

 男女それぞれ一人ずつ。

 男子生徒の顔は朱色に染まっていて、どことなく甘ったるい雰囲気がここまで漂ってくる。

 

 覚悟を決めたのか、拳を丸めた男子生徒は、大きく息を吸って女の子に告げた。


「俺は……貴方の事が好きだ! 大好きだ! だからどうか……俺と、付き合ってほしい!!」


「ごめんなさい! ……私、好きな人がいるから。……だから、君とは付き合えない……です」


 わぁお……。

 これ、多分見ちゃいけないやつだよな。

 

 よし、俺は何も見てない。

 見てないよー。

 

 という訳で、俺はここらで退散しま――


「――は? いやいや、おかしいでしょ? 嘘だよね? 宮村さん……ねぇ?」

 

 不意に、足が止まった。

 脳内で、警笛が鳴っている。

 

 ……ああ、そうか。

 まあ、気持ちは分からなくもないよ。

 好きな人に振られるって、多分、相当キツイよな。

 

 こんな俺だけど、似たような経験はあるから分かるよ。


「だって……あんなに思わせぶりな態度取ってたじゃないか!!」

 

 叫びながら、男は女の子を押し倒して。

 女の子は、か細い悲鳴をあげた。


「きゃ、きゃぁ!」

「ほら、言ってよ……。恥ずかしがらないで……僕のこと、本当は好きなんでしょ!?」

「だ、誰か……助けて……」

 

 ……よく分かる。

 楽しそうに喋っていたのに。幸せそうな顔で笑ってくれたのに。なのに、なんで。

 ……信じたくないって、思うよな。分かるよ。

 

 俺もついこの間、例の”白崎真冬”相手によく似たような感情を抱いたからな。

 

 でもさ、でも――。

  

「ふざけるなよ……このクソビッチがッ!!」

 右拳を振り上げた男を見て、俺は深くため息をつく。

 

 ――それはちょっと、よくねーんじゃねーかな。

 

 懐からスマホを取り出して、俺は角からバッと飛び出す。

 彼らの視線が、一斉に俺に集まった。

 

「お、お前……」

 

 慌てふためいた様子で、男子生徒は俺の方を向く。

 それに対して、俺はゆっくりとスマホの画面を見せた。


「今までの……全部撮ってるよ」

 

 言うと、男子生徒は「ひぃっ」と口から空気を漏らして顔を歪めた。

 彼は咄嗟に立ち上がって、女の子から少しずつ離れていく。

 

 どうやら、相当焦っているようだ。

 顔が真っ青である。


「もう金輪際その女の子に関わらないって約束したら……消そうかな」


「か、関わらない……関わらないから!!」


「そう……。それなら、消すよ。反省したなら……もうするなよ?」

 

 動画を消す素振りを見せる。

 実際は動画なんて撮っていなかったので、あくまで素振りだけだ。

 つまり、動画を撮っていたというのはデマカセの、あいつをビビらせるための嘘って訳だ。うむ。我ながら策士だ。

 

 ようし、これで一件落ちゃ――


「――馬鹿だなぁテメェッ!!」

 

 顔面に衝撃が駆け抜ける。


「あえ……?」と口から呆けた声が漏れた。

 体が数秒宙に舞って、どてりと背から地面に落ちる。

 

 ジンとする痛みが体中を駆け巡って、思わず表情を歪めた。 

 

 ……あれ。

 えっと、なんだ、これ。

 

 ……何が起きてんの?


「これでお前はもう何の証拠も持ってねぇって訳だ!! ハハ!! 素直に動画を消すとか、馬鹿じゃねぇの!? これはなぁ……こっすい真似使って俺をはめた罰だよ! ギャハハ!!」

 

 男は馬乗りになると、俺の顔面を殴りまくる。

 ズドン、バゴン。鈍い音と共に、顔面がぐちゃぐちゃになっているかもしれないと不安を抱くほどの激痛が俺を襲う。

 

 痛い……いたい……。

 なんだよ、これ……。

 

 は?

 痛すぎだって……馬鹿かよ。

 

 た、頼む……。

 そこにいるんだろ?

 

 俺がさっき助けた、女の子。

 あの子が、助けてくれたら。

 

 そう思って、口を開いた。


「た、すけて……」

 

 でも、返ってきたのは。


「はあ? 私……助けてとか言ってないから。というか……人間ランクFの生きてる価値もない人をわざわざ助ける理由とか、ないし。……そのまま犯罪者同士仲良くしたら?」

 

 そんな、俺を絶望に叩き落とす声だった。

 

 は、はは。

 乾いた笑いが込み上げる。

 

 俺を見捨ててどこかへと去っていく女の子の後ろ姿に、目にじんわりと涙が滲んだ。

 

 なんだよ、それ。

 なんだよ……それ……。

 

 俺の振り絞った微かな勇気も。

 弱キャラなりに少女を助けようとした俺の努力も。

 

 全部全部、無意味ですじゃん……。


 視界に霞がかかる。

 頭が、真っ白に染まっていく。 

 

 いてぇ、いてぇって……。

 心も、体も……ズタボロだって。

 

 俺が……何をしたって言うんだよ。

 勝手に人間ランクFだとか言われて。知りもしない罪を着せられて。

 

 もう、嫌だって。疲れたよ……もう。

 ああ、誰か。誰でもいい。とにかく今は……こんな、惨めで情けない俺を……。

 誰か、助けて。 


 助けて――

 

「ケハッ!!」どこからともなく、不意にそんな声が響いた。 


 目を見開く。


 ――例えば、それはまるで。まるで、物語の中のスーパーヒーローのようで。

 

 俺は、ついつい見とれていた。

 

 突如として現れた人型のシルエットは、太陽の光を背に浴びて。

 今から助けてやるから待ってろ。そうとでも言うように、手に持つバットのようなものを振りかぶった。

 

 そして、なんの躊躇いもなく。

 男に対して、バットを振り下ろす。

 

 それは間違いなく、救いの手だった。

 

 ――そう、思っていた。

 

「うっゔぁ!?」

 呻き声と共に、俺を殴っていた男がぶっ飛んでいく。

 

 けれど、それだけじゃない。

 頭蓋骨がひしゃげ、頭に花が咲いている男の姿に、思わず「は?」と声が漏れた。

 

 なんだ、これ……。死んだ? 多分、そうだ。

 

 いや、いやいや。

 ……流石に、やりすぎじゃ……。

 

 視界の中で、シルエットの正体が顕になる。

 

 驚愕。

 頭を金槌で殴られたかのような、そんな衝撃。

 

 違う……。違った。スーパーヒーローなんかじゃなかった。それに、手に持っているそれだって、バットじゃない。棍棒だ。

 

 でも、なんで。

 なんで……こんなやつが……ここに……?

 

 戸惑う俺を置いてけぼりにして。

 視界の中で、ぐにゃりと化け物が笑みを浮かべていた。


「ゴブ……リン? だよ……な。あはは……疲れてんのかな、俺……」

 

 棍棒を手に持つ、浅緑の肌が特徴の化け物……ゴブリン。

 なんで、こいつが。というか、なんで? これ、現実だよな。ゲームとか、アニメの世界にしかいないはずじゃ……。というか、こいつ今……あの男を殺した? たった一発で? なんだよ、これ……。何が起きてんだよ。分かんない。分かんないって、まじで……。

 

 慌てふためく俺のことなど知らず。


 ――ピコン、とどこかで音が鳴った。

 

 目を見開く。

 脳内で、見知らぬ女性の声――アナウンスが鳴り響いた。


〈これより、ハリバ ナギの最終選別を始めます〉と。 


 それと共に、ゴブリンがまた一歩、また一歩と距離を縮めてきた。痛む体を叱咤して、なんとか後ずさって距離を取る。立ち上がることは出来なかった。あの男に殴られすぎて、体に上手く力が入らなかった。

 アナウンスは、更に続く。


〈生き残りたくば、戦ってください〉

〈命を賭して、戦ってください〉

〈全てを守れるのは、戦えるのは、貴方達【戦士】だけです〉

 

〈勝利するのは、強き者のみ〉

 

〈勝利条件は――”最期のダンジョン”の攻略〉

 

〈それでは、たった今から――〉

〈――第一ラウンドを、開始します〉

 

 ……三ヶ月前にあった、あれ。

 あのアナウンス……。

 あれ、本当だったんだ……。

 

 アナウンスが終わった頃には、ゴブリンは俺のすぐそばまで寄ってきていた。


「はは」

 と乾いた笑い声が漏れる。 


 ……んだよ、それ。

 世界は、どうやら本当に変わってしまったらしい。ゴブリンが現れたってことは、俺の望んだゲームの世界になったんだろう。

 

 でもさ、でも。

 タイミング……悪いって。 


 体に上手く力が入らず、動けずにいる俺を見下ろしながら、ゴブリンは愉快に「ぐぎゃあ!」と笑ってみせた。

 

 視界の中で、ゴブリンが棍棒を振り上げる。

 ……死ぬのかな。多分そうだ。ああ、嫌だ。嫌だって。……まだ、死にたくはない。

 

 ――もし。

 

 いつも、そう思っていた。

 

 ――もし、この世界がゲームのような世界に変わったら。

 

 そしたら俺も、少しは強くなれるのかな……って。 


 多分、そんなことはない。

 ゲームのような世界に変わったところで、結局の所俺は無能で。それは未来永劫変わらないんだ。

 でも、でもさ……。

 

 多分そこでも俺は、死ぬことがどうしようもないくらい怖い、臆病者なんだと思うよ。

  

 笑いながら、俺はゴブリンに向かって手をかざす。

 そして、震える声で、呟くのだ。

 

 そんな訳ないって。

 起こるはずもないって、思いながら。

 

「蹴散らせ雷鳥――」

 

 すっと、軽く息を吸い込む。

 それと共に、ビリリと腕に電撃が纏わりついた。

 電撃が風を巻き込みながら、ブォンと激しい音を響かせる。 

 

 ねぇ、神様……。

 もし、貴方が本当にいるのなら。

 願わくば、この手に他でもない力を。 

 また願わくば、目の前のこいつを……。

 

 ……蹴散らして下さい、神様。

 

 目を見開きながら、俺は叫んだ。


「――【サンダーバード】ッ!!」

 

 空気が爆ぜた。

 肩から腕へ、腕から手のひらへ、手のひらから宙へ、電撃が伝っては飛んでいく。

 反動で体が後方に転がった。

 

 まさか、そんな……。

 思う俺とは裏腹に。

 

 俺の手のひらから飛び出した稲妻の雷鳥は、ゴブリンにぶち当たってピカリと光った。


「グギャァァァアアア!!」

 

 悲鳴を上げながら、ゴブリンがまっ黒焦げになっていく。

 そして、ゴブリンはバタリとその場で倒れた。

 

 ……なんだよ、これ。

 まじで? まじなのか……?

 

 俺……意外と凄い?

 

 思いながら、俺は意識を失った。

 ただ暗闇の中で、不可思議なアナウンスが聞こえていた。


≪おめでとうございます≫

≪ハリバ ナギは、いち早く世界に適合しました≫


≪選別判定――S≫


≪エクストラスキルの習得が認めらます≫


≪これより、貴方を支援する”神”を検索します≫

≪――ヒット≫


≪一覧を表示します≫

≪一覧より、貴方のスポンサーを選択して下さい≫





≪……眠っているのですか。それならこれは、また後ほど……プツッ≫

 

 ◇


 ――どこかで、ピコンと弾けた音が鳴った。

 

 それは、全ての始まりの合図。

 電池切れで落ちたはずのゲーム機が、薄く仄かな光を放つ。

 

 そこには。

 誰にも気づかれることなく、眠りこける少年の懐に仕舞われているゲーム機の画面には。

 


『The world hasまだ not been saved yet.』


 そんな文字が、浮かんでいた。

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