第4話 プロポーズ記念日

 我が家ではプロポーズの日を記念日の1つとしている。人に言うと驚かれることもあるが、サラダ記念日があるのだから別に良いと思う。ただ、この日の取り扱いは非常に難しい。未だにどの程度祝えばいいかお互い分からずにいる。そのため年によってやることが異なる。最も盛大に行った年は近くのテーマパークに泊りがけで行き、遊びつくした。

「今年はどうする?」

「家でゆっくりしようよ」

 記念日が近づくとこのやり取りが数日置きに行われた。数十回のやり取りを経て、今年はどこにも行かないことが正式に決まった。

 全く何もなしも味気ないと思い本屋でメッセージカードを買った。夫の好きなキャラクターが描かれた可愛いもの。そこにいつもの文言を書く。夫に手紙を書くのはこれで何度目になるだろか。夫に伝えたいことはいつも同じなのでやや消化試合気味だ。こんなものをもらって嬉しいのだろうかと思いつつも手紙を書くのが好きなので毎回用意する。

 日付が変わったタイミングで夫の背中と座椅子の間に封筒をねじ込む。

「どうしたの」

と言いながら夫は背中から封筒を抜き取り手紙を読む。そして自分は何も用意していないとべそをかく。これも何度も繰り返したやり取り。私はこの手のことで夫を出し抜くのが好きだ。私は笑いながら夫の頭をなでた。あと何回こんな茶番を繰り返していけるだろうか。1回でも多く記念日を祝えたら良い。

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