第5話 「呪いと決断」
次の日。
体の一部が黒く変色したジークが、高熱で倒れてしまった。
しかも魔王直属の配下との戦闘中である。
苦戦を強いられたが配下を打ち取るのに成功した。
それよりもと息を切らし、今でも倒れそうな体を引きずりながら私はジークの容態を確認するために彼の元へと急いだ。
火傷をしそうなぐらいジークの額は熱かった。
早急に回復役も担うエマに高等な治癒魔術をかけてもらったが、回復する様子が微塵もしなかった。
ガタイのいい聖騎士アレクが彼を背負い、私たちパーティは王国へと帰還することを決断をした。
何故、こんな奴のために一か月も費やした旅を中断をしなければならないのか。
高熱に悩まされる彼を、私は睨みつけた。
最初から同行していなければ、こんな結果にならずに済んだのに。
どうしてそんなになるまで付いてきたのか……。
確かに私はまだ若い、しかも女の子だ。
だけど弱くはない、強いのだ。
ジークでは一生をかけても敵わないぐらい強いというのに、冒険者だった頃から変わらない。
溢れでてきそうな涙をこらえようとしたけど微かに流れてしまった。
皆に見られたかもしれない、勇者が泣いていいはずがないのだ。
とにかく私は急いで涙を拭った。
帰りは行きよりも簡単だ。
途中、伝書鳩で王国に事情を説明し迎えの馬車を用意してもらった。
おかげて徒歩で進んだ険しい道のりもたった一週間で通り過ぎることが出来た。
そして王国に到着すると私らはジークを医者に預けた。
一週間経過しても容態が変わらない。
明らかに何かがおかしいと思った。
次の日、医者の元を仲間のエマと一緒に尋ねる。
医者はとても困った顔で「呪いの影響」と告げた。
私はきっと、動揺していただろう。
視界が震えた。
呼吸が、鼓動が加速した。
呪いを専門にした呪術師のおかげでジークの呪いを解くことができた。
寝ている彼の傍らで私は号泣をしていた。
両目を手で覆いながら、声を出して泣いた。
私はまだジークのことが好きだ。
彼を想って泣いていることを自覚した。
じゃなければ、こんな彼の為にこんな温かな涙は流れ出てこない。
数時間、落ち着きを取り戻した私は死ぬかもしれなかったジークの姿を思い出しながら決意する。
彼を二度と危険な目に遭わせないよう勇者パーティから『追放』をしようと。
パーティメンバーの皆にも相談をすると、反対する者は誰もいなかった。
彼が目を覚ましたら、自分の想いを噛み殺しながら決着をつけることにした。
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