グレイマン少女の侵略活動

枯れ尾花

第1話侵略開・・・・始?

 春。

 それは運命という名の未知との遭遇。

 空は澄み切っていて、太陽がおはようとあいさつするのが聞こえる。

 空は青いのにその先の宇宙は暗い。

 星が輝き、でもその光は宇宙を深淵の闇から救うほどではない。

 なんで空は青いのか。なんで宇宙空間は真っ暗なのか。

 そんな途方もない、1つ解決すればまた新しい未知を究明するのは楽しいようで、終わりの見えない道に辟易する。

 結局最後はどこかの妥協点を見つけ、解決できないものだと嚥下しなければならない。

 おっといけねぇいけねぇ。

 メガネガティブになってるじゃねぇか。

 なんせ今は面倒な時期。

 多感で多汗。

 少し厚着しすぎたかな。

 最近まで体を貫くような冷気が漂っていたのに、今ではもわっと暖かい風が体を舐めまわす。

 じゃあこれは汗じゃないのか?神様の唾液?

 神様ってやっぱり杖をついたひげもじゃのじじいなのかな。

 見たことねぇから分かんねぇや。

 閑話休題。


 桜舞うなんて幻想的な世界観はまだこの場に広がっていないが、僕の目には思はず恍惚してしまいそうな、マニアの眼なら琴線を揺らすような景色が広がっていた。

 ちょっと待て。この際1人称『俺』とかにしてみようかな。

 ロックでドープでファッ・・・・最後は違うか。

 慣れないことはやめておこう。

 いつかボロがドバっと血飛沫のように溢れ出る。

 よし。終生まで『僕』でいこう。と思う。

 そんな少し過激な例えとは裏腹に僕を取り囲む世界は平和で・・・・というかのどか?

 辺りは何を育てているのかさっぱり分からない(とりあえず野菜という事に)未知の田んぼ田んぼ田んぼ、男心をくすぐる黒と黄色の目立つ動物注意の標識、黄金に輝く竹が3本ほど見つかっても何ら疑わない、奥の方に目を凝らしてもまるでブラックホールか!と突っ込みたくなるほど(まぁブラックホール見たことないけど)不明瞭な竹林、そしてうちゅうじん。

 シティーボーイな僕にとって見えるものすべてが新鮮で、田んぼなんて教科書でしか見たことが無いし、動物注意の標識なんてもってのほか。

 黒と黄色の配色はガタンゴトン、カンカンカンとなる遮断機と殺人現場とかに入れないようにするあれしかしらない。

 竹林に至っては恐怖すら感じた。

 日曜日とかに『野球しようぜ』とか眼鏡のおかっぱ頭の奴に誘われ、竹林にボールが入ることを考えると・・・・。

 太陽の光をも遮る、中に入らなければ地形も何も分からないような未知に足を踏み入れるのはやっぱりねぇー。

 怖いってもんですよ。体ブルブル、気分もブルー。

 それに僕としてはポリシーに反するというか。

 未知は未知のままに。

 余計な詮索はしない。

 そういうのは専門の方がすればいいじゃないか。

 僕は真っ当な、後先が手に取るようにわかるような道を進む。

 未知なんて首を突っ込んだら最後、とりつかれ、骨抜きにされる。

 ろくなことが無い。素人が扱えるキャパをオーバーキルしてる。

 もし今、『アルマゲドンに参加せよ。貴様に世界の命運が託された。』とか低い声で天啓されても動じない。

 なにが貴様だ。うぬぼれるな!初対面だろ!と一瞥できる自信がある。

 というのは嘘だが、耳に無音のイヤホンを入れるくらいの反抗はできる。

 だから何も言わない。つっこまない。

 未確認生物・・・・うちゅうじん。




 僕は今バス停の前にいる。

 白をベースにした・・・・と思うんだけど経年劣化もあってかもはや黄色。

 それも人の目を良い意味で引くような黄色ではなく、なにあれ汚いと若い女性に跋扈されそうな。

 もしこの色を最大限褒め称えるならセピア色というのだろうか。

 15歳という人生という波を15年しか経験していない様なひよっこピヨピヨ君な僕でもどこか郷愁を感じる。

 特に何か特筆すべき思い出もないのに回顧を繰り返す。

 おいおい。なに感慨に浸ってんだよ。

 思春期特有のあれか?だせぇからやめとけよ!

 ごほん。咳払い。

 簡素、シンプル、つつましやか。

 日本人の美徳とよく言われる。

 ヤマトナデシコ?みたいな?

 コリコリしてておいしそう。じゃなくて。

 どっちかっていうと平坦?彫は深くない。

 とにかく海外の人でも日本好きなら知ってるようなその単語は、今や風化しており遥か彼方にビュンビュン吹き飛ばされたんだけど。

 その終着点はここだった様で。

 再確認と、夢なら醒めてくれという願いを込めてもう1度時刻表を見る。

 次バスが来るのはやはり1時間後だった。

 ふ、ふ、ふっざけんじゃねぇですよ!

 プロレスラーなら元気ですかぁー!だよ!

 白いタオル投げたらバス来るのか?今持ってそうなのは赤いタオルだけど。

 血飛沫じゃねぇよ。染料だよ。たぶん。

 僕は今、これが田舎だ!と言わんばかりに心を袈裟懸けに斬られた。

 ザクッ。グサッ。うわぁぁぁぁ。

 おっとつい癖で。大きなリアクションを。

 ま、まぁ何も僕もそこまで短気じゃない。

 1時間なんてスマホをあてもなくタプタプしてりゃあすぐに過ぎる。

 ゲームしたりマンガ読んだり彼女や友達にメールしたり・・・・最後は見栄張りました、スイマセン。

 もちろん友達はいるよ。ガールフレンド(女友達)もいるよ。

 ただ彼女がいないだけ。

 まぁもう会うことは無いだろうけど。

 とにかく、言いたいことはまぁこの顔見れば分かるでしょ。

 分からないか。分かるわけないよな。

 周りに人はいない。

 動物注意の標識はあるが動物もいない。

 光る竹も目視では見えないし、もちろんバスも来ない。

 でもそれはいた。

 冒頭でも触れたが、触れただけ。

 撫でまわすように、輪郭を辿る様に触ったわけではない。

 ここがええんかー。ここかー。とか鼻息荒くフガフガ言って双眼を迸らせ、相好をだらしなくでへぇっと崩したりしていない。

 そもそもする気もなかったんだが。

 僕の中の大いなる良心と両親の教育のおかげというかせいもあって。

 「はぁはぁはぁ・・・・。」

 「暑いなら脱げば?」

 今にも隣で春の陽炎にキャトルミューティレーションされそうなうちゅうじんに提案をする。いや、してしまった。

 早速我がポリシーに反してしまう。

 でもね、うちゅうじんの命と自分のエゴ。どっちをとるか・・・・もしかしたら天秤は平行を保つ確率の方が高いかもな。

 暇だったからかもしれない。退屈しのぎにうちゅうじんとのチャネリング。

 世界の主人公かと勘違いしてしまうじゃないか。

 僕の妄言は宇宙の彼方へ打ち上げるとして、うちゅうじんの返答を聞こう。

 「地球は温暖化が急激に進んでいる。ワレワレの見立てではあと3年持つかどうか。深刻な水源の枯渇も気になるところだ。」

 「春に熱中症と脱水症状のダブルブッキングは笑いものだなぁ。街に未確認生物より稀有な現象じゃないかなー。」

 あくまで独り言のように。

 もちろん僕はサタニズムじゃないよ。

 あくまと言ってもあの悪魔じゃない。

 ニホンゴムズカシイネ。

 僕は鞄に入っている500ミリリットルの水(聖水じゃないよ)を取り出し、砂利砂利の舗装のほの字も知らないようなコンクリートの上に置く。

 あくまで鞄が重かったから。ただそれだけ。

 ツンデレかよ兄ちゃん。そうだよ悪いかよ。

 僕のシナプスがリンクしたのか、うちゅうじんはトテトテと歩き、水の前で屈伸運動をする。

 そのまま水を手に取り・・・・頭からぶっかけた。

 本物なんている訳がない。

 某テーマパークのネズミも、アヒルも、イヌも中には人間が・・・・おっとこれ以上は僕の口から言えない。

 冷凍保存されているあいつの部下にキャトルミューティレーションされてしまう。

 リアルとフェイクを見分けるのは少し大人になってからでいい。

 子供は夢を見るものだから。

 閑話休題。

 そのうちゅうじんの全貌を見ることは出来なかった。

 中で滴る水滴を親鳥から餌を貰うひな鳥のように口をすぼめ1滴1滴、点滴くらいの勢いの水を飲んでいるのか、ただただバカなのか。

 うちゅうじんという大きな括りではなく、もっと狭めて、蟻の巣穴くらいにするならばグレイマンといった所だろう。

 博識だな、僕。

 今しがた手に入れた知識をただひけらかしたかっただけなんだけどね。

 ゲームをするでもなく漫画を読むでもなく、うちゅうじんの知識をスマホという電脳空間に尋ねる。

 もちろん嫌な顔をせず受け答えしてくれる。

 でも電脳空間ではすぐさま井戸端会議。

 なにーあの子ー。15になって宇宙人とか調べちゃってるわぁー。

 痛いっ!痛いよー。万力に手を挟んだくらい痛いよぉー。とか言われてるんだろうなー。

 ぐすんぐすん。泣いたふり。

 電脳世界の井戸端会議なんか気にしてちゃリアルの悪口陰口に対応出来やしねぇーよ。

 自分に都合の悪いことはスルー。

 恋の電波は即受信受信。

 あっれー?恋の電波が来ないなぁー。受診しに行くかー。

 ゴホン。咳払い。

 着ぐるみは見るからに布製。

 まぁでしょうねというかグレイマンの頭は水をはじくことなく吸収。

 そのまま宇宙空間に持っていくのかな。

 まぁ地球以外の惑星では水って貴重だもんね。(さっき調べた)

 でも生態系の破壊とかに繋がらない?生態系管理局とかうるさそうだよー。

 コラコラ。持ってくるなら味のあるコーラにしなさい。

 ってそこ?!

 ・・・・そもそも地球以外で生態系っているのか?

 イタラスゴイネー。

 グレイマンの頭は地球の重力と水を吸った布に負けうなだれている。

 それはさながらNASAに連行され落ち込むグレイマンのよう。

 ってこんなの誰も見たことねぇよ!

 さっきからツッコミがセルフだ。

 ワォォォン。これはウルフ。

 僕も熱にやられているのかな。

 「お、重い。地球の重力は月の約6倍。馬鹿らしい。これだから地球人は皆頭でっかちなんだ。少子高齢化がそれをさらに加速させている。無知をひけらかす。傷の舐め合い。醜い。チュパカブラの排泄物より醜い。」

 グレイマンのくせにやけに地球の、というか日本の情勢に詳しい。

 チュパカブラ・・・・は意味わからねーけど。

 興味は湧かない。排泄物は歩いている時に踏むか踏まないか、踏んだら排泄した犬・・・・は悪くない。

 飼い主に鼻くそを後ろからさりげなくつけてやろう。

 そんな感じ。

 知らぬが仏というやつだ。

 「眩しっ!」

 仏の後光がという訳ではない。

 そもそも東大寺に行ってもどこに行っても仏から後光なんて出ているところ見たことが無い。

 あいつらは体を金に彩った趣味の悪い中肉中背のぶつぶつ頭だ。

 あんなものにしかすがる事の出来なかった、昔の日本がどれだけ厳しい世界だったかを象徴するだけのただの猥雑物。傲岸不遜そのものである。

 閑話休題。

 偶然というのは何かに繋がって生まれるもの。

 例えば飛んできたボールを、落としたスマホを拾うという名目で腰をかがめたその刹那、偶然避けた。

 そもそもボールが飛んできていなければただ落ちたスマホを拾っただけという日常的な行為に変わる。

 ボールが飛んできたという事象に繋がって『偶然』避けたという事象が確立する。

 その結び目は固く結ばれ小さくなり見えなくなる。

 その偶然に狂喜乱舞するから。これは過大表現。

 とにかく偶然を神格化すること反対派の僕からすればこんなの・・・・。

 その光はそこにいるグレイマンの存在を確定申告するかの如く、そして『彼女』の行動にスポットライトを当てるかの如く彼女だけに光が当たる。というかそのように見えた。

 彼女の重しが、彼女の言う重力の仮面が剥がれる。

 その行為に何1つ神聖さはなく、彼女にとっては日常の行為で当たり前。

 だがその行為にまるでモザイクがかかるかのように後光が差し込む。

 仮面の中は美少女だった。

 という幻想を抱きその姿に恍惚する。

 こんなお決まりを少し茹だる体で懊悩していたわけではない。

 そうだといいなぁー。くらいの感覚。

 心は真っピンクではなく鳶色くらい。

 「ぷはぁぁぁ。」

 光の残滓がこぼれ落ちる。

 それはまるで夜空に散らばる星屑のようで。

 点と点を結べば線になりその形1つ1つに名前が付きそうな。

 紫煙が上がる。もしかしたら田んぼを焼いた煙かもしれない。

 だがその煙はこれから起こる予定調和の狼煙のようで。

 一連の行動が終わり、モザイクが解けた。

 面白くない言い方をするなら、灰のように固まった雲が太陽を隠す。

 コントラストの急な変化に目がチカチカと、辺りに緑の縁やら黒い棒線が浮かぶ。

 何かに目覚めた様な、今なら火とかだせそう。

 ゴホン。本当にむせた。

 

 水灰色というか薄鼠色?まぁどっちも変わらんか。

 日本人離れしたその髪はまるで天王星を模したかのようで、1つ1つに命が宿り、隙あらば急所を突きそうな。

 その反面少しでも触れたものなら灰の様にサァッと体ごと宇宙の残滓に飲み込まれそうで。

 それは彼女の体躯があまりに幼的で、それでいて栄養補給は宇宙食だけと言わんばかりに痩せ気味だからというのもある。(まぁ今は体グレイマン、顔美小・・・・幼女なんだけど)

 もし宇宙食なら彼女は地球産のうちゅうじん?

 火星とかからならそう見られるのか。僕も。

 白磁の様な全身を覆う白い肌は放った残滓を吸収し、それと同時に俺の眼も吸収する。

 しかしその肌は太陽の光を反射し、彼女には紫外線という宇宙からの光線をカットできる素質を持っていた。

 「ワレワレハウチュウジンダ。」

 グレイマンの頭をまるでへそが急所と言わんばかりにへそを隠すように持つ。

 そもそもその暑そうな着ぐるみ(首から下を覆う)を着ているなら守らなくて大丈夫だよ。

 それに雷様?も流石にうちゅうじん(仮)のへそなんて狙わないよ。

 いや、彼女は1度頭にどでかいのくらってるのか?

 そんな格子状に絡まった思考の糸を1本1本丁寧に解かず、一気に爆発、何も始まらないがビックバンを起こし解決する。

 今回は未知を解決するんじゃない。未知と触れ合う。

 言うならば体験入部。だからポリシーには反しない・・・・はず。

 未知部への体験。

 女のなんてつければそれは一気に下降する。

 何がとは言わないけど。

 「ワレワレって君1人じゃん。」

 ベタだ。溶けたアイスが手に付いたくらいベタベタだ。

 うちゅうじんの言葉も自分のツッコミも。

 アイスのコーン、正式にはアイスクリームコーン?の空洞くらい脳内カスカスうちゅうじんに対応するならもっとこう・・・・。

 ユニバァァァス!!

 みたいなことを両手を天に掲げて言った方が良かった。

 「1人じゃない・・・・よ?」

 身長差もあってか下から覗き込むように語りかけてくる。

 その声は湖の波紋のように儚く、けなげで田舎の動物たちの喧騒が嘘のように聞こえなくなる。

 僕とうちゅうじんの間に結界が張られ、というかまるで景色は変わらないが別世界に連れていかれた様な。

 理性を失えば侵略活動を始めてしまう。

 落ち着くんだ僕。

 心で唱え、視線を竹林へ移す。

 日本を感じたかったから。

 彼女の洋風な顔立ちは僕の心の三和土に平気で上がりこむ。

 だが彼女はそのビー玉の様な透き通った青い双眼と湖面を舞う白鳥の様な動きで視線内へ回り込んできた。

 「な、なんだよ。」

 「あそこは近づかない方が良い・・・・よ?」

 なんでさっきから疑問符が付いてるんだ。とか。

 竹林に何があるの?とか。

 色んな疑問が浮かんだ。

 君は一体・・・・というのは時効だろう。

 とにかく僕の頭の中は厚着のせいかショート寸前だった。

 ここでとるべき最善の行動は。

 「ヘェー。ソウナンダァー。」

 

 

 

 

 

 

 


 

 





 

 

 

 

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