第23話 お屋敷


「ほい、着いたよっと」


 道路を走ること三〇分、一般的な民家の五倍はある一軒の屋敷が見える。


その前で停止して鉄柵の入り口を開き、中へと艦を進めるかと思いきや、そこをやや通り過ぎ、地下へと続く巨大なトンネルへと艦を沈めさせる。


 少しして着いたのは地下の工房であった。


 屋敷に専用の工房を持つというのは、国軍の大佐という地位を考慮しても贅沢なことである。


 ロイ達は一体どんな悪いことをしてこんなこんな豪勢な場所に住んでいるのかと考えながら艦を降りる。


 地下工房はオレンジ色の薄明かりしかついていなかったが、その光を頼りに壁際のレバーを下ろすと明りが点いて工房内を照らし、ライナはコンテナから自分のガトリングバギーを出し始めた。


「じゃあリビングで仕事の話といきますか」


 艦とバギーを工房に残してライナは首を鳴らしながらロイ達を引き連れて上へ続くいくつかの階段の内の一つへ向かう。


 ちなみにチビ神兵はサイズ敵に階段を上れないのでリアが抱き抱えて運んでやる。


 扉を空けると、そこはライナの屋敷のリビングであった。


 リビングから直通で地下工房への階段が伸びているという大胆な構造はライナの趣味であり、他の階段は直通で自室や応接間などと繋がっているらしい。


 他にもおかしな抜け道やら隠し部屋があり、その全ては特別な理由も無く、そちらも完全な趣味で作ったというのだから、このライナ・ボルナードという男の変人ぶりはかなりのものである。


 白い壁に汚れの無い絨毯、置かれている家具や調度品は、一級品とはいかなくても、今の時代では結構な贅沢品に入る代物だろう。


 ただし、金持ちには付きものの無駄に高そうな、一般人には理解不能の美術品だけは見受けられなかった。


 ライナ曰く「芸術品が見たくなったら美術館に行くから買う必要は無い」とのことである。


 全員がどこにも穴が空いていない綺麗なソファに体重を預けるとリアが台所を借りて四人分の紅茶を入れて戻ってくる。


「はいどうぞ」


 リアから紅茶を受け取ると三人はまずは一口飲んでからテーブルにカップを置く。


「さてと、一息ついたら仕事のお話お話」


 上機嫌にテーブルの上に置かれた書類を手に取ると、頭を仕事寄りに変え、表情を引き締めて書類に目を通しながらライナは仕事の説明をし始める。


「この前、艦の中で言ったとおり敵は巨神の軍勢、正確には巨神の軍勢を格納している超ド級戦艦、新しく届いたこの資料によると、二日後の夕方にこのセントラルに到着するらしい、だから、二日後の朝にオジサン達と軍はセントラルを出発、一〇〇キロ離れた丘の上から敵を待ち伏せる」

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