第2話 深まる誤解

「避妊具も着けずに、私のお腹の中に遠慮なく出していくんです。私が睡眠薬に気づいて摂取していないので起きているのにも気づかないで気持ちよさそうに出すんです。可愛いですよね」


「「「「きゃあーーーーー!!!可愛いーーーー!!!」」」」



え?可愛い?今の話のどこに可愛い要素ありました?


って、いやいや、そうじゃなくて!

え、僕、定期的に紅雨うーちゃんを襲ってることにされてる!?


してないですからね!?


確かにうーちゃんは誰かに告白されるたびにうちに遊びに来て僕の姉さんとしゃべったあと、なぜか僕の部屋に泊まっていきますけど。

間違っても僕は手を出したりなんてしていません。


うーちゃんは僕の実の姉の友達で幼馴染。それ以上でも以下でもない。

長年一緒にいたから、ほとんど姉弟みたいに思っているからこそ、別にやましい気持ちになることもないし、まして恋愛感情なんて持ったこともない。


そんな僕がうーちゃんを襲う!?そんなわけないじゃないですか!



「えー、でもそれほんとなのー?冶已やみくんって奥手そうだし、真面目で清廉潔白って感じだから、ちょっと信じられないっていうか......」


おぉ!どなたか存じませんが、良いことを言ってくださいますね、先輩!

そうです、僕がそんなことするはずないじゃないですか!



「そうですよね。みーくんは外面をとても上手く取り繕っていますからね」


いやいや、何も取り繕ってませんよ。

や、多少はみんなに合わせたりするような社会的な仮面ペルソナは被ってますけど、そんな非人道的な人格を隠したりしてるわけじゃありませんよ!?



「その証拠に......あまり他の方に見せたくはないのですけど......こちらを見ていただければ、信じてもらえるかと......」


「わぁ......これは......」


「はい、みーくんに襲われたあとに、証拠として写真を撮っていたんです。ほら、私のここ・・から白いのが流れ出てるでしょう」



僕のところからでは、うーちゃんが差し出している携帯端末に映し出されてるものは見えないけど、その内容はうーちゃん自身が説明してくれた。


いやいや、そんな写真あるわけないじゃないですか。

僕がうーちゃんに手を出すなんてあり得ないんですから。

あっても合成写真とかでしょう。



「確かに......どうやら本当みたいね......ごめんね紅雨こううちゃん、疑ったりして」


「いえ、お気になさらず。それもこれも、みーくんが巧妙に隠して私に種を付けようとするせいですからね」


「そうだね、でもお互い合意みたいだし、求められて満更じゃなさそうだし、いいなぁ」


「えぇ、気持ちもいいですしね」


「「「きゃーーー!!!」」」







「ちょっと待ったー!何言ってるんですか!信じないでくださいよ!僕はなにもしてませんよ!」


ついつい我慢できずに出てしまいました。



「あら、みーくん、こんにちは」


「「「あー、噂の冶已くんだー!」」」


誤解を解く間もなく周りの先輩方に囲まれて、頭を撫でられたり、いっしきわやくちゃにされてしまいました。


「聞いてください!みなさん、誤解なんです!僕がうーちゃんを襲うなんてそんなことしませんから!」


なんとか抜け出して、ぜぇぜぇと息を荒げながら弁解しました。

ここで誤解を解いておかないとまずいのが明白ですからね!!!




「うんうん、そうだよね、冶已くんは紅雨ちゃんにいたずらなんてしてないもんね!大丈夫大丈夫、私達みんなわかってるから!」



とりあえずこれで急場はしのげたでしょうか......。





「でも、せめて今後は避妊はしてあげてもらえないかな?紅雨ちゃんが妊娠して学校から居なくなったりしたら寂しいから。ね?いや、冶已くんが何もしてないことはわかってるんだよ?」



こ、これはわかっていただいていない!?

というか、完全に襲ってると思われている!?



「はっ、まさかここに乱入してきたのも、さっき紅雨ちゃんが告白されたから、その分のお仕置きをしようと!?」



隣りにいた名前も知らない先輩が、何か理解不能なことをおっしゃっている。


あ、うーちゃん、また告白されてたんだ。

そろそろ誰かにOKしたらいいのに。



ってそれどころじゃないよ!人のことをどうこう言ってる場合じゃありません!


このままではまずい!

うーちゃんがどういうつもりなのかわからないですけど、事情を聞いて、誤解を解いてもらわないと。


そのためにはまずは2人きりになって話を聞かないと!



「ほ、ほんとに違うんですって!ちょっ、ちょっとうーちゃん!こっちきて!」


「あっ、ちょっとみーくんっ」



とにかくこの場からうーちゃんを連れ出すために、座っているうーちゃんの手を引く。



「「「わー!口止め!?口止めに紅雨ちゃんを襲うつもり!?」」」


「違いますって!!!!!!」



僕の強い反論に真剣さを感じ取ってくださったのか、僕がここに突入して初めて場がしーんと静まりました。






「......みーくん、せめて学校でするのは許して......お家に帰ってから、ね?」








「......え?」



数瞬の沈黙が流れたあと、その静寂を破ったのは涙目で、震える声で訴えかけるうーちゃんでした。




「え、いや、え?」


いやいや、そんな反応したらまるで本当に『僕がうーちゃんを口止めするために襲おうとしている』みたいに見えちゃいません......?



「「「きゃー!!!!冶已くん大胆すぎ〜〜〜〜!」」」


「誤解ですってばーーーーーー!!!!」

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