11.一人じゃない、仲間がいる。








「あれ、えっちゃん?」

「どうしたのさ」

「あ、あの! 先生たち見ませんでしたか!?」




 知紘と未希は、廊下の向こうから息を切らしてかけてくるエヴィを見て首を傾げた。そんな二人に対して、彼女は呼吸も整えぬままに問いかける。

 どうやら、何事かあったらしい。

 そう悟った未希は、ひとまずエヴィに落ち着くように言った。



「落ち着きなよ。どうして先生を探してるのさ」

「あ、えっと! 杉本くんが――」



 エヴィから事情を聴いた知紘と未希は、顔を見合わせる。



「未希ちゃん、これって……」

「少しばかりマズイかもね。これは、八紘も呼んだ方が良いか」



 そして、事態の危険性を察した二人は次の行動に移った。

 未希はすぐに八紘へと電話をかけ、知紘はエヴィにこう訊ねる。



「それで、二人はどこに……?」



 その問いかけに、エヴィは少し考えてから首を左右に振った。



「分からない。分からないよ……」

「うー、参ったな。そうなると――」



 やはりまだ、気が動転しているらしい。

 彼女は、そう言うとうつむいてしまうのだった。そんな様子を見た知紘は、しばし様々な可能性を考える。

 話をするのならば、ある程度は人気がない場所を選ぶはず。

 また、学外に出ている確率は低そうだった。そうなってくると、条件はそれなりに絞られる。そして彼らにとって、因縁がある場所といえば――。



「やっぱり、校舎裏かな……?」

「知紘、そこで大丈夫? 八紘も現地集合でいいの?」

「まずは集まることの方が重要だからね。ハズレでも一度、そこに行こう!」

「了解!」



 知紘の言葉に、未希が頷いた。

 そんな様子を見てエヴィは、少しだけ不安そうな表情を浮かべる。



「大丈夫だよ、えっちゃん」

「え……?」



 知紘は彼女の顔色に気付いたらしく、一度声をかけた。

 そして、明るく笑って言うのだ。




「みんながいるから! えっちゃんも、たっくんも一人じゃないよ!!」――と。




 それを聞いて、エヴィはハッとする。

 そして、潤んだ瞳を思い切り拭ってから頷くのだった。



「そう、だね! 早く杉本くんを探しに行こう!!」

「オーケー! 行こうか!!」



 彼女たちはそう声をかけあうと、校舎裏へと向かう。

 すると、そこに広がっていた光景は予想だにしないものだった。








 

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