エルフとデビルがダベるだけ

ジョン

第1話 髪切った?

「おい、お前。髪切ったか?」


角のとがったデビルの少女が言った。


「いや、切ってないけど」


耳のとがったエルフの少女が言った。


港町の喫茶店に二人の姿はあった。


「あっそう。見間違いか」


「何をどう見間違いたのか意味が分からないのだけど」


「なんにでも意味を求めるな。無意味なことが意味を持つこともある」


「ええそうね。少なくともこの会話は無意味極まりないわね」


「相も変わらず、手厳しいお方だ。そんなんだから、アタシぐらいしか友人がいないのだ」


「いや普通にいるんだけど。というかむしろあんたが友人なのかどうかが不明瞭よ」


「え?」


「気づいてなかったの?」


「意外な真実。知らなかった方が幸せだったな」


「御愁傷様」


「冷たいなぁ。まるで外に降り積もる雪のようだ」


「いや、雪降ってないわよ。幻覚でも見てるの?」


「お前の言うとおりだ。どうせ浮き世は幻さ」


「勝手に世界を無に帰さないでいただける。大魔王さん」


「大魔王とは恐れ多い。せいぜい、中魔王だろ」


「何よ中魔王って。謙遜しているのかどうなのか微妙なラインなんだけど」


「まったくだ。なんだ中魔王とは」


「あんたが言い出したんでしょうが」


「そうであったか?」


「数秒前の記憶もないとは。流石は魔族」


「よせやい」


「いや、誉めてないわよ」


「そうなのか?」


「そうよ。記憶喪失さん」


「失われた記憶を求め、世界を飛び回るか……それもまた一興といものだな」


「いってらっしゃい」


「冷たいな。一緒に行かないかい?」


「……機会があったら、ね」


二人は喫茶店をあとにした。

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