第19話 まさかまさかの


 ピチョン。ピチョン。


「ん、んぅ」


 水滴が滴り落ちる音で目が覚めた。


 よかった。生きてる。あの地震と崩落で生き埋めにならなかったのは、マリアのおかげだ。


「そうだ。マリアは……」


 目を擦って視界をはっきりさせるが、真っ暗で何も見えない。


 しばらくすると夜目が効いてきたので、あたりを見渡す。


 いた。暗闇のすぐ近くで眠っていた。


「マリア。マリア」


 身体をゆするが目を覚ます気配はない。血は出てないから大丈夫だとは思うけ

ど……。


「どうすっかな」


『やっと目を覚ましたか。人間』


「うおっ」


 第三者の声に俺は思わず飛び上がる。


 つか、なんだこの声。めちゃくちゃ重厚感のある低音ボイスが頭の中に直接響いてるぞ。どうなってんだ。


「誰だ!?」


『なんだ。我が見えぬのか。では光を灯してやろう」


「わっ」


 今度は光がついた。



 今度はなんだよ!


『さぁ、我の姿に恐れ慄くがいい!』


「……悪い。眩しくて何も見えねぇ」


『えぇー』


 いやそんながっかりしたリアクションすんなよ。俺が悪いみたいじゃん。


『……まだ?』


「うるせーな!? ちょっと待てっつ……うの」


 俺は言葉を失った。


 クリアになっていく視界に最初に映ったのは、真っ黒な鱗。巨大な足。


 俺は顔をあげ、言葉を失った。


 そこにいたのは━━━


『我は最後の6大竜王、赤龍王ブリギッドである』


 むふー、と満足げに鼻息を出す、巨大なドラゴンだった。


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