第15話 諦めてくれよ……

 このまま俺と堅山さんが下校を続けたらクラスでも噂になるだろうし、お互いに良い事なんてない。

 なんとか下校は無理だと堅山さんに伝えないと……。

 しかし、下校を断る理由が必要だ。

 正直一緒に帰るくらい何が問題なのかと言われれば問題はない。

 俺が周りの視線さえ気にしなければの話だが……。


「ねぇ、別に良いでしょ? 別に井岡君も一緒で良いからさ」


「い、いやそれは……」


 絶対にそれは嫌だ。

 だってあの様子だと井岡は堅山さんの事を良く思ってないし、また今日みたいに喧嘩になったら大変だ。


「私が傍に居るのも……嫌?」


「そ、そういうわけじゃ……」


 悲し気な表情を浮かべる堅山さん。

 そんな彼女の顔を見て一緒に居る俺に向けられた嫉妬の視線が強くなる。

 やめろ!

 いや、俺が悪いのかもしれないが別に俺は彼女に無駄な期待を与えないように遠ざけようとしているだけだ!

 そ、そりゃあ情に流されてこんな事にはなってしまったが、しっかりここは突き放さなくてはいけない。

 それが優しさというものだ、変に期待させるのはダメだと思う。

 いや、まぁ俺がそんな事をしなくても堅山さんは直ぐ飽きると思うけど……。


「あのさ! 一緒に帰るのは無理だよ……その俺は君を振った訳で……その気まずいし……」


 よし!

 言ったぞ!

 しっかり言ったんだ!

 ここまでハッキリ言えば大丈夫だろう!

 悲しい顔をされるかもしれないがそれは仕方ない。

 悪く思わないでくれ、俺と堅山さんでは釣り合わないんだ。


「え? いやだけど」


 俺に決定権はないんですか……。

 

「大体、気まずさなんて今感じてるの? 感じてたらこうして今日付き合ってくれてないでしょ?」


 ごもっともです……。

 やべぇ……なんか何を言っても言い返されそうな雰囲気だな……。


「あ、いや……だからな……」


「はぁ……そんなに私と帰るの嫌なんだ……ちょっとショック」


 ヤバイ。

 俺が無策だったからか俺の考えを見透かされてしまった。

 なんだか大変失礼なことをしてしまったなぁ……でもこれで俺を嫌ってくれればそれはそれで良いのだが。


「まぁ、私相当酷いことしたしね……信用されてないのも嫌われてるのも分かってるつもり……」


「え?」


「そりゃ怒るよね……告白ドッキリなんて……分かってる、今の私なんて好きになって貰えないことくらい……」


「い、いや別にそのことならもう大丈夫だぞ?」


 まさかここまであの事を引きづってるなんて……いや、確かに怒ってはいるけども!

 今は堅山さんが俺を嫌う番であって、俺が堅山さんを嫌う番じゃない!!

 なんで自分が悪いから仕方ない、みたいな思考回路になってるんだ!?

 これじゃぁこの子はまた……。


「私、石嶋に好きになって貰えるように頑張るから」


 ほらぁ!

 また変な決意を固めちゃったよ!!

 なんで?

 なんで俺に好かれる為に頑張るの?

 俺もう振ってるんだよ?

 さっさと俺以外の男の所に言ってくれよ!

 俺の方が諦められなくなるだろ……。

 

「……俺なんて好きにならない方が良いよ。自分の事しか考えてない最低野郎だから」


「そう言う人は自分でそんな事を言わないと思うけど?」


「いや、その……正直堅山さん可愛いんだし、別な相手を見つけるとか……」


「え? か、可愛い? そ、そうかな? ありがとう……ふふ」


 何で可愛いだけピックアップして聞くんだよ!

 純粋か?

 純粋なのかこの見た目ギャルのリア充は!?

 畜生可愛いな!

 頼むから俺をさっさと諦めさせてくれ!

 俺じゃぁ君とは釣り合わない、絶対にどこかで君をがっかりさせる。

 だから俺にそんな顔をしないでくれ。

 付き合いたいと思っちゃうじゃないか!

 でも同時に考えちゃうんだよ!

 君と付き合った自分の姿を!

 月とスッポンで周りからどんな目を向けられるかも!

 君がドンドン俺に落胆していく顔も!! 

 だから……。


「……諦めてくれよ」

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