第6話 動き出す物語


「な、何か用か堅山さん?」


「い、いや……その別に用ってほどの用じゃなんだけど……」


「え?」


「その……い、一緒に帰らない?」


「はい?」


 一体このカースト上位女子は一体何を言っているんだ?

 というか、今俺は武川と話をしているんだが……。


「いや、悪い。俺は今後輩と話をしててだな」


「じゃ、じゃぁ昇降口で待ってるから。それじゃ」


「え? いや、あの!!」


 そう言い残して堅山は行ってしまった。

 いやどうして?

 なんで急にあの人一緒に帰ろうとか言ってきたの?

 全然分からなんだけど!?

 もしかしてまた俺をからかおうとしている?

 そうだとしたらもういい加減ガツンと言ってやりたいなぁ……。


「あ、あの先輩?」


「ん? あぁ悪い。それで誰なんだ?」


「あ、話は覚えてるんですね」


「当たり前だ! こんな面白そうな話は滅多にないからな!」


「後輩女子の恋バナを面白そうとか言っちゃうんですね……こっちは真剣なのに……」


「それで誰だ? 誰なんだ? お兄さんに言って見ろ!」


「嫌です! てか、あの綺麗な先輩誰ですか? 先輩いつの間にか私以外の女友達出来たんですね」


「いちゃ、あいつは別に友達とかじゃないんだけど……てかなんで怒ってるの?」


「別に怒ってませんけど? 何を言ってるんですか先輩? じゃぁ私もう行くんで!」


「え? あ、あぁ」


 そう言って武川は自分の教室に戻って行ってしまった。

 なんだあいつ?

 急に機嫌悪くなってたし。

 というか、俺今から堅山と帰らないと行けないの?

 

「待ってるとか言ってたしなぁ……てか、俺は井岡と帰ろうと思ってたわけだし。断っても良いよな」


 でも堅山の連絡先も知らないし。

 昇降口で待ってるとか言ってたしなぁ……。


「仕方ない、ここは直接断りに行くか」


 井岡のことはその後迎えに行けば良いだろう。

 俺はそんな事を考えながら昇降口に向かった。

 もしかしたら帰ってないかな?

 なんて思いながら昇降口に来た俺だが、そんなことはもちろん無く、昇降口では堅山が待っていた。

 いや、なんであのカースト上位層の奴らと帰らねーんだよ。

 はぁ……断るの面倒だなぁ……変な断り方したら明日学校でカースト上位層の奴らにネタにされそうだし、ここはなんとか穏便にすませよう。


「か、堅山さん」


「ん、やっときた」


「あぁ待たせてごめんね……」


 いや、なんで謝ってんだよ俺!

 勝手に一緒に帰ろうとか言ってきたのはこいつだろ!?

 もっと強気で行けよ!

 と、気の強い俺は心の中で言っていたが、気の弱い俺は心の中で女の子には優しくしないとだめだよ!

 と言っていたので出来るだけ穏便に済ませるために謝罪から入った。


「じゃぁ……帰りましょうか……」


「あ、いやそのことなんだけど……」


 よし、ここは落ち着いて言葉を選んでいこう。

 少しでも発言を間違えば俺の明日からの学校生活に問題が生じるかもしれない!


「何?」


「え? あぁ……あの……ちょっと用事があるから堅山さんとは帰れないんだ」


 よし!

 これなら大丈夫だろう!

 用事が何かを突っ込まれても買い物があるとか行っとけば大丈夫だろ!


「そうなんだ、じゃぁ私も付き合うよ」


「え!? い、いや良いよ! 悪いし! それに結構時間掛かるし!」


「別に良いよ。私も放課後は時間あるし」


「い、いや……その……」


 くそっ!

 予想以上に粘るなこの女!

 そこまでして俺をからかって遊びたいのかっ!?

 クソっ!

 なんとか堅山さんと帰らなくてすむような理由を考えないと!

 そ、そうだ!


「か、買い物はちょっと堅山さんに見られたくないものだから……」


「何? もしかしていかがわしい本でも買うの?」


「いや、違うけどさ……」


「別に何を買うかなんて見ないから、別に良いでしょ?」


 なんなんだこの女!

 どんだけ俺をあざ笑いたいんだ!

 もういっそのことエロ本買いに行くからとかいうか?

 でもそんな事をしたら、明日絶対クラスで何か言われるよなぁ……特に女子に……。

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