現実ラブコメは甘くない!!

Joker

第1話 リアルはこんなもん

 ラブコメディ。

 それは男女の恋愛を描いたコメディ作品のことをいう。

 しかし、残念なことに現実の恋愛とは大きくかけ離れた内容の話が多い。

 クラス一の美少女が突然告白?

 幼馴染の女の子?

 金持ちのお嬢様から求婚?

 義妹との恋?

 そんなことは現実では起こらない。

 現実の恋愛はもっと残酷だ。

 クラスの美少女が普通の男を好きになるなんてそうそう無いし、金持ちのお嬢様から求婚なんて夢のまた夢。

 義妹との恋なんて幻想だ。

 幼馴染の女の子なんて居ない。

 それを理解しながら俺はずっと生活をしていた。

 だから、今のこの状況に頭が追いつかない。


「あ、あの……わ、私とその……付き合って下さい……」


「え……あ、いや……え?」


 慶藍高校(けいあい こうこう)二年石嶋清高(いしじま きよたか)。

 人生で始めての告白を放課後の教室で受けています。

 その前に軽く俺がどんな人間なのか分かりやすく教えよう。

 普通の人間だ。

 おっと、そこらのラブコメ作品の主人公みたいななんちゃって普通の人ではないぞ。

 俺はマジで本当に普通の人だ。

 主人公にある料理スキルなんてないし、親が海外出張で一人暮らしなんてこともない。

 頭の良さも学年の真ん中の位置で、運動はまぁまぁ。

 幼馴染の可愛い女の子も居ないし、姉や妹なども居ない。

 身長も体重も平均くらい。

 好きな漫画のジャンルはラブコメディ、いつもこのジャンルには元気を貰っている。

 しかし、俺は彼女など出来た事がない。

 そもそも、仲の良い女の子が居ない。

 そんな俺が今、何故かクラスでもカーストトップの堅山伊奈(かたやま いな)さんに告白されている……いや、なんで?

 堅山さんはクラス内カーストのトップ!

 茶髪のサイドテールで瞳は大きく顔は小さい。

 スタイルは出るところが出ていて、引っ込んでるところは引っ込んでいる。

 手足もスラっと長く、身長は少し低め。

 クラスの男子からはもちろん人気だ。

 いつもクラスの男子のカーストトップの奴らと仲良さげに話をしている。

 クラス内カーストの中層に居る俺との接点なんてまったく無かったはずだ。

 なのになぜ?

 

「ね、ねぇ……」


「え? あ、ご…ごめん。何?」


「へ、返事は? ずっと黙ってるから……」


「あ、ごめん! えっと……」


 ヤバイ!

 いろいろ考え過ぎて黙ってしまっていた!

 一応俺は今告白されている状況だ!

 ど、どうする?

 こんな夢のような状況、ラブコメ以外に存在するなんて!!

 いや、待て!

 そもそも俺と彼女が付き合ったとして上手く行くか?

 ラブコメのように仲睦まじく付き合って行けるのか?

 答えは否だ!

 せいぜいもって二週間だろう、その後はどうせ飽きられて振られるのが落ちだ。

 だが、二週間可愛い彼女持ちになれるのは魅力だ。

 二週間だけなら友人達の前でどや顔出来るが……振られたあと大笑いされそうだ。

 というわけで俺が出した答えは……。


「ごめんなさい!」


 俺は声とともに頭を思いっきり下げた。

 もちろん答えはお断りだ。

 きっと堅山さんの気の迷いだ。

 申しわけないが断ろう。

 なんて事を俺が考えていると……。


「なんだよ! 断るのかよぉ~」


「つまんねぇ~」


「マジ? 伊奈を振るの?」


「もしかしてどっきりバレてた?」


 教室のドアから続々と出てくる我がクラスのカースト上位層の皆さま。

 あぁ……やっぱりどっきりか……いや、別に悲しくなんてないよ?

 断ったし……多分そこまで馬鹿にされないだろうし……い、良い夢が見れたし……ぐす……あれ?

 おかしいなぁ……雨が振ってないのに水が頬に流れてる気がする……。


「石嶋良く引っかからなかったなぁ~」


「え? あ、うん……どうせ釣り合わないから……俺と堅山さんじゃ」


「あはは~だよねぇ~」


「う、うん……」


 カースト上位のクラスメイト吉田が俺と肩を組んでくる。

 だよなぁ……どうせそうだと思ったよ。

 見ただろ?

 これがリアルだ。

 現実はラブコメ作品のように甘くない。

 まぁ、良い経験だったと思って忘れよう。

 そうだ……現実のラブコメは甘くない。

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