13


                   *



 月日はそんなふうにして過ぎていった。 


 充生との暮らしは楽しかった。ある種の義務感から同棲に踏み切った真帆だったが、しばらくすると、彼女自身が充生によって生かされているのだと感じるようになった。


 再生するためにわたしはこの家に来たんだ――


 そうとは気付かぬままに求めていた場所に身を置いていた自分が不思議に思えた。ひとは思うよりはずいぶんと賢くできているらしい。大切なものは、目を閉じていても手に取ることができる。恒常機能、と康生が言っていたことを思い出した。


 あなたの言うとおりだわ。


 真帆は胸の中の彼に語り掛けた。


 わたしはもとの自分に戻るための環境を選んだの。あなたのベッド。そこでわたしは自分を取り戻していく。


 ね、そうでしょ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る