ツンデレ美少女のヒロインが俺に〜た件について

TiLA

ツンデレ美少女の同級生が俺に催眠術をかけてきた件について

 ねぇ? ちょっと催眠術を覚えたから、かかってごらんなさい。


 何よ? そのアホな子を見るような顔。生意気ね!


 まず、私の前に立つの。もう、背が高いわね。


 ちょっと、少し前にかがみなさいよ。


 私がつま先立ちしてこの細い脚が太くなったらどうするのよ!


 よし。これで顔の高さが同じ位になったわね。


 じゃあ、ちょっと栗色のさらさらで綺麗なこの髪が少し邪魔だから、シュシュで上げるわね。


 ちょっと! 何ジロジロ見てんのよ! 人の後れ髪なんか観察してんじゃないわよ!


 じゃあ、気を取り直してこのパッチリとした大きな瞳をごらんなさい。


 ちょ、ちょっと! そんなに顔近づけるんじゃないわよ! 馬鹿!


 もういいから、じゃあ私のこの細くて長い人差し指の先を見なさいよ。


 え? 爪ならちゃんと切ってあるわよ。失礼ね!


 あ、あんたが、爪の長い子は苦手だって言ってたのとは関係ないんだから、勘違いしないでよね!


 さぁ、この指先のメトロノームのような動きをじっと見つめるの。


 そ、そうよ⁉︎  ま、まぁ、素直じゃない……⁉︎


 そしたらこの小鳥の囀りのような私の美しい声に耳を澄ませるのよ。


 はい、全集中。


 ……


 って、笑うとこでしょ! 今! 気が利かないわね!


 ま、まぁ、気を取り直して続けていくわよ。


 あなたはだんだん素直にな〜る〜


 素直にな〜る〜


 な〜る〜


 ……


 ……


 かかったわ。


 もう、あなたは私の前で素直にならざるを得ない。


 さぁ、全てを曝け出しなさい。


 って、何ベルト外そうとしてんのよ! この変態!


 心よ! 心のことを言ってんのよ!


 えっ? どう素直になればいいんですかって?


 そ、そうね〜〜⁉︎


 じ、じじ、じゃあ、まず、オフン!


 す、好きな女性のタイプとか聞いてあげようかしら?


 ま、まぁ、別にあんたの好みなんか、ぜ、全然気になったりしないんだけどね!


 ま、まぁ、一応サンプル調査として聞いといてあげるわ。


 ……えっ?


 まず、背が低くて、


 脚が細くて、


 髪が栗色でさらさらと長くて綺麗で、


 瞳が大きくパッチリしていて、


 指が細くて長くて!


 こ、ここ、声が小鳥の囀りのように美しい人! って!


 そ、そう、ふ、ふ〜ん、そうなの? 


 ふ、ふ〜ん、ま、まぁ、なかなか良い趣味よね?


 あんたにしては、なかなか良い趣味してるじゃない⁉︎


 じ、じゃあ、次にだけど、その女性にもし告白するとしたら、


 ど、どう言うのかしら?


 ど、どど、どんな言葉で告白するか、い、言ってみなさいよ⁉︎


 えっ?


 どんな言葉が良いですかって?


 何質問に質問で返してんのよ! あんた、馬っ鹿じゃないの‼︎


 そんなの……恥ずかしくて、言えるわけないじゃない……。


 えっ?


 恥ずかしがり屋さんも追加ですって⁉︎


 その質問はもういいのよ!


 もう!


 そうね、まぁ、ナメクジ程度の脳みそしかない哀れなあんたのために特別に教えて上げるから、耳かっぽじって良く聞きなさい。



 ずっと前から好きでした、とか


 愛しています、とか


 どうか俺と付き合ってください、とか



 そういう率直な台詞でいいのよ‼︎


 べ、べべ別に、凝った台詞なんか考えなくていいんだからね!


 だから、


 だ、だだ、だから、ちょっと、ここで練習してみなさいよ?


 さっきの台詞、い、言ってみなさい! 私が聞いてあげるから‼︎


「……」


「……ず、ずっと前から……」


 ゴクリッ……。


「ず、ずっと前から…ら、ふぁ、ふぁあ……⁉︎ ふぇくしゅ‼︎ あ? あぁ⁉︎」


 ヘっ……?


「お、俺、今までどうしてたんだ? まったく記憶がないんだが……?」


 ちょ⁉︎ 勝手に催眠術解けてんじゃないわよ! 


 馬鹿! もう本当に馬鹿‼︎


 あ〜〜、もう!


 あ〜〜、もう最悪‼︎ もうどうでもよくなったわ!


 ヤレヤレだわ!


 あんたってもう、ほんとにヤレヤレだわ〜。


 じゃ、もう帰るから途中まで送ってきなさいよ! いつもみたいに。


 ……


 ちょっと、あんた何ボケっと突っ立ってんのよ? 先に行くわよ!


「あっ……、ちょっと待ってくれる? ねぇ?」


 はぁ? 何よ?






「ずっと前から好きでした。愛しています。どうか俺と付き合ってください」







 はい……♡



 ー了ー

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