#05

 とりあえずだが体に変化はない。息切れや疲労感さえ感じない。


 まあ、変身の後遺症で知らぬ間に寿命が取られたとして、それを、どう悟るのかは分からない。だから、ここから先は紳士君の言葉を信じるしかない。寿命は取られていないと。奉仕の精神で変身能力を与えに来てくれたとだ。まあ、都合がいいが。


 それでも、もはやリスクの件は、信じられるか信じられないかいう話に過ぎない。


 いや、ここまで来てしまったら信じるよりほかに道はないのだ。


 試しに変身してみて、どうしても変身能力を手に入れたい願ってしまったが為に。


 そうなのだ。この能力を入手してしまえば、あとの人生はイージーモードだろう。


 お金が欲しいと思えば、何らかの成功者に変身し、その何らかを行えばいい。女にモテたいならば、そのままカネを手に入れ、ばらまけばいい。いや、それどころか、カリスマ独裁者にでも変身して選挙に出馬すれば果ては世界征服だって夢じゃない。


 イージーモードどころか、全てが思うがままだ。……地位も名誉も富も全てがな。


 だからこそ、俺は紳士君の言葉を信じてリスクはないと断じて契約する事とした。


 奉仕であるから、無論、契約書などない。単なる口約束で契約が成立した。そして俺の変身人生が幕を開けた。ただ、まずは変身に慣れるという意味で本命には変身せず、売れっ子の芸人になった。焦って、変身と、口から漏らしてしまいながら。


ステータス ********************************


職業:売れっ子な芸能人の俺(♂)

年齢:27歳。


LV  :   42


HP  :   89

MP  :  112

攻撃力 :    9

防御力 :   82

スタミナ:   56

素早さ :   39

賢さ  :   77

幸運  :  226


所持スキル:

フリートーク力【黄金級】

アドリブ【銀級+】

不眠不休適正

カリスマ補正

メンタル強化


**************************************


 これが、


 芸人のステータスだ。


 このステータスを持ち、お笑い養成所に入所。養成所のやつら、講師を含め、その全てを大爆笑させる。そうしてツテを作った上で、お笑いコンテストを総なめ。すべからく優勝したわけだ。所属事務所も決まり、ローカルから全国区に成り上がる。


 まあ、何事もなく平穏に最強なる売れっ子芸人と成ったわけだ。


 一般人から言わせれば、劇的な人生であるから、平穏という言葉は似合わないが。


 兎も角。


 この時点で努力もせず、楽にカネも地位も名誉も手に入れたわけだが、まだまだ、ほんの序章に過ぎない。俺という変身人生のな。芸人として楽しく過ごしたあと内面だけの変身に慣れたと感じた俺は大本命であるカリスマ独裁者に変身する。


 変身ッ!


 と……。

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